第12話 うごめく陰謀!

砂漠エリアでは盗賊団がよく出没する。

通行人を襲っては、食料、水、金品、運が悪ければ命をむしり取るとゆう非道の行為。

無数にいる盗賊団の中でも「ボロック団」、「カシバシ団」という名の大きな組織が

それぞれのエリアの盗賊達をを取り仕切っていた。

南砂漠のボロック団、北砂漠のカシバシ団。

その中でボロック団は、温厚の方で命までは取らず逆におもてなしされるという

嘘かホントかわからない噂が立っていた。


「ヒーハー!」

「ヒャッハー!」


噂をすれば南の砂漠。サラーガの都市と大きな森の中間地点の砂漠。

今日も元気に盗賊二人が砂漠を通る通行人を襲っていた。

1人は髪を逆立てたトサカ男、もう一人は頭の中心がハゲていて両サイドに金髪の男。

二人は布を被っている人間をにやにやと笑いながら追いかけている。


「おーらまてまてー」

「あとちょっとで捕まえちゃうよー」


布を被っている者はその言葉を聞きながら逃げるも盗賊二人においつかれてしまった。


「へへへ!布を被って顔を隠している奴は大抵女だ」

「げへへ。そうそう!顔の美容対策と俺たちのような盗賊に目をつけられないためのな」

「なれって怖いな!鑑定士でもなるかねー」


男二人は布の人を囲み逃げ場をふさいだ。


「さてさて、お顔拝見させてもらいますよっと」


ハゲの男が頭まで被っている布の下をチラリと覗くと一瞬整った目鼻が見えた。


「うお!チラリとしか見えなかったがかなりのべっぴんさん!」

「ほんとかよっしゃボスが喜ぶぜ!」


盗賊二人はガッツポーズする。


「お嬢さん悪いが俺たちについてきてくれねえですかい」

「なあに悪いようにはしねえよ。へへ正直こんなべっぴんさんはボスにはもったいねーけど。しょうがねえよな。とりあえず。いいこにしてたら食べ物やるからよ」

「抵抗しねえでもらえますかい。手荒な真似はあまり許されてねえんだ」


盗賊二人は紳士的態度を装い近づいてくる。どうみても隙あらば捕まえようと魂胆がみえまくり。


「おま……あなたたちは水と食料持っているかい」


布の者が高い声で訪ねると二人の男は顔をあわせながらニヤリと笑う。

すると手に持っていた袋から水と食べ物を出して見せつけた。


「なんだ。お嬢ちゃんおなかすいているんだね」

「安心しなーついてくるならいくらでもやるからよ」


すると布の人は勢いよく体全体に巻き付けていた布をはぎ取った。


「フン。ならば遠慮なくもらおうか!」


その姿は…そうこの物語の主人公!放浪人だった。


「「げっ…おっ男!?」」


二人の盗賊はその姿に目を見開き驚愕した。いや、身長とガタイでわかるだろう…


「ログの言う通り。ここいらの盗賊は女だと思えば黙っても食料を運んでくる

おかげで死なずにすんだぞ!」


盗賊達の虚をついて放浪人は地面を強く蹴るとトサカ男の顎を拳で殴り倒した。

そして「とぉぉおりゃっ!」と掛け声とともに

すかさず後ろにいたハゲ金髪の首元を回転飛び膝蹴りで蹴り飛ばす。

流れるような攻撃に二人の男は、あっという間に地面に倒れ食料と水を落として気絶した。


「見事ですマスター」

「まさか成功するとはな」


放浪人は倒れた盗賊達を横目に落ちている食料と水を手に取った。


「この辺りは盗賊のボロック団が多いので助かりましたね」


ログはボロック団の団長ボロックは大の女性好きで通行人が女性なら仲間が声をかけて

ボスのところに連れていくことが多く食料や水場合によっては

金品をくれるなど思いのほか好待遇という情報を放浪人に伝えていたのであった。


「ついでに金もゲットだな」


放浪人は倒れているハゲにバンドを向けると「カシャ」とカメラのシャッター音が鳴った。


「クエスト、盗賊団ボロック一味を懲らしめろランク手下達成!金額イチロー」


とログが文字と共に読み上げると放浪人は顔をしかめた。

因みにもう一度言うがイチローは我々の世界で言うと100円ぐらいである。


「少なすぎないか」

「盗賊団の団長ボロックが一度懲らしめられているのでボロック関係の

報酬はかなり少なくなっております。因みに自治体に引き渡せば10ローです。マスター」

