第17話 頭領ボロック!打ち破れ!鋼の腹筋!

「フン!」と気合の入った声を発しながらボロックは勢いよく放浪人の顔面めがけて拳を放った。

突然の攻撃だったが放浪人は、体を翻し距離をとるように攻撃を躱す。

ボロックの攻撃は勢いそのままに、放浪人の後ろにあった木の幹に当たると

ミシミシっと重い音をたて、拳を幹の中へと深くめり込んだ。


「やるな。卑怯者め」


悪態をつきながら幹から手を引き抜くとボロックは放浪人を見て言い放つ。


「しかし礼儀だ。名前を教えてやる。俺の名前はボロック!ボロック・ニャーステル!盗賊団ボロックの団長だ」

「ボロック?」


放浪人は、首を傾けた。


「どっかで聞いたことあるような……どこだったか」

「おまえ、ボロック団と名乗る盗賊から食料を奪わなかったか?」

「……ん。ああ、あいつらか」


砂漠で食料がなくなった時のことを思い出し今の状況を理解した。


「なるほど、ということは砂漠で絡んできた奴らのおやだま…」

「やはりか!」


ボロックは叫び声をあげるとボゴンっと筋肉を徐々に盛り上がらせていく

筋肉の盛り上がりに耐えきれなくなったシャツがミチミチと破ける!


「きさま!よくも俺のフレンズを!大事な者を!お前のような卑怯者!今日を生きる資格はねえ!」


ガチンっと拳を合わせると再び放浪人に向かって一歩一歩重々しい足音を鳴らしながら突撃!

怒りに身を任せている!説得は不可能!

厄介だな、そう思った放浪人は、ボロックを巻こうと背を向けた。

ボロックの馬鹿でかい図体で木が生い茂る森の中をまともに走れるわけがない。

しかし洞窟までついてこられたら、事情を理解していないディアと遭遇したら…

放浪人はボロックの方に向き腕を構えた!


「っち、しょうがない相手になってやる!」

「うおおお!食らえ!」


躊躇なく突っ込んできたボロックの突撃攻撃をギリギリのところまで引きつけ左に向に飛びかわす。

攻撃を外したボロックは、近くにあった木に正面からぶちあたる!


「どうだ」


放浪人は一回転して着地した後ボロックの方を確認するも


「ちょこまかと!」


全くダメージを受けていない様子で放浪人を睨みつけた。


「頑丈な奴だな」

「この程度!俺の筋肉の敵じゃない!」


ボロックは再び突っ込もうと立ち止まり放浪人に狙いを定めた。

しかしその隙を逃す放浪人ではない!強く地面を蹴り一気にボロックとの距離を詰め

逆に相手の懐に飛び込んだ!


「ぬ!きさ…」

「悪いが一気に決めさしてもらう!」


驚く余裕もなく!放浪人のエルボがボロックの腹部にめり込んだ!


「ぐっやるな」


ボロックは眉間にしわを寄せ苦しそうに腹部を押さえながら後ろに下がった。

気絶をせず放浪人の力の込めた一撃を耐えた。


今の一撃で終わらすつもりだった放浪人は、少し驚いた。


「……なるほどいい腹筋だ」


もう一度手を握りしめとどめを叩きこもうと放浪人が地面を蹴ると


「仕方ない本気を出してやる!」


ボロックは足を踏ん張り力をいれはじめた!

その瞬間ボロックの体はみるみる黒くなっていく。


「させるか!」


放浪人は再びボロックの懐に飛び込み拳を同じところに叩き込む!

攻撃は見事に腹部に命中した。


「どうだ!…なに!」


放浪人は驚愕した。

腹部を殴られたにもかかわらずボロックはビクともしていなかったのだ。

それどころか拳がめり込まず止められている!


「驚いたか。これが俺の腹筋パワー」


----マッスルスチール!----


ボロックの得意げな表情。


「貴様も確かに良き筋肉をしているが俺と比べれば所詮…」

「すきあり!」


放浪人は腕を引きその場で飛び上がりボロックの顔面を殴った!

顔面は無防備だったらしく得意げな表情のまま殴られた方向に首が曲がりながらよろめいた。

鼻からドッと出た血を手でぬぐいボロックは放浪人をみると


「やるじゃない」


ニヤリと笑い思い出したように顔も黒くする。

全身黒くなったボロック。


その様子を見てザガンはニヤリと笑う。


「あれがボロックの得意技、筋肉鋼鉄化言葉通り体の筋肉を鋼のように固くし相手を打ち負かす」


さてあいつはどうするんかねっという顔で放浪人眺めた。


「貴様モンクだな」


ボロックは唐突な発言に放浪人は怪訝な顔


「モンク?」

「残念ながらモンクがレスラーの俺に勝てない。

いやそもそも今まで拳でマッスルスチールを打ち負かせた者はいない」


その言葉は挑戦か否か。もちろん放浪人の心をたきつける。


「よくわからんがその自慢の腹筋がどれほどのものか試さしてもらう!」


放浪人は地面を蹴り跳躍すると勢いつけてボロックの顔を蹴る!

