第20話 クライアバル王国の住民
クライアバル王国。
その名の通りクライアバル王という人物がこの国を治めている。
見上げるほど高い塀国全体を囲み、入り口は一つの門のみという外部からの侵入を拒む遮断。
この国の特徴は住民がほとんど王に使える者であり兵士や料理人、庭師、商人といった特性にあった役割が割り振られ交代で城の勤務している。
それゆえこの国全体は王と自分の為に国を発展させる努力を怠らない。
王国が出来て僅かな時の間に自然豊かで衛生面も整い高水準の生活を全市民が出来ているのは…
まっさらで平和で国民と国王が力を合わせるクライアバル王国。
王国の城と住民の街をつなぐ抜け穴がどこかに存在するのではといわれるほどだ。
放浪人達はサラサラと風になびく草原を超え王国の門にたどりつこうとしていた。
そこにはガタイのいい門番が二人たっている。しかしある部分に放浪人の目についた。
「む。あの特徴的な耳、白い肌…」
そう門番の顔は整っておりそして耳が人間より長く尖っているまるで童話にでてくるエルフの姿。
『クライアバル王国の住民は皆エルフ族です。マスター』
「ほぉあれもエルフか、白い方に会うのは初めてだな」
『白いほう?エルフは全て白皙の方のはずですが』
「そうなのか。それにしてもクライアバル王国がエルフ族の溜まり場だったとはな」
放浪人の声に反応したログのやり取りにディアは首を傾けた。
「なんだ知らなかったのか?クライアバル王国はエルフ族の集まりって結構有名だぜ」
「この世界の初心者だからな」
「なんだそりゃ」
「まぁいい。そんなことより随分と頑丈の作りだな。どうするあの塀を登るのは少し時間がかかるぞ」
「さらっと侵入しようとするな」
ディアと放浪人の声に気づいた門番は二人に近づいてきた。
「そこの人間族よ。ここから先はクライアバル王国だ。失礼だが入国許可がないものは通すことが…」
後から遅れてきた門番がディアに気づくと声を上げた。
「おい。よく見ろ男の隣。ディア様じゃないか」
そう相方に言われた門番はディアをジッと見ると慌てて門の方に走っていった。
「ディア様だ!ディア様が戻られたぞ!すぐに門を開けろ!」
もう一人はすぐさま頭をディアに下げた。
「大変失礼な事をして申し訳ありませんディア様。すぐに門を開かせ迎えの者に城まで案内させていただきます」
「そんなにかしこまらなくていいって、あと隣の奴連れだからあたしと一緒に通してくれ」
「はは!それではお連れの方もどうぞこちらへ」
と門番が言うとスタスタと開いて行く門の方へ歩いて行った。
門番の急な態度の変化に放浪人は理解できなかった。
「なんだ。どういうことだ」
ディアはしたり顔。
「わたしはこの王国ではちょっっっとした有名人なんだよ」
「有名人ね。何かしたのか」
「んーまぁそれは城の中に入ったら話すよ。せっかく門を開けてくれたんださっさといこうぜ」
そう言うとディアは門番の後についていく
「ログは何か知ってるか」
放浪人が訪ねるとログは液晶に三角マークを出して
『情報はありません』
と返した。放浪人は鼻を鳴らすとディアの後ろについて行った。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
放浪人達は、開かれた門を潜り抜けクライアバル王国に足を踏み入れた。
中に入ると白く綺麗な家が立ち並び住宅の横には綺麗に整理された草木
そして透き通った川の水がせせらぎの音を静かに奏でながら流れていく
自然とエルフ族が共存するまるで天国のような場所!
