第24話
「クスクスぅ、出口って君が入ってきた場所が出口だろぉ?」
ドゥシェは光男に悟られぬよう笑顔でつくろい、いつも通りの口調を保つ。その態度は光男に確証をもたらしているのだということも知らずに。
「噴水広場に出られない、ということは出口にもいけないということだろ?」
「さぁ? どうでしょぉ?」
ドゥシェの全ての動作を見逃さぬよう見つめてくる光男の瞳から逃げるように、ドゥシェは踊り体を揺らめかせ戯ける。その態度に光男は自分の思惑が気付かれていないことと、自分の中に組み立てている考えが正しいことを確信した。だが、ドゥシェと違い、光男は決してそれを表には出さない。
「ドゥシェ、お前は全てにおいて正しいようだ」
「ふふん、そうでしょぉ、そうでしょぉ」
ドゥシェが得意気に笑ったのを見て、光男は心の中でにやりと微笑む。
「だが、お前の言う通りこの街が俺の街ならどうして出口に辿りつけないんだろうか」
「どういうことですぅ?」
「俺は方向音痴じゃない、なのに、幾ら道をたどっても噴水広場に出られない。噴水広場がなくなったのか、意図的に来ないようにしているのか。どちらにしても、この街は俺の意思に逆らっているとしか思えない」
「それでぇ、どうして出口を教えなきゃいけないのぉ?」
「お前は正しい。だが、俺はどこかでそれを疑っている。だってそうだろう? 俺の街なのに俺の思うようにならないなんて、それはお前が嘘を付いているとも言えるだろ」
「嘘ぉ? 嘘なんてついてないよぉ」
「だから、出口を教えてくれって言っているんだ」
「出口に行ってどうするんだいぃ?」
「それはついてきて確かめればいいだろう?」
暫く考えたドゥシェは瞳を閉じたまま指を一つ鳴らす。すると、今までそこにあった壁がゆらりと揺れて蒸発するように消えうせた。
「この道を行けば噴水広場に出られるぅ」
「なるほど、ドゥシェ、あんたが道を隠していたのか」
「違うぅ。私が隠したんじゃなくって私が見つけてあげたんだよぉ」
「見つけてあげた、か。なるほどね、お前の正体がなんとなくわかったような気がするよ」
光男はドゥシェを横目に、通り過ぎ様にそう言って開かれた道を歩き出した。
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