第23話

「この街の出口は何処なの?」

 小百合の言葉にセイラムは少し首を傾げる。

「街の出口? この世界の出口じゃなくって?」

「ここからの出口も知っているの?」

 セイラムの言葉に驚いた小百合はじっととオッドアイの瞳を見つめた。

 しかし、セイラムは視線をそらし小百合の眼力から逃れようとする。

「セイラム、あんた一体何者?」

「さぁ、何者かしら」

「教える気はなさそうね、でもいいわ、あたいが今知りたいのはそれじゃない」

「相変わらず、見極めるって目だけは確かね」

「そうよ、光男に散々鍛えられたんだもの。これがあたいの最大の武器。さぁ、言いなさい。この街の出口は何処」

「あらあら、少し褒められたくらいで急に強気ね。この街の出口を知ってどうするつもり?」

「教えてくれたら教えてあげるわ」

「取引ってわけ? 生意気ね。でもそれじゃ取引になってないわよ」

「そうかしら? だってあんたはあたいがどうするか知りたいんでしょ?」

 小百合の態度が気に入らないセイラムだったが、小百合の言う通りどうするつもりか知ってみたいという気持ちが湧き上がり、尻尾をうねらせて咳払いをした。

「いいわ、教えてあげる」

 小百合はセイラムのその言葉ににっこり微笑み、セイラムを抱きかかえる。

「それじゃ、案内してもらいましょ。くれぐれも間違わないでね。貴女が嘘をついたらあたい、あんたの首を絞めちゃうかも知れないから」

「フン、脅しても無駄よ。貴女にあたしは殺せるわけがないもの」

「あんたが変な動物だから? でも生きているわよね、だったら殺すことも出来るでしょ。意外に馬鹿なのねセイラム。人間ってね、追い詰められれば何をするかわからない動物なのよ」

 優しい微笑みが逆にセイラムには怖く感じ、立場が逆転した二人はゆっくり街の出口に向かって歩き出した。

(きっと光男もそこにいる。あたいが考えることが光男に分からないわけがないもの)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る