そして街のどこを見渡してもエルフの住人。もちろんその住民達の横を通る放浪人達は少し浮いていた。
「綺麗なところだな」
「ああそうだろ。エルフ族は、人間と違って魔法の技術が高いから細かいところまで整備できるんだよ。繊細すぎるのが難点だが」
エルフ民の女性が地面に粉を蒔いて手を組み目を瞑ると先ほど何もなかった土から急に植物が生え脈絡もなく綺麗な花が咲いた。それを見て女性は美しい笑顔を浮かべる。
『ディアさんのおっしゃる通り、エルフ族は人間よりかなり高い魔力を持つ者が多いです。礼儀正しく美人で結婚したい種族ナンバー1です』
「ほお、それはいいな」
ログの解説に放浪人は感心する。するとディアが放浪人の脇を小突く
「なんだよ。何かあったのか?」
「…なんでも肘がたまたま当たっただけだ」
放浪人が不機嫌そうに訪ねるとディアも不機嫌そうにそっぽ向いた。
「わけがわからん」と放浪人は首をかしげた。
すると遠くから放浪人達の前に馬に似た生き物に引かせた馬車が止まった。
「ディア様!帰ったと耳にしましたので至急でお迎えに参りましたよ」
声と共に
金髪の髪に白銀で花柄の髪飾り。
透き通った白い肌に尖った耳白い民族衣装をまとった品のある小柄なエルフ少女が顔を出した。
ディアはそのエルフの少女を見ると気さくに手を上げた。
「クエセレン嬢じゃないか。わざわざ迎えに来なくてもよかったんだが」
ディアは馬車の前に立ちクエセレンと呼ばれた少女と会話をする。
そんな仲よく会話する二人をみて
「あのいかにもボンボン…いやお嬢様っぽいエルフは誰なんだ?」
「お顔を確認するにクライアバル王の公女クエセレン様ですね」
「お姫様と知り合いなのかあいつ」
ログと話す放浪人。しかし
「あの人族こんな街中で独り言を」
「もしかして幻覚でも見ているのかしら」
「医療班を呼んだ方がよいのでは」
実は周りから変な目で見られていた!視聴者からも普段変な目で見られているが!
少し経つとディアは放浪人に向かって手を振った。
「おーい放浪人。クエセレン姫が城まで送ってくれるってよ」
「そうか」
ディアに呼ばれ変人放浪人は姫様が乗っている馬車に躊躇なく乗り込んだ。
「あのディア様の隣にいた殿方は一体」
「独り言言っていて大丈夫だろうか」
「まぁディア様のお連れ様ですし。きっと…」
その時まわりの住民は姫をたいそう心配したそうな。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「初めましてわたくしクエセレン・レース・クライアバルと申します」
「あー俺は…いや自分…あっいや私は放浪人……と申します。あー本日はこの国にお招きいただき…」
歯切れの悪い敬語で返事をしようと考えるながらしゃべる放浪人にクエセレン姫はニコリと微笑みかける。
「そんなにかしこまらなくていいです。あなたのことはディア様からお友達だと伺っております。ですのでどうか気になさらずに」
「すまない。どうも敬語がうまくなくて」
放浪人は包帯が巻かれた手で頬をかく
「お手お怪我されてるのですか」
クエセレン姫がそう言うとディアは思い出したように手を叩いた。
「そうだ。城についたら城の医務室に連れてってくれるかどうも骨までいってるらしくてさ。重症」
そう言い放浪人の包帯で巻かれた手を掴み姫に見せた。
「わかりました。城に着き次第案内しますね。安心してください
この程度でしたら優秀なあの方がすぐ直してくれます」
「そうかそれはありがたいな」
お姫様が相手だろうかいつもとより放浪人素直な応対。
するとクエセレン姫は放浪人の顔をジッとみつめた。
「なかなかの男前それに少し綺麗さもある素晴らしいお顔ですね」
「そうか褒められると気分がいいっっっていででで」
姫に褒められてデレデレする放浪人の包帯で巻かれている手をディアは強く握った。
「デレデレするなって情けない」
怒るディア。まさに嫉妬!
しかしディアは何か思い出したようにハッとすると窓の外を眺めた。
「ん?なんだ突然窓を見て」
手を止めたディアに不信感を覚えた放浪人。
「しかし私の許婚ジュゼス様はその数倍美しいですわ」
「は?」放浪人は硬直する。
クエセレン姫が目の前のひもを引っ張ると布が開かれその天井に金髪で引き締まった顔のエルフの男の写真が何枚も現れた。
それを見ながらクエセレンはうっとりする。
「見てくださいこの目吸い込まれそうなブルーの瞳!凛々しい顔立ち!すらっとしたスタイル!ああ素晴らしい」
自分の世界を語りだす姫様を放浪人はほっとこうと外を見ようとするも
「なに目をそらしてるんですか!あなたも見てください」
秒で逃げ場を失った!
「いや…俺はもう結構…」
「ではわたくしがジュゼスの素晴らしさを語らせてもらいますまず私たちの出会いはーー」
それから長々と許婚自慢を始めるクエセレン!ディアに助けを求めようも寝たふりを決めていた!慣れている!
「美人でもああいう女は苦手だ…」
『マスターの気持ち少し理解しました』
ログは放浪人の心境を理解した。永遠と続く自慢話を聞く羽になる放浪人だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます