第25話
「さぁ、貴女の望み通りについたわよ。ここが街の出口」
「そうね、森に通じる道だわ」
「さぁ、ちゃんと言う通りにしたわよ。どうするか教えてもらいましょうか」
「知りたければ一緒に来ればいいわ」
小百合の腕から抜け出そうとしたセイラムをギュッと更に締め付けて放さないようにし、小百合はセイラムの文句を聞き流しながら山道を登っていく。頂上近くの開けた草原にやってきた二人の目に映りこんだのは二つの影。
「光男!」
「小百合!」
抱きかかえていたセイラムを放り投げるようにして放し、小百合は光男に駆け寄り抱きついた。セイラムは空中で宙返りをして草原に降り立ち、ゆっくり体をくねらせてドゥシェに近づく。
「なんだ、あんたもここに来たの」
「そういうセイラムこそぉ。失敗したんだねぇ」
「ふざけないで。まだ最終ステージが残っているんだから分からないわ」
「あぁ、そういえばそうだったねぇ。ゾクゾクぅ、ドキドキの最終ステージがあったねぇ」
二人の様子に小百合の肩に手を置いてかばうようにしている光男が口を開いた。
「この世界からの出口を教えてもらおうか」
「出口に行きたかったのは相棒との待ち合わせだったんだねぇ。でも次の出口は教えないぃ。それは私の損になるぅ」
「じゃぁ、セイラムに聞くわ。セイラムもこの世界からの出口を知っているんでしょう」
「えぇ、知っているわ。でもあたしも教えない」
「そういうと思った」
小百合は光男にこれまでのことを話し、光男はその話と自分の体験した話を照らし合わせてなるほどと頷く。
そして、小百合に耳打ちをし、目の前に居るドゥシェとセイラムを見つめた。
「俺達をこの場所に呼んだのはお前等じゃないのか?」
「あら、どうしてそう思うの?」
「お前達はこの世界の出口を知っている。そして、ドゥシェ、お前は俺の心を読みすぎだ」
「セイラム、あんたもね」
「ふぅ、やっぱり頭がいいねぇ、光男。そう、その通り。私達はこの世界の管理人だ」
「管理人」
「その名の通りぃ、この人外の世界を管理しぃ、保つのが役目ぇ」
「それと、あたい達をこの世界に引きずり込んだのとどう繋がっているっていうの」
「簡単に言えば暇つぶし。でも、ただ、遊ぶだけの暇つぶしじゃなくってよ。この世界にはね、定期的に人間が必要になるの」
「人間が必要になるって、どういうこと」
「この世界の全ては人間の本質で作られている。喜怒哀楽はもちろん、その価値観から性格、持って生まれた全てから作られているの。そして、それを形作っている人間が死んだとき、新たな人間が必要になる」
「今回はちょっとした手違いで二人になっちゃたんだよねぇ、本来は一人だけ招くんだけどぉ」
二人の話に小百合は少々驚いているようだったが、光男はその顔色を崩さない。全てを理解していたから驚いていないわけではなく、光男が詐欺師としての仮面を被ったからだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。