第19話 森を抜け!新たな地へ

森に鹿に似た大きな角を持つ生き物が地面に生える植物を食べていた。

その時!突拍子もなく木の上から大きな黒い影!鋭利な鉤爪を大きな角の生き物の胴体に食い込ませると軽々と巨体を持ちあげた。

大きな角の生き物はその爪から逃れようと鳴き声を上げながら全身をばたつかせ暴れるが気にせずそのまま真上に飛んでいく

森の暗闇を抜け日に照らされたその影はとても大きな鷹に似た生き物!

鷹に似た生き物は、木の上まで高度を上げると鹿に似た生き物も本能で死を悟り動きが止まる。しかしそれがどうしたという感じに鷹に似た生き物は残酷にもその体を鋭く尖る木の枝に放り投げた。

鹿に似た生き物はなすすべなく無残にも勢いのまま木の枝に胴体からぶつかり貫通した。まさに心臓一突き!苦しみもがきながらも枝から脱出しようとするも木の枝から

とめどなく血が滴り落ちそして数秒後には動かなくなった。絶命!これが自然の厳しさ!鷹に似た生き物は死んだことを確認すると穴が開いた鹿の胴体をつつき内臓や肉を食し始める。みるみる穴を広げ美味しそうに食す!

しかしそんな油断したのも束の間!またも突拍子もなく炎の塊が渦を巻きながら鷹に似た生き物めがけて向かってきた。

鷹に似た生き物は、驚き慌てて翼をばたつかせ炎を回避しようと空を飛ぼうとするも既に遅く炎が羽に命中!あっという間に羽が燃え尽き飛ぶことも出来ずに木から落ちてしまった。

地面に落ちた鷹に似た生き物は体をばたつかせ体制を整えようと奮起するも今度は体をとんでもない力で押さえつけられた。

ギリギリと万力に押しつぶされるような力で締め上げられ、翼が折れ全身からバキバキっと悲鳴を上げ体から骨が突き出てくる!鷹に似た生き物は命からがら体を揺らし押さえつけられた力を跳ね除けよろめきながらも火がついていない木の上まで最後の力を振り絞り飛び上がった。

…がそのタイミングを待っていたかのように


「今だ!放浪人!」


ディアの叫び声が響く

その声に反応するかのように木の上から鷹に似た生き物目掛け放浪人が降ってくる!

そしてそのまま!


