第18話 悲惨な兄妹!
ズドンと音と共にボロックの巨体が倒れて地響きがなる。
それを見てザガンは
「ボロックを正面から倒すとは…やるじゃねえか」
と不敵な笑みを浮かべ木から飛び降りてきた。
放浪人はザガンを睨みつけ身を構えた。
「次はお前か!」
放浪人の問いにザガンはせせら笑い手を広げ無抵抗をアピールした。
「おいおい無理なさんなよーダンナ。流石にそのボロボロの拳で戦おうなんてキツイだろその出血と腫れをみるに骨が相当逝ってるはずだぜ」
「これぐらい傷、貴様を倒すぐらいリスクにもならん!こい親分の仇を取りに!」
そう言いながら構える放浪人にザガンが愉快そうにニタニタ笑いながら自分の後ろを指さした。
「むかつくこと言うんじゃねえよ。俺様はただの案内役だ。こいつの本当の雑魚部下は今ごろ戻らぬ親分を森の外で待ってんだろうな」
そう言い終えるとザガンは腕を上げ放浪人を睨みつけ構えた。
「まっでも面白そうだ。いいぜ!相手してやる。連戦だから疲れたなんて言い訳はなしだぜ。もっとも死んだら言い訳も出来ねえんだけどよ」
ボロックの時と全く違う空気が周辺を包む。
確かなる殺意。死神が歩み寄る音!だが放浪人はそんなものに気後れしなかった。
「負ける気はない!こい」
お互い睨み合い。一瞬の隙も見逃さない緊張感!しかしその緊張の拮抗も突然壊れた!突如!放浪人の上半身が両腕に掴まれた!
「俺は負けない!」
いつの間にかボロックが起き上がりボロボロの体で放浪人の体をガッシリロックしていた!
「こいつ!まだ動けるのか」
体の黒さは剥がれ!血だらけになりながらもボロックは火事場のくそ力のように放浪人を締め上げる。
その様子を見てザガンは興ざめだと肩を落とすと
「じゃあな。生きていたらまた会おうぜ」
そう言葉を残し森の奥にきえていった。
「まて!」と追いかけようとするもガッチリとボロックはホールドしている。
「ええい!しつこい!」
放浪人は両足を振り上げボロックの体を蹴る!
ボロボロのボロックは少しよろめきながらも手を離さない!
「俺は大切なものをとりかえすまでは!お前を離さん!」
ますます力が入り放浪人は苦痛の表情を浮かべ、もう一度攻撃をしよと拳を握った。その時だった
「バーニングパンチ!」
声と共にボロックは顔面を殴られ放浪人を離しすっ飛んだ。
「なんだ?」
地面に手をつきながら着地した
放浪人が振り向くとそこにはディアが立っていた。
『ご無事ですかマスター』
彼女の腕に巻かれているログが点滅しながら聞いてくる。
「お前なんでここに」
『ディアさんが探しに行くといいましたのでマスターが着用しているディアさんのジャーバンドを頼りにここまで来ました』
ディアは炎を纏う拳を握りプルプルと怒りで震えていた。
「放浪人が枝を取りに行ったキリなかなか帰ってこなかったからおかしいと思って様子を見にくりゃ」
深く息を吸うと
「てめえ!何やってんだ!くそ兄貴!」
叫ぶ!衝撃的真実!
ボロックは起き上がるとディアをジッとみつめた。
「この炎!間違いない!我が愛しの妹よぉ!」
そして起き上がりディアに抱き着こうとしたが
「近づくんじゃ!ねええ!」
再び顔面を殴られあれほど根性を見せたボロックがアッサリ気絶するのであった。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「すまん!このバカ兄貴が」
「本当にすまん!しがない部下が」
洞窟でディアとボロック、二人の兄妹(きょうだい)が正座して放浪人に頭を下げていた。
『まさか盗賊団団長ボロックに妹がいて、それがまさかディアさんだとは』
驚きの音声を鳴らすログに放浪人も頷いた。
目つきが悪いもそこそこ整った顔のディアと若干たれ目で無骨な顔のボロック
「確かに似ても似つかない。言われなければ普通にわからん」
放浪人の言葉にボロックはムッとするとディアを引き寄せ自分の顔を指さした。
「そんなことない見ろ瞳の色が同じだ!」
「くっつくな!」
ボロックの頬にディアの肘鉄がさく裂
「それにしても、まさかクライアバル王国まで護衛させた部下を途中で振り切るとは」
しかし首が曲がりながら何事もなくしゃべっていた!すごくタフ!
真実はこうだ。寒雷の魔女(サーナ)に凍らされたボロックを助けるため
部下はクライアバル王国に住んでいた妹のディアに助けを求めた。
(その時ディアは自分の兄ボロックが盗賊頭領だという情報が学園に伝わり休学していた)
仕方なく自分の火の魔法で兄を助け盗賊を辞めるように説得するも首を横に振り断るとディアを帰らせ仲間を2人の護衛につかせた…が
ボロックの返答にディアは怒り護衛を振り切りるとそのまま森を走り抜けていった
(この時走って突き進んだ結果!食事中のクモトカゲに遭遇して不意打ちを食らってしまったという流れである)
そしてディアを見失った仲間は仕方なく帰ろうとしたところに、放浪人に釣られボコボコにされ
挙句の果てには現場仲間が襲われたと聞いたボロックは妹が連れ去られたと勘違い!
助けに行くと向かったところでザガンに騙され仲間を森の前で待たせ森に入った。
そういうことだ。
「いい加減、盗賊辞めてくれないとあたし復学できないんだよ!」
「しかし仲間を見捨てられない」
「ふざけんな!やっていることは女をさらってるだけじゃねーか!」
ディアに殴られるボロック。
「さらっていない!俺は嫁が欲しかったんんだ!今まで付き合ったことがなかったからおしゃべりするために来てもらってたんだ。そのあとちゃんと解放しているぞ!」
「攫うのがダメだっていってんだ!だからてめえはアンポピュラーてんだよ!」
「ゲエ!妹よ!もう殴らねえで!」
腕を振り上げたディアを放浪人が止めた。
そして変わりとばかりにボロックの肩を掴んだ。
「なんだ」
驚くボロックを放浪人は凄む
「いいかっ!妹が怒っているのはな!お前の情けなさだ!ボロック!
そりゃ確かにその年まで彼女がいなくて焦るのは当然だ!
童貞のままなんだからな!俺だってやばいと思う!
確かにおまえはアンポピュラ-だ!しかしな!
だからと言って仲間を使い女性を連れ込む情けなさ!ビビッてんだ!
顔のせいじゃねえ心の奥底に女性に対してビビりがあんだよ!」
ログに記された台詞をそのまま読み切る放浪人の言葉。
「別に顔の事で悩んでないが……おっ俺は」
図星なのか酷く涙を流すボロックに放浪人は手を放す。
「勇気を出せボロック。そうしなきゃ絶望(童貞)はぬぐえない。結婚もできねえってことでいいのか」
『完璧です。ちゃんと台本通りやってくれましたね』
ログは完っと記した。
あの兄貴を言葉で泣かせるなんて…あいつおもしれえ男だな、
うっとりした表情をうかべるディアであった。
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