……しかしダメ!顔まで伸びた黒い鎧は放浪人の蹴りでも傷一つつけることができない。


「もう一度言うマッスルスチールの前では誰も俺に勝てん!」


何も感じていない表情を浮かべるボロックは放浪人の足を掴もうと手を伸ばした。

流石に身の危険を感じて身をひるがえすとボロックの手をすり抜け懐に着地する。


「ならこれならどうだ!」


放浪人は地面につくと上半身を軽くねじり足に力を入れ

勢いよくボロックの腹部に全体重を乗せた拳を叩きつけた。

しかし拳は煙をあげながら腹筋によって止められていた。


「無駄だ」


なんという固い腹筋!ボロックはすかさず放浪人の上半身を両手でつかみ締め上げた!


----デス!スクワープ!---

「うおおおおお!死ねぇ!」


全身の骨を砕かんばかりの攻撃!


「ぐうう!」


放浪人が苦通で顔をゆがめるもお構いなくボロックはさらに締め上げる。


「貴様は許さん!3つを教えてやる!」

「…3つだと」


ギリギリと締め付ける中ボロックは言い放った。


「1つ!俺のフレンズを傷つけたこと!2つ!モンクの分際で俺に楯突いたこと!

そして3つ!俺の大切なものを奪ったことだ!」


「たい…せつな…もの…」

「ああ!だから安心しろ俺はお前を殺しはしないそのかわり俺の大切なものの

居場所を教えてもらおうか!」


ボロックは放浪人を近くの木に叩きつけ睨み上げた。

さっき死ねぇと気合を入れただろうとツッコミたい…

ギリギリと体を締め上げられ痛みに耐えながら放浪人は歯を食いしばり木の幹に足を置く。


「そんなもの……知るか!」


叫ぶと同時に幹を蹴り上げ勢いのままボロックの左関節につま先を入れ蹴り上げた!


「ぬっ!」


関節を狙われたことで一瞬ボロックが手を緩めると放浪人は服を脱ぎわずかな腕の隙間

脱出し後ろに回った。


「やるな。手加減していたとはいえ俺の腕から抜け出すとは」


ボロックは再び捕えようと振り返るとそこには放浪人の姿はない


「どこにいった!」


辺りを見渡すとボロックから少し離れたところで放浪人は手を振り集中ていた。

そういえば修行中も似たようなことあったなと思い出す。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


修行時代


「これを身一つで壊してもらう」


神に持ってきたのは大きく厚い岩だった。

男が試しに殴って見るが岩には傷何もついてない固い頑丈!むしろ手の皮が少しむけた。


「いや!無理!絶対無理!」


修行を開始して1か月の出来事!


「ワハハ!面白いことをいうな!」


神は笑う!


「良いかこの世に壊せないものはない!と強く思えば良いそうすれば壊せる!」

「気持ちの問題!」

「気持ちの問題」


というと神は男の肩をつかんだ。


「ワシが今からお前を使い岩を壊すか!それとも自分の力で壊すか!えらべえええい!」


神は男を岩に叩きつけた。岩には男の形がくっきり残った。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「あの時岩の形をみて俺でも壊せると思ったんだ。こいつも同じだ!ようは気持ちの問題!」


同じだろうか?と考えてはダメ!

放浪人は神経を研ぎ澄まし集中する。


「諦めたか…なら気絶させて簀巻きにしてくれる!」


ボロックは腕を広げ放浪人めがけて突撃!


「今だ!」


その瞬間放浪人は地面を蹴りボロックとの距離を詰め腹部に右拳を再び叩きこんだ!

「効かないと……」とボロックの声をかき消すように


「まだまだぁ!」と放浪人は叫ぶと

右腕を引き一歩足を進めると今度は左拳で同じところに叩きこむ!

するとボロックは後ろに押され始めた


「なにいいいい!こいつ同じところに!それも最初俺にあてたところに!」


驚愕しているボロックを放浪人はそのまま前に進み腹部狙いの拳を交互にぶつけていく!


「体ごとぉぉ!突っ込む!」


少しずつボロックは押され始め黒い体に傷が入り始める。

それと同時に放浪人の拳も悲鳴をあげはじめ血が滴り落ちた

まさに一進一退のせめぎ合い


「ふざけるなぁぁ!」


叫びと同時にボロックは足を地面に強く踏み込み倒れこむように腕を前にだし

放浪人に掴みかかろうとする。


「これで!決まりだ!」


放浪人は両手を合わせると思いっきり振り上げ突っ込みながらハンマーのように!


------ストライクゥゥ!ハンマァー!-------


手刀部分でボロックの腹部に叩きつけた。

ボロックの黒い腹筋が割れ勢いよく木にぶつかり倒れ

(俺の腹筋が割れ…)とつぶやきガクリと気絶した。


「マッスルスチール破れたり!」


放浪人はボロボロになった拳を強くにぎった!

決着ぅ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る