夜の物語

日々の生活に磨り減らされた体

満員電車の気色悪い重圧

とっくに最大積載量を超えた心にそっぽ向いて

光沢を失った革靴で帰路につく


駅のホームは 夢の死水域

ずぶ濡れで陸に打ち上げられた魚たちは

やせ細った体で どこへ帰る

流れ出る乗客を 文庫片手に見送る


声にならない声が イヤホンを通り抜ける

目を閉じたその一瞬 故郷の思い出

手に持っていた読みかけの小説が 足元に落ちた

この物語の終着点はいつなのか? どこなのか?


窓際で本を読もう お気に入りの紅茶を飲もう

物語に夜を溶かしたら 言葉たちが瞬いた

今日を生き抜こう とりあえず明日まで待ってみよう

明け方 沈みかけた星に栞を挟んで 今日はおやすみ

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