「もらった!」


脳天狙いのかかと落としで鷹に似た生き物を地面に叩き落とした。

勢いのまま地面に落ち砂ぼこりをまき散らし視界が戻るころにはゴロンと鷹に似た生き物が白目を向いて絶命していた。


「うまくいったな」


地面に着地した放浪人にボロックが駆け寄った。


「ああ。助かった」

「なあにお前の手の変わりを務めると約束したからな!それに俺の筋肉で弱らせるのは造作もない」


筋肉アピールしたボロックはディアに蹴られた。


「なにいってんだ。炎で獲物を落としたあたしのおかげだろうが!」

「た、確かにそうだが。俺の筋肉パワーで奴を弱らせて…」

「余計な攻撃をしてなかったら追い打ちで炎で動きを封じてたんだよ!ったく」


怒るディアを放浪人は肩をすくめた。


「まっいずれにしてもうまくいった」

『援護感謝します。あの魔物は警戒心が強く見慣れない生物がいるとすぐに逃げてしますのです』


クライアバル王国を目指しながら放浪人はディア達に協力してもらい順調に討伐クエストをこなしていた。


「気にするな同志」


ボロックは親指をたてキランと歯を光らせた。


「これぐらいたいしたことねえよ」


ディアは、照れくさそうにする頬をかく


『大ガマドリ討伐クエスト完了しました。報酬は300ローです』

「よしよし、最後の獲物は上出来だ」


放浪人はそんな二人を置いといてマイペースに絶命している鳥にログを近づけクエスト確認していた。ログはクレジットと表示しその下には300ローと記されていた。


「もうこんなもんでいいだろう。手助けしてくれてたすかった」


放浪人の言葉にボロックは怪訝な顔をする。


「うむ。本当にこれだけでいいのか。総額1000ローといったところだろ?もっと手伝ってもいいんだぞ」

「別にそこまでしてもらわなくていい」


放浪人は、包帯を巻いた手を振った。その手をディアは心配そうに見つめる。


「おまえの手は大丈夫なのか?骨ほぼ粉々になってるんだろ?今はあたしの薬で腫れは引いてるが通常なら滅茶苦茶腫れてるんぞ」

「こんなのほっとけば治るだろ」


放浪人の気楽な発言にあきれながらのため息をつく


「いや治るわけねえだろ。治っても後遺症のこるわ!ったくクライアバル王国についたらちゃんと治療させるからな」


と言い終わったると同時にタイミングよく焼け焦げた木がめきめきと倒れ太陽の光が差し込んだ。


「おい放浪人、あれをみろよ」


ふとディアは光に気づくとニヤリと笑い切り開かれた木の先を指さした。

ディアが指さしたその先。

草原の向こうに城のような大きな建物と塀が見えた。そうついに森を抜けたのだ。

目の前の草原に放浪人は立ち尽くし目の前にある城壁とその後ろにある城のような建物!


「あれがクライアバル王国か」

「ああ!自然と共にあるクライアバル王国さ」


ディアは得意げな顔をしながら放浪人を見る。


「クライアバル王国の案内はまかせな。詳しいからな」

「ああ。頼む」


そういい放浪人とディアは手をたたく。


「うむ。では放浪人(同志)、そしてディア(我が愛しの妹)よここまでだな」


ボロックはその場で立ち止まり別れの挨拶。


「そうか。子分のところに戻るんだったな」

『食料を恵んで下さりありがとうございます。ボロックさん』

「さっさと帰れ。くそ兄貴」


放浪人、ログ、ディアはそれぞれ別れを告げ倒れた木の上を伝いながら森の出口から草原を歩き出した。


「あれだけでいいのか挨拶」

「ああ、いいよ。あいつなんて」


放浪人がディアに訪ねると振り向きもせず不機嫌そうに歩いていく。


『ディアさん不機嫌そうですねマスター』

「結局盗賊を辞めるという言葉は一度も聞けてないからな」

『やめるんでしょうかボロックさん』

「さぁな、ディアとボロックの問題だ。家族内の事情に口出すことではない」


すると放浪人たちの後ろから大声。


「放浪人お前のおかげで目が覚めた。俺向き合うぞ!女性と!」


ボロックの声で放浪人は振り向き手を振った。


「それとディア!」

「あっ?」


自分に声をかけられてディアは止まり不満げな顔をしながら振り向く。


「近いうち必ず復学できるようにするからな!お兄ちゃんがんばる!」


手を振るボロックをみてディアは


「お兄ちゃんーー!絶対守れ……てねーー!」


と少しかわいらしく手を振り返した。


「ディアさん…あんな顔できるのですね」


ログがつぶやくと放浪人はログを手で塞ぎ


「野暮はいうな」


首を横に振った。

ボロックは背を向け。


「愛しの妹よお兄ちゃん頑張るからな!」


叫び森で先ほど倒した鳥を肩に抱えすごい速さで森の方に消えていった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


ボロックが通り過ぎた木の上。

オオトカゲが木に突き刺さり体液を流しながら絶命している。

その隣の木の枝に立ちながら放浪人達を眺めている。


「ほぉあそこはクライアバル王国か」


オオトカゲの足を掴むとそのまま胴体から引き離しその肉を口に運んだ。


「ククク!少し様子を見さしてもらうぜ!」


口からオオトカゲの血を流しながらザガンは上機嫌に笑った。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


ボロックを見送った放浪人はクライアバル王国に足を向けた。

そういよいよ砂漠を抜け森を抜け次の町に差し掛かる。

新たな場所!新天地に放浪人は胸をおどらせた。


「ところでなんで俺の腕掴んでいる」

「…あっ?まぁあれだ介護って奴だ。お前が無駄に手を振らねえように拘束だよ拘束」

「歩きにくい…」


放浪人と腕を組み上機嫌に笑うディアに対して若干照れくさそうに歩く放浪人であった。

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