第38話
「本当に帰らなくていいんですか?」
土曜日から真理の家に泊まった俺は日曜日になっても真理の家のベッドの中に二人裸で居た。
真理は可愛らしくベッドの中で胸に擦り寄りながら家のことを聞いてくるが俺は「別にいい」といい、体に唇を滑らせる。
何度目にもなるそれに、真理の体は敏感に反応を返してきた。
途切れ途切れに出される吐息と、体の温かさにすべてを忘れてしまえばいいと促されるように抱くが、一時の快楽がそれを忘れさせてくれても、すぐにまた同じ内容が頭の片隅に現れ悩ませる。
「今日の清史さんどうしたんですか。すごくて、真理壊れちゃいそう。少し休憩を」
真理がそういってベッドから出ようとしたのを引きずり込んで行為に及ぶ。
昨夜は二人ともがその行為に体が疲れきって知らぬ間に寝てしまっていた。
目を覚ませば真理が横で寝息を立てている。
暫くは俺もそのまま横になり天井を見つめていたが、腹が空腹だと宣言しはじめたので真理を起こして食事を催促した。
体をうごめかせて勝手に食べてと言う真理に食事ぐらいといえば、体が痛くてそれどころじゃない、いったい誰のせいと薄く開けた瞳で見つめながら言う。
仕方なく冷蔵庫を開けて適当に食べた俺はベッドに戻り真理のうなじに唇を落とした。
「今日はもう止めてください。月曜日に会社にいけなくなっちゃうわ、お願い」
「俺は今やりたい気分なんだ」
「……何かあったんですか? こんなの初めてじゃないですか」
俺の態度に真理は困惑しながらも、体に唇を滑らせればその愛撫に小さな快楽の声を漏らし始める。
首筋から、片手では収まりきらない胸に向かって滑らかな肌を舐め上げ、その頂に到着すれば体がびくりと痙攣した。
「駄目って言っているのに、あっ……」
「体は言ってない」
本当に一体どうしたのかと聞いてくる真理の質問に答えることなく、愛撫を繰り返して再びベッドへ体を沈める。
しかし、幾度極上の体を抱いて過ごしても、快楽はあれども今までと同じような満足感と開放感を得られることは無い。
繰り返される行動が満足感を得るためなのか、欲望を満たすためなのか、それとも別の理由があるのか、全く何も分からなくなっても体を重ねることをやめなかった。
真理の制止の声も聞かず、ただただ体を求めて幾度も体を重ねる。
日曜の夕方には真理も体力限界なのかだらりと体をベッドに沈めたまま気を失ったように眠っていたが、俺はそれもかまわず犯し続けた。
意識はなくとも、体は反応し収縮して痙攣する真理の体は離れがたく、何度も突き上げ、俺も疲れてくれば真理の体を抱きしめ、締め付けるその場に熱い塊を残して抜かぬまま眠った。
月曜日の朝、真理に揺さぶられて起きた俺は食卓にあるパンとコーヒーだけの朝食をみて思わず「これだけか? 」と聞いてしまった。
いつもの家ではパンとコーヒーに加えサラダや目玉焼きといったおかずが用意されていたからだ。
「これだけって。用意しただけでもありがたく思ってよ。起きたら刺したままで引き抜くの大変だったんだから。何があったのか知らないけどあんな無茶なセックスされてもう体中が痛くてだるいのよ、起きたことが奇跡に近いわ。今日は帰るんでしょ? いくら奥さんが旅行中でも娘さんは居るんだし」
少し機嫌を損ねさせたのか、ため息混じりにそういわれた。
真理の言う通り登紀子は居ないが真由美は居る。
休みが終わってしまっているし、本当ならば家に帰らなければならない。
「あぁ、そうだな」
真理にそういって出社してみたものの、仕事を終えいざ帰ろうとすれば何故か家に帰ることが出来ない。
罪悪感のような後ろめたさがどこかにあるようで、一度家の最寄り駅に行く電車に乗ったものの、次の駅で引き返し俺は真理の家にやってきていた。
「帰ったんじゃないの?」
いつもは、俺の顔を見れば笑顔で嬉しいと抱きついてくる真理が少し驚きながらそう言った。
「帰ったがまだ登紀子も帰ってなかったし、俺は君と居たいから」
真理の言葉にとげがあるような気がした俺は適当な嘘をつく。
真理に会いたいという理由はそう言えば真理がこの家においてくれるだろうと思ったからだ。
家に帰れない今、真理の家まで追い出されてしまってはどうしようもない。
真理の体を抱きしめながら耳元で言い、耳たぶを少し唇で挟み込んで後ろに回した手でスカートを捲り上げて肌を撫で上げる。
いつもなら小さく可愛い声を響かせる真理だが今日は何故か手を払いのけ、体を離してため息をついた。
「あれだけやって今日もやるつもりなの?」
半分呆れたような声色に俺は少々苛立った。
「体が持たないわ。いくらなんでもやりすぎよ。ねぇ、本当にどうしたの?」
「なんでもない。ずっと一緒というのが嬉しくてやりすぎただけだ。今日はあんなにはしない」
真理の言葉の裏に帰ったらいいという言葉が含まれているような気がした俺は、とにかく今は追い出されないようにだけしようと返事をした。
「まぁ、それならいいけど」
そういってどこと無く納得行かないという顔をした真理だったが、ともかく夕食を食べましょうと食事の用意をしてくれ、俺はひとまずほっと胸をなでおろす。
これで一応家に帰らなくてすみ、食事と寝る場所の心配もなくなったからだ。
服を着替え椅子に座って食事を始める。
一人だと思ったからあまり量は作ってないという真理にすまないなといってはじめた食事だったが、考えてみれば真理の家で真理の作った食事をするのは初めて。
登紀子は必ず食事を用意しているから真理の家では食べないようにしていたし、土日は真理が起きられないと作ってくれず、月曜日もトーストされたパンとコーヒーだけだった。
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