第11話 いざ行け!砂漠のさきへ!

砂漠の都市サラーガ入り口前。


目の前に広がる砂漠!その中にかろうじて道なりに進めるように綺麗に舗装されている道。

しかしそれ以外はきめ細かいザラザラした砂がどこまでも続く

その中にはときおり乾燥した岩や残酷さを伝えるような生き物の骨が突き出ている。

案内なしに砂漠で迷えばこのような末路をたどっていただろう


そんな恐怖の砂漠の入り口前で放浪人は特に気にすることなく準備体操をしていた。


『では、舗装された道は通らない。ということでよろしいですね』


腕についているバンドのログの言葉に放浪人は頷いた。


「確かにあそこの道を通れば最短でセインエイツまでいけるが

そこまでの道のりにある討伐クエストの数が絶望的なんだろ」

『はいその通りです』


クエストという言葉に反応してログは一覧を表示するとその一覧には

ほとんどコンプリートという意味の言葉が記されていた。


『盗賊団のアジト殲滅、大キングサソリなどの狂暴な魔物退治等多数の

高額クエストが全くと言っていいほどコンプリートされていました。

ですのでこの舗装道は一部の者の間では強者の道と呼ばれているみたいです』

「この道だけ異様に整備されて綺麗なのがわかるな」


噂されている強者の中に寒雷の魔女(サーナ)が含まれていることに知る由もない。


「それでこの道を通らずにセインエイツ学園へ行くにはどういうルートを通ればいい」


放浪人が訪ねるとログが数回点滅した後、放浪人の目の前にこの辺りの地図を表示して見せた。


『それではクライアバル王国を目指してはどうでしょう』


ログが記した現在地と記された赤い丸から矢印現れると斜め上に飛び出し

森を超え大きな土地があるところに止まった。


『セインエイツまで遠回りの道となります。ですが途中に森林地帯があり。

そこは未だ手つかずのクエストが多数あります。

それに加えて、最新の情報ではクライアバル宮殿で王様がクエストを依頼したいという噂があるそうです』

「ほう、王様直々ね」


それはたんまり報酬がもらえそうだと、借金を返す当てが見つかり気合が入った欲深き人間。


「じゃあ、そこに行くか」

『了解しました。詳細に道なりを表示します』


放浪人が腕を上げるとバンドから地図の表示が消え変わりにわかりやすい矢印が立体的に表示された。

おそらくこの道に進めという表示なのだろうと馬鹿でも理解できる。

放浪人は表示されている矢印の方向通りに迷いなく歩みを進めた。


『少しよろしいですかマスター』

「なんだ」

『先ほどから舗装された道の方からマスターを見ている者がおりますが』

「気にするな。余計な体力を使う必要はない」


近くにいる気配に対して気にする素振りもなく放浪人は再び足を進めた。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


放浪人が歩んでいく姿を三人の男が舗装された道で眺めていた。

その中の二人は前日放浪人に倒されたヒョロガリとゴリダルだ。

そしてもう一人は銀色と茶色い髪で

ボロボロの服に目や頬に切り傷の跡が印象的な顔の男が立っていた。


「あれがてめえらの言ってた男か?」


傷の男が訪ねるとヒョロとゴリダルは力強くうなずいた。


「間違いねえ!あいつだ!」

「俺たちをコケにしやがった男は!」


二人の話を聞くとフーンと傷の男が嬉しそうな表情を浮かべる横で、ヒョロガリとゴリダルは一人で歩いて行く放浪人を見て歓喜する。


「どうやら寒雷の魔女はいないようだな別れたのか」

「なら丁度いいぜ!イヒヒ!」


ヒョロはナイフを取り出すと刃先に沿って舌で舐めた。


「奴は一人!今度こそ俺たちであいつを殺してやるぜ」

「俺たち?」


傷の男は不機嫌そうにつぶやくとヒョロの胸ぐらを乱暴に掴みあげ

自分の目の前に引き寄せ鋭い目で睨みつけた!

ヒョロは突然のことで動揺し目を見開く。


「ククク!面白いこと抜かすじゃねかおまえ!

「俺たち」だぁ!ボコられたのはてめえらじゃねえか!

なんで俺がてめえらの情けねぇケツをふかなきゃなんねーだ!ああ!」

「ぐるじいぃぃ締まる」


傷の男がヒョロの胸ぐらを閉め上げるとヒョロは苦しそうに悶る。

ゴリダルは、それを見て慌てて傷の男を止めようと腕を掴み顔にナイフを突き立てた。


「おいやめろザガン!こいつ死んじまう」


ザガンと呼ばれた傷の男はナイフを気にする様子もない。

それどころか今度は狙いをゴリダルしたように睨みつけた。


「うるせえ!でくの坊!」


そうつぶやくと掴まれていた腕を振りほどきゴリダルの腹部を容赦なく蹴り飛ばした。

「また腹かよ!」と叫びとともにゴリダルは地面に倒れた。しかしすぐさま体を起こし体制を整えようとする。


「なっなにしやが……おぼ!おぼぼぼぼぼ」


しかし!ゴリダルの口から異様なまでの水が噴き出してはじめゴツイ体は風船がしぼんでいくようにみるみるやせ細っていく!

みるみる姿が変わっていく相棒をみてヒョロが震え上がった。


「ひええええ!お、お助け」

「賊の分際でいちいちビビッてんじゃねえ!情けねえ!たくウンザリだぜ!俺は今日でカシバシ団を抜ける」


ザガンはそう吐き捨てヒョロガリを手から放した。


「もともと暇つぶしで入ってやってただけだしな。そもそもやってることが小物くせえんだよ」


尻もちをついているヒョロに背を向け放浪人の向かった方向に歩いていく。


「あ、あいつ!俺達カシバシ団をコケにしやがってぇぇ!」


怒りに震えたヒョロガリはすぐ近くに落ちているナイフを拾い上げると

背を向け歩いているザガンを狙って

「死ねええ!」と叫びながら切りかかった!


しかしザガンはその場で立ち止まり笑う。


「ほぉ。ここまでやられてまだ俺に楯突くとは腐ってもカシバシ団だな」


しかしナイフの刃先がザガンに届くことは無い!ヒョロの動きが突然止まる!するとブクブクと水でもいれられたかのように体中が膨れ上がった。


「オビョビョビョビョ」


奇声を上げ苦しみの叫びをあげながら倒れこむヒョロガリ!

その様子をザガンはゆっくり見下ろすと

「まあ。それだけなんだがな」っと鼻で笑った。


ヒョロの体はぷっくりと丸く膨れると破裂を避けるように口からブクブクと

白い泡を吹きながら気絶した。


「クククク!安心しな。殺しはしねえ。お前らにはカシバシに報告っつう

大事な仕事が残ってんだ。あの野郎に俺様が抜けたって報告をな」


ザガンはガリガリ君体系になったゴリダルと関取体系になったヒョロを

おいて砂漠の道を再び歩き出した。

先を行く放浪人の後を追うように


さて、それじゃあさっそくあの男を追うか!せいぜい俺を楽しませてくれよ、


この男は一体何者なのかどうなる放浪人!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る