Memento Mori

増田朋美

Memento Mori

Memento Mori

その日、春が来たという割には、なんだか寒くて、ストーブが必要になってしまいそうなくらいの寒さの日だった。いったんしまったストーブをまた出して、とりあえず、あったまろうという人が相次いで見られた。そういうことをいつまでも繰り返しているから、わけのわからない発疹熱というものが流行るんだ、なんて、豪語する人も非常に多くみられるようになった。仕事に行く人も、そうではない人も、みんな疲れた顔をして、のろのろ歩いている人ばかりになった。レジャー施設なんかも休業だし、飲食店などもほとんどが休業している。スーパーマーケットや医療関係だけが、やたら繁盛して、おかしな世の中になったものだ、と、いろんな人がつぶやいていた。

今日も、浜島咲は、とりあえず今日のお稽古を終えて、コニュニティーセンターを出て、バス乗り場に行った。最近は、お稽古に来る人も減ってしまうかと思われたが、やっぱり人間はだれかとつながっていたいという思いがあるのか、こういう時世であっても、稽古に来たいという人は多くみられた。もう稽古は休業したほうが、いいのではないかと咲は思っていたが、生徒さんのほとんどは、そういう傾向は見られず、いつもの通り、お稽古に来てくれるのであった。みんな、苑子さんやはまじさんの顔を見てると元気になれる、ありがとう、とにこやかに言ってくれる。それが良いのか悪いのか、よくわからないけど、そういう風になっているのであった。

咲が、バス停でバスを待っていると、バスはすぐに来た。時刻表通りに来るのは珍しいほど、ここのバスは遅れることが当たり前なのだが、今日は、すぐに来てくれた。多分、外出自粛のせいで、お客さんが少ないんためだと思われる。咲は、急いで、バスに乗り、整理券を取った。いつもなら、人でぎゅうぎゅう詰めのバスなのだが、今日のバスはがら空きだった。まあ、東京とか、神奈川のような場所じゃないから、みんな、マイカーで通勤している人ばかりなのだ。それでバスに乗っている人が、あまり多くないのだろう。

咲は、バスの真ん中の席に座った。この辺りは、一番ゆれが少なく酔いにくいとして、いつもお年寄りが座っているのだが、今日は、すぐに座ることができた。さて、これから駅まで、30分くらいか、と咲は、カバンの中からゲームでもしようかとスマートフォンを取り出すと、後ろの席の人が話しかけた。

「こんにちは。ねえ、ちょっと人違いだったら申し訳ないんですけどね。」

後ろの席の人は、女性だった。年齢も咲と同じくらいか、一つか二つ年上のような感じの人だった。

「はい、なんでしょう?」

咲が言うと、

「浜島さんでいらっしゃいますよね?浜島咲さん。確か、桐朋音楽大学を出てらっしゃる。その時、ちびまる子ちゃんのキャラクターにあやかって、はまじ、はまじとみんなから呼ばれていた。」

と、その女性は言うのだった。自分のことを、間違えることなく知っているので、ちょっと怖いなあという気もしてしまうのだが。

「あの、失礼ですけど、どちら様で?」

「お分かりになりません?あの、私、桐朋音大でピアノをやっていた、小磯です。小磯祐子。」

と、彼女は言った。この名前を聞いて咲はやっと思い出す。小磯祐子さんね、確か、音大時代、精神関係があまりよくないと言って、問題になっていた学生さんだった。日本音楽がものすごい好きで、ピアノ専攻のくせに、お琴教室にちょっと通っていたという経歴のある人である。

「ああ、小磯さん。お久しぶりです。えーと、桐朋音大以来だから、何年ぶりかしら?もう、二十年以上たっているのかな。それなのに、私のことを覚えていてくれるなんて。」

「ええ、はまじさんは、あまり変わってないから、学生時代と。」

と、祐子さんは、にこやかに言った。学生時代とあまり変わっていないといわれると、成長していないのかなと言われているような気がして、咲はうれしいのかうれしくないのかよくわからない顔をする。

「小磯さんは、富士市内にお住まいなんですか?私、毎日このバスで通勤しているけど、今まで一度も、お目にかかったことはありませんでしたね。」

「もう、同級生ですもの、敬語なんて使わなくていいのよ。私は、一年半前に、こっちに引っ越してきたばかりなの。見かけなかったのは、そのせいよ。」

咲がそう聞くと、祐子さんはそういうことを言った。

「そうなのね。じゃあ、今までは、東京とか、そっちのほうに住んでいたの?」

「ええ、埼玉に住んでたわ。埼玉の所沢市よ。」

所沢かあ。電車で30分くらい乗れば、すぐに新宿にも池袋にも出られる便利な所じゃないか。それなのに、なんでこんな田舎に引っ越してきたのだろうか。

「じゃあ、ここにきて、ちょっと不便さを感じない?バスも電車も、一時間の中で本数が少ないし、生きたいところに必ずバスやタクシーでいけるとも限らないし。」

と咲が聞くと、祐子さんは、

「いいえ、所沢はいつも人の声がぎゃんぎゃんしててうるさいから、こっちのほうがよほど幸せよ。」

と、言うのであった。ちょうどこの時、

「まもなく、富士駅前、富士駅前に到着いたします。お降りの方は、押しボタンでお知らせください。」

と、いうアナウンスが流れたため、咲は急いでボタンを押した。

「あら、はまじさんも富士駅で降りるの?私もそうなのよ。」

と、祐子さんもそういうのだ。バスは、駅前のバス乗り場に停車して、ドアを開けた。咲は椅子から立ち上がって、運転手に運賃を支払ってバスを降りた。祐子さんも同じようにしてバスを降りた。

