第39話
これでもかと装飾された実用性の少なそうな鎧兜を身につけた神は、酷く美しい顔を歪ませる。
「何を言っているんだ、思い通りしたいと思うのが人間ではないか。我は幾つも見てきたぞ、思い通りにするために金を積み、人を罵倒する連中を」
「あぁ、あんたはソーシャルゲームの中で存在していた神様だな。なるほど、見た目が良くて装飾過美なはずだ。それは酷く単純で普通の発想だな。確かに思い通りにしたいと願うのが普通だ。でもそれらの地盤には思い通りにならないということがある。何でもかんでも思い通りになる場合は思い通りにしたいとは思わないだろ。それに、神様は大事なことを忘れているな」
「なんだ?」
「あんた達が作り上げたあの妙なゲームを生き残ってきたのが俺や姉貴だろ。しかも、あんた達のゲームルールに微妙に従わずにね。それはつまり俺や姉貴が普通じゃないってことだ。そこら辺を歩いていた普通の人間とはまるで違って変。だから変人って言われているんだよ。俺や姉貴にとって変人って言われるのは褒め言葉、変態は駄目だけどさ」
神様はなんだか納得行かないが、理屈は分からなくはない。と言った風に眉間に皺を作ったまま首を数度縦に振る。そして、さらに別の神様が姿を表し、俺の目の前に立った。
「我らの力を奪わぬのは何故だ」
「一番の理由は面倒だから」
「面倒? 何が面倒だというのだ。ただ一言願えばいいだけだろう」
「嫌だな、分からないの? あんた達が存在するのは俺以外の誰かが何かを生み出したからだろ。力を奪うとかお前らの存在をなくすってことは、生み出した奴の生み出す意味をなくすことになる。元通りを願った以上、もしここであんた達の力をなくしても、また別の何かが生まれるのは当然のことじゃないか。何より、今力をなくさせてもゲームなり漫画、アニメなり、あんた達を使わない連中なんて居ないだろ。なら、同じ形でなくても別の形であんた達は進化する。今あんた達の力を無効化しても別の力を持って出てくるかもしれない。と、色々考えていると面倒なんだよ。だったら手っ取り早いのは同じことをあんた達がしでかさないことだろ? 同じことになると面倒だしな。俺は面倒が一番嫌いなんだ」
「面倒、それだけですべてを元通りにし、我らの力をそのままにするのか」
「そうだけど。望みは何でも叶えてくれるんだろ? 俺が望んでいるんだからそれで良いだろ。問題があるっていうのか?」
暫くのざわめきの後、威厳のある声が大きなため息とともに決定事項を伝える。
「わかった、貴様の望み、叶えよう」
了承の言葉とともに再び目の前は真っ白に輝き、意識が遠のく中、聞き覚えのある声が感謝の言葉を述べてきた。
「やはり、君は僕達が選んだ人間だったよ。これで元通り、ありがとう」
「俺は俺のしたいようにしただけだ。礼を言われる事は何もしていない」
「そうか。だが、ありがたいと思っているのは本当だからね。一応言っておくよ」
礼をいうだけ言って、あの男の意識は消え去り、俺もまた意識がなくなっていった。
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