第9話 一時の別れ!またあおうサーナ!

何故か俺は正座していた。足の痺れなど無いわけだが。

そして目の前には神が立っていた。

どういうことだ。


「ワシの下で数年間休まずよく頑張った」


困惑している俺などどうでもよさそうに神は笑いながら俺の肩に手を置いた。


「これで貴様を改めて違う世界に出向することができる」


前にも言われたような言葉に俺は……思い出した!

長年の修行が終わったばかりの時だ!

記憶の通りだと神の通達で転移という名ばかりの出向が正式に認められた時の話だ。


「はい!ありがとうございます!」


俺は神に対して深く頭を下げた。決して感謝出来たもんではなく厳しい物だったが終わってしまえばいい思い出だ、


「ウム!この修行でお前は、肉体はかなり強くなった!胸を張れ!」

「わかりました!」


気合いの激励には気合いで返す!神の教えだ。


「だが!お前にはまだ足りないものがある!わかるか?」


という問いにも俺は迷わず正直に答える!


「わかりません!教えてください!」

「心じゃ!馬鹿者!お前はもっと心を鍛えぬか!」


神は俺の肩を掴むとぶん投げた!

見えない壁に激突する。痛みはない

しかし気持ち痛い。不思議なものだ。


「やはりお前はまだ心と肉体が……いやなんでもない。よいか!

貴様は今から新しい世界で生きていくのだ!そして成長するのだ。心も体も!」

「わかりました!」

「よし行け!」


神が俺の頭に手を置くのを最後に俺の意識は暗転した。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「馬鹿者!馬鹿者!馬鹿者!おきんか!」


耳元の大きな声で放浪人は目を覚ました。その目線の先にはシショウが止まっている。

シショウは放浪人が起きることを確認すると

次の瞬間くちばしを振り下ろし放浪人の額をどついた。


「いっって!」


あまりの痛さに放浪人が飛び起きるとシショウは何食わぬ顔で窓から飛び立っていく。

なんだ!あの鳥!こうなったら飼い主に問い詰めるしかないな!、と

痛む頭をおさえながら放浪人は着替えを済ませ足早にサーナのいる部屋に向かった。

だが部屋のドアはすでに開いていてもぬけの殻だった。


「そうか。あいつ、帰ったのか」


そうつぶやき部屋から離れ放浪人は階段を下った。


「あら、おはよう」


階段を下り店内に入るとカウンター前でコーヒーを作っていたミストレスが笑顔で

放浪人に挨拶をした。


「ああ」


素っ気ない返事をしながら放浪人は店内を見渡した。


「サーナちゃんならさっき行ったわ」


サーナを探しているのを察してかミストレスは教える。


「そうか明日の朝帰るって言ってたからな」

「見送りに行ったらどう?サーナちゃん行く前に階段を見つめて寂しそうでしたよ」

「そうか」


放浪人はサーナと会った時からを思い出す…

ああそうか…俺サーナに伝えなきゃいけないことあるのか

放浪人は足早にドアに向かい外に飛び出していった。


「青春ね」


ミストレスはつぶやき笑顔で手を振った。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


テレポート台の前にサーナが立ちつくしていた。


「もうシショウどこいちゃったのよ」


そうつぶやきながら飛んでいってしまったシショウを探している。


「あのーもうすぐ時間ですが」


白装束を着た術者がイライラしながらサーナに声をかけた。


「あの時間をずらしてくれることはできますか」

「ごめんなさいそれはできないんですよ」

「(ガーンね大ピンチ)じゃあ次の時間にすることは」

「ですからごめんなさい。次のお客様がいるので」


冷たい目をした術者の言葉にサーナは肩を落とし諦めようとした。


そのとき


「ワハハハハハハハハハハ」


陽気な鳴き声が響き渡る。

サーナが振り向くとシショウがテレポート台まで羽を広げ優雅に滑空。

その後ろから改札ゲートを飛び越え放浪人が走ってくる。

あっあいつ!わたしを見送りに来たの、

啞然とするサーナの肩にシショウが着地すると同時に放浪人も目の前に立ち止まった。


「なっ何しにきたのよ!別に見送りなんていらないんだから!」


サーナは顔を赤くしてそっぽ向く。

だがやはり気になるようで放浪人をちらりと横目で見ていた

そんな彼女に放浪人は


「伝えたいことがある」と真面目な顔しながらぬかした。


サーナはますます顔が赤くなった。


なっなに!これってもしかして!いやいや確かに顔がいいなーと思ったけどでっでも色々早すぎでしょ。野蛮人か!、パニックになったサーナに放浪人はいった。


「金必ず返すからな!」


いったんだ。空気を読まない言葉を……


「はいっっ……はぁ」


放浪人の予想外な言葉に当然変な声を上げ啞然とした顔をするサーナ。


「おっお金?」

「ああ!借りっぱなしだからな!いつか金ができたら返す!

ある人から教わったんだ借りは必ず返せと!」


拳を握りしめ熱弁する放浪人にサーナは


「この…馬鹿!熱血馬鹿!」といい背を向けてテレポート台に怒りながら上った。


「なんだ?何怒っている」


アホの放浪人の困惑を他所にサーナが乗ったことを確認した術者はあきれながら手を上げた。

するとテレポート台が光り始めた。


「まあでも……返すならセインエイツまでちゃんと来なさいよ

わたしあんたが来るまでシショウと待ってるから」


サーナは振り返ると放浪人に向けて笑顔をみせた。


「あっああ」


その笑顔におもわず見とれる放浪人。

テレポート台に立つサーナとシショウの姿が光とともに消えていく。


「待っておるぞ!ウハハハハハ!」


シショウの鳴き声(?)と共にサーナとシショウの姿がなくなった。


「サーーーーーーーーーーーーナーーーーーーーー!」


放浪人は叫びながらテレポート台に勝手にあがり膝をついた。

その光景をみて警備員が放浪人に駆け寄り肩に手を置くと……


「なにおまえは勝手に改札飛び越えてきてるんだ!

しかもどさくさ紛れて自分もテレポートしようとしやがって」

「……」

「とっとと、ここから出ていけ!」


放浪人は肩に置かれた警備員の手を掴むと


「がああああああああ!腕が!おれるーー!」


警備員にアームロックを決めた。


「それ以上はいけない」


術者の声に放浪人は警備員を開放し悟った顔。

テレポート場から離れ改札から堂々と出ていった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


酒場ソルシエールに帰り路


(サーナのあの笑顔…しかたない!早く金を稼いで学園まで返しにいくか)


こうして放浪人はサーナに金を返すため足を進めた!

だが!この世界に送られた真の目的があることに彼はまだ知らない!



第一章     完!    二章に続く!

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