「バスは、ICカードが使えないのよね。なんて不便だと小磯さんは思わなかった?所沢から越してきたんじゃそう思うでしょ?」

と咲が言うと、祐子さんは、

「まあ、それもしょうがないわよ。そのうち慣れてくるでしょ。」

と、笑っていた。不思議だなあ、そんな風にいうなんて。だって、都会は色いろ便利なものがあって、それに染まってしまうと、なかなか田舎の不便さには慣れにくいと、思われるのだが、、、。人によって考え方が違うのかな。

「ねえ、この後は、ご自宅まであるいて帰るの?それとも電車?」

と、祐子さんが、そんなことを言った。

「ええ、あたしは歩いて帰るけど?」

咲がそう答えると、

「ちょっとお茶していかない?あ、ご家族の方がいらっしゃるのかしら?あたしみたいに独り者ではないわよねえ。」

と祐子さんは言った。咲は、久しぶりの再会だし、お茶を飲んでもいいかと思って、

「いいえ、あたしも独り者よ。お茶していきましょ。」

と、言った。二人は、そのまま駅の構内にある、カフェの中に入った。とりあえず、一番奥の席に座り、コーヒーを注文する。ウエイトレスが、すぐにコーヒーを持ってくると、祐子さんは、こんな話をし始めた。

「ねえ、はまじさん、はまじさんはさっき、私も独り者だと言っていたけど、結婚してなかったの?」

「ええ、一度したんだけど、すぐになくしちゃったのよ。」

咲はそう正直に答える。

「じゃあ、再婚する予定もないの?いい感じになっている男性とかいる?」

祐子さんに聞かれて咲は、

「いないわねえ。お琴教室に来るのは、お年寄りばっかりだし。」

と、答えた。

「あら、はまじさんはお琴教室に?」

と祐子さんがそう聞くので、

「ええ、今、尺八の代わりのフルートを吹く仕事をやっているの。」

と、答えた。

「そうなのね。立派な仕事じゃない。あたしなんかとは、格が違うわ。やっぱり、優等生は違うわねえ。」

と、祐子さんに言われて、咲はそんなことないわよといった。

「それより、祐子さんは、今何をしているの?」

「そうねえ。何かしていると言えばいいんだけどねえ。あたしは、はまじさんみたいに優等生じゃなかったし、落第寸前でやっとこさ、で、卒業よ。だから、今、何もしないで、こういう状態なの。」

と、祐子さんは、お財布を開けた。その中に、精神障碍者手帳がチラリと顔をのぞかせた。そうか、そういうことか。そうなると、都会では、障碍者認定されるのが難しいと、誰かに聞いたことがある。つまり、障碍者認定されるように、この富士市にやってきたのだろう。

「そうなのね。あたしも、一時期、体調を崩していたことがあったから、そういうものをとった人に対して偏見はないわよ。しょうがないことってあると思うし。でも、この富士市は、所沢に比べると、かなり不便な町であることは確かよね。」

と、咲は言うと、祐子さんは、うれしそうな顔をして笑った。

「ありがとう、やっぱり静岡の人は、やさしいわね。所沢では病院はたくさんあるけど、優しい人は少なかったわ。まあ、車がないと不便なところはあるけれど、あたしは、富士市には、そんなに不満はありません。だって、こんな面白いシステムがあるのよ。」

祐子さんは、そういって、スケジュール帳を取り出した。それを開いて、一枚のA4サイズの紙を取り出す。それには、

「縁の会、入会申込書」

と書いてあった。

「へえ、小磯さんは、そんな一面もあったのねえ。仏教でも習いに行こうなんて。そんなことに小磯さんが興味を持つなんて、あたし、知らなかったわ。」

と、咲が言うと、祐子さんは、首を振った。

「いいえ、ただの講座ではないわよ。例えば、あたしが死んだあと、必ずやるのが葬儀よね。火葬場に行って、納骨をするでしょう。それがお墓というものだわよね。その管理は、あたしたちの次の代がやるというのが、通例になっているけど。でも、最近、墓じまいとか、そういうことをする人もよくいるじゃない。」

祐子さんは、非常に重たい話を始めた。

「あたしは、ただの精神障碍者で、もう、家族とも疎遠になっちゃったし、このまま死んだとしても、親せきが集まって葬儀をしてくれることもないと思うの。だから、もう家族の墓地には入らないで、一人で逝くことに決めたわ。だから、これに入会しようと思うわけ。」