「割に合わん。というよりこっちが盗賊だ」


放浪人は不機嫌そうにその場に座り込むと先ほど手に入れた食料を口に入れた。


「マスターは大食いなんですね。行く前に頂いたミストレス様の食料を全て食してしまわれるなんて」

「まさか森に入るまで3日かかるなんて思わんだろ」


ミストレスからそこそこもらった食べ物を僅か1日で食べてしまい

放浪人はかなり腹ペコの状態であった。

そんな中に通りかかった報酬額が高い砂漠の大型ワームを追いかける気力もなくスルーしていた。

そんな元気はなかったのであろう。放浪人が再び砂漠で死ぬ覚悟を決めた時。


「女性のようにふるまってボロック団の手下を倒しましょう」


というログの救いの提案…いや妙案であった。


「それにしてもここ二日過ごしているが魔物というより生き物自体あまり見かけんな」


放浪人は食事をしながら辺りを見渡した。

そこにあるのは岩と砂そしてかつて生き物だった形跡のある骸だけ。


「砂漠地帯の魔獣は普段出てくることは少ないです空腹時の時以外は砂漠の下にかくれているので雨でも降れば地面から出てくるとは思うのですが」

「っちあの時の大型ワーム倒すべきだったな」


放浪人は肩を落とす。


「安心してください。もうすぐ森林地帯に入りますのでそうすれば魔物狩や食事には困りません」

「となればさっさと行くとするか。あまりゆっくりしている余裕もないしな」


食べ物と水を少し残し気絶している盗賊達の前に置くと放浪人は再び歩き出した。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


少し離れた大きな岩。その岩陰にザガンが放浪人の様子を見ていた。

フーン。やっぱりあいつなかなかやるじゃねえか、とザガンは感心する。

どうやら大型ワームを無視した時はここまでかと引き返そうと思ったらしいが何やら妙なことを始めたので最後まで見届けていた。

ザガンは、足元に広がるバラバラになった大型ワームの死体を踏みつけ口に入っている物を吐くと放浪人を追おう腰を上げた。

その時。


「おい、とまれ」


突然低い声と金属がこすれる音がした。

ザガンは知っていたかのようにゆっくり振り向くとそこには湾曲した刀、柄の長い短剣、倉型の斧といった武器を構えた個性的髪の毛の集団が辺りをとり囲んでいた。


「お前らは確か…」


ザガンはこの集団に見覚えがあった。


「これはこれは、ボロック団の雑魚たち俺様に何かようでも」


陽気に話かけ取り囲む男達にニヤリと笑った。

ボロック団と呼ばれる男達は特に黙って武器を構え続けた。


「そういえばここはボロック団の活動エリア内だったっけ。やたらと人数が多いな。祭りでもしてんのか?」


ザガンは、ニヤリと笑う。武器を目の前に突き付けられているのに恐れる様子もない


「おいおいなんだよ。挨拶ぐらいできるだろ」

「カシバシ団に挨拶は必要ない」

「あん?」


ザガンが顔を上げると奥から大柄な男が近づいてきた。

ボロック団の集団は大柄の男の為に一斉に通る道を空ける。

大柄な男は角刈りで無骨な顔、大柄でTシャツから鍛え上げられた筋肉の姿。


「団長!奴はカシバシ団の一員に違いありません!」


一人の男が報告すると大柄な男は頷き


「ここは俺たちのエリアだ。カシバシ団お前らの侵入は許さん」


と言いながら威圧するようにザガンの前に立ちはだかった。

ザガンはニヤリと笑った。


「ほう。こいつは驚いたまさかボロック団の頭領ボロックが出てくるとはな

WNW(ワルネットワーク)の情報だと寒雷の魔女に氷漬けにされたと聞いたが」

「ふん。貴様にこたえる義理はない。何故カシバシ団のモノがここにいる。それにあそこに倒れている俺の仲間……いったいどういうことだ」

「あー。なるほど」


そう言いながらザガンが放浪人の方を見た。

おもしれえ少しこいつらを利用させてもらうか、

ボロック団の頭領と会った放浪人を追う謎の男ザガン果たして彼の目的は一体。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る