第34話
瞼の向こうの光が和らぎ、目を開ければそこは真っ白で俺と姉貴以外何もない世界が広がっている。これはまたいかにもなと言いそうになって、姉貴を見れば、姉貴は眉間に皺を寄せ、あからさまに機嫌悪く舌打ちをした。
「ありきたりね、つまらないわ。いくらなんでもこれはないでしょ」
俺以上に辛辣な言葉を吐き出した姉貴だったが、俺も姉貴の言葉に同意する。せめてもう少し変わり種が欲しかった所だが、これでは先読みが簡単に出来てしまってつまらない。
特権者の選抜が終わって生き残った者が神との謁見をする。この何も無い所こそ、特権者だけが訪れることの出来る神々の間なのだ。と、どうせそんなところで、ありきたりすぎてつまらない展開。
しかもこの場に姉貴と俺しか居ないということは、選ばれたのはこの二人ということになる。俺と姉貴を選ぶなんてひねりがなく、非常につまらない。
二人が呆れたように真っ白な部屋に置かれた真っ白な椅子に腰掛ければ、案の定どこからともなく声が聞こえてくる。
「おめでとう、こここそが特権を受けるに値するものが訪れることの出来る場所」
なんてありきたりな台詞だ。俺が肩をがくりと落とせば姉貴も深い溜息を吐き出す。
「どんな方法で生き残ったとしても君たちが選ばれたのには違いは無い」
「そうね、隠れていただけで何の努力もしないものが勝ち取るなんて、残念極まりないけれど」
口々に放たれる神々の言い分。
残念なのはこちらの方だと言いたいくらいだったが、姉貴をみればその口の端はゆっくりと引き上げられ、その隙間から小さく笑い声を漏れさせている。
俺はその様子を見て、決して俺は口を開いては行けないと肝に銘じた。なぜなら、このようにつまらない結果となっているのに姉貴が楽しもうとしているからだ。姉貴の楽しみを邪魔する勇気は俺にはない。
案の定、姉貴はにこにこと楽しいという気配を満載にして話し始めた。
「そう、貴方達にとってはとっても残念な事だったのね。だったら今すぐ私達を消せばいいわ」
「何だと?」
「だって、残念な存在なのでしょ? 神様に残念なんて言われたら、せっかくこの場所に辿り着いたのに喜びも半減しちゃうわ。いいのよ別に、人間が作った神様だもの、そりゃ間違いもあるわよ」
「間違い、我らが間違ったとでも言うのか」
「違うっていうの? 嘘つきなのね神様って。あぁ、そうか『ついうっかり』選んでしまったっていう感じなのかしら?」
こうなった姉貴を止めることは誰にもできない。もし止めたとしたら、止めた時点で半殺しになるのは確実。俺はカモにされた神様たちを気の毒に思いながらも押し黙り観客に徹した。
「なんだ、この人間は。努力もせず、この場にいることだけを有難がれば可愛げもあるが」
「本当に。全く何様のつもりだ」
まぁ、神様連中にしてみればそういう見解が一番人間らしく一番まともな反応。彼らの中では自分たちが最も貴い場所にいるのだから、人間ごときに偉そうに言われれば腹も立つだろう。だが、残念ながらその相手が姉貴であるのは可哀想なことだ。
「あら、その言葉そのまま返してあげるわ。一体あなたたちは何様のつもりかしらね」
「なんですって?」
「だってそうでしょう? 努力をしないといったけど、努力をしたものを消し去りここにくる権利を奪ったのは貴方達じゃない」
「何を言っている。我々が奪っただと? そんなはずはない。我らの選定方法を愚弄する気か」
「愚弄? まさか、呆れているのよ。努力を自分達で消しておいて努力という言葉を口にするなんて、いったい何様のつもりかしら?」
肌にちりちりとした小さな静電気のような感覚が伝わってくる。
怒りや苛立ちと言った雰囲気で、つまりこの空間は神々の領域であり、彼らの感情がまともに伝わってくるようだ。
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