第2話
毎日の生活に不満がない人間などいないだろう。
明るい性格で前向きであり、落ち込むことはなるべくしないようにと決めている登紀子にも当然不満はある。
その不満というのは大きく分けて二つ。
まず一つは一人娘の真奈美のことだ。
このところ、真由美は両親との時間が鬱陶しいかのようにすぐに自室へと向かって篭ってしまう。
引きこもりというわけではなく、高校には普通に通っているし友人との時間は楽しいようだがどうやら家族と一緒にいるというのが嫌な様子。
登紀子にもそんな時期はあったから理解できないわけではない。思春期と呼ばれる時期に必ず通る事柄だろう、食事を一緒にとってくれるだけまだましかもしれないと言い聞かせている。
ただ、登紀子にはどうしても真由美と話をしなければならないことが最近起こってしまっていた。真由美の様子もこのごろは前にも増してとげを出し続けているように見える。そのせいでどうにか話をしようとするのだがその時間がとれずにいた。
真由美のそんな態度は清史にとっては小学校高学年時代からのことであり、たいした事柄ではないと思っている。しかし、自分が働いて稼いできた金で生活しているのにという思いはどうしたって頭の片隅にあった。だから真由美の態度にどうしても文句が口から飛び出してしまうのだが、文句が向けられる先は決まって登紀子。
真由美に言えばいらない反感をまた買うことになるのは分かっていることだったので登紀子に不満をぶちまけるのだ。ただ、それを毎回真剣に聞いていては登紀子自身不満の塊となってしまう。だからいつもぶつぶつと文句を並べる清史に相槌を打つだけにし、それ以上詳しく話し合うことも相談することもなかった。
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