なるほど、この申込書によると、自身が何かあって死んだとき、葬儀は一切行わず、遺体は火葬場にじかに運び、遺骨はお寺の人によって、海にばらまくと書いてある。

「だから、あたしも、そうすることにしたのよ。精神障碍者なんて、何の役にもたたないでしょ。だから、水の泡になって消えたっていいやって思ったの。そうすることが、社会にできる最後の貢献とでもいうのかなあ。」

と、祐子さんは言った。

「そうねえ。確かに、そういう考えもないというわけじゃないわよね。」

「ねえ咲ちゃん。」

咲がそういうと、祐子さんは、にこやかに笑っていった。

「咲ちゃんも、どうせ誰も好きな人もいないんでしょ。だったら、一緒に入会しない?だって、誰かにである可能性すらないのなら、こうしておいたほうがいいわ。」

「そうねえ。」

咲は、今そういうことを考えたくないと思ったが、確かに、苑子さんがいなくなったら、また奥多摩に連れ戻されそうな気がして、こういう風に、死後を設定しておくのも必要なことかなと思った。でも、今、そういうことは、考えたくなかった。

「ねえ、どう?何かやってみない?誰かに偏見の目で見られたら、自分の処理を自分で決めているって、言い返せばいいのよ。あ、これは連鎖講じゃないから、安心して。会員を紹介すればどうのとかそういうわけじゃないから。ただ、現代の日本社会における、最も合理的なシステムだと思ったから、紹介しただけのことよ。」

祐子さんはそういうことを言うが、咲はどうもそういう気にはなれなかった。確かに、自分も家族の墓に入れてもらえるかどうかは疑問だが、今、そういうことを決めておかなくてもいいような気がする。

「ねえ、どう?咲ちゃん。あたしたちも、最先端のやり方で逝かない?」

と、祐子さんは言うのだが、咲はその気になれない。

「そうねえ。」

とりあえず、そういうことを言っておく。

「ちょっと、考えさせて。」

と、とりあえずそういってみた。

「まあ、返事はせかさないわ。これはまだ時間のあることだから。でも、一番合理的なシステムであることは間違いないわよ。これから先、あたしたちのことを、愛してくれる人なんて、現れることもないでしょうしね。それなら、生きることに早くけりを入れておいたほうがいいわ。」

と、祐子さんは言っているけど、もう新しい会員を獲得したいことが見え見えの顔をしていた。お金が入るのか、入らないのかはわからないが、とにかく会員を紹介すると、祐子さんが何か得をすることは、間違いない。そんなシステム、本当に宗教といえるのだろうか。宗教というのは、会員獲得のためにあるわけではないのではないか、と咲は思うのだった。

「じゃあ、答えが出たら、ここに電話して。もっと詳しい資料を持ってくるわ。期限は指定しないわよ。咲ちゃんが、ゆっくり、考えて決定したらそれでいいから。」

と、祐子さんは、咲に電話番号を書いた紙を渡した。咲は、あ、ありがとうとだけ言って、それを受けとった。


とりあえず、祐子さんとはそれで別れたが、とんでもないものに誘われてしまったと咲は思う。こんなこと、年寄りになってから考えればいいと思っていた。それなのに、今から自分の死後処理をしているするなんて、なんだかまるで、管理社会にいるような気分だ。とぼとぼ歩きながら帰ると、スマートフォンがなっていた。思わずさっきの、祐子さんが何か言い忘れたことを言いに電話をよこしたのか、と思ったが、電話番号はジャックさんだった。急いで応答のボタンをタップして、

「はい。浜島ですが。」

と、応答する。

「ああ、浜島さんですか。ちょっとお願いがあるんですがね。」

ジャックさんの声は、落ち着いていた。

「あの、今度展示会に絵を出したいので、ちょっと、顔を描かせてもらえないでしょうか。」

つまり、モデルになってくれということだ。なんでこんな私を?と思う。もっと綺麗な、モナ・リザ見たな女性は、日本にはいっぱいいるはずなのに?

「まあ、私なんかがモデルになっちゃっていいのかしら?」

と、咲は言ってみた。

「いいんですよ。身近な女性と言ったら、浜島さんだけなので。」

と、ジャックさんが言っている。今日は変なお願いの多い日だなあと思いながら、

「わかりました、引き受けます。」

と咲は言った。

「ありがとうございます。謝礼はちゃんと払いますから、明日お昼過ぎくらいに、うちへ来ていただけないでしょうか?」

ジャックさんの話に、咲はわかりましたと言った。まったく、こんな変な顔をした女性をモデルに絵を描くなんて、ジャックさんも変な人ね、と思いながら電話を切った。


翌日。咲はバスに乗って、ジャックさんの家に行った。インターフォンを押して中に入ると、武史君が、咲おばさん来てくれてありがとう、と出迎えた。ジャックさんに促されて、庭へ出て、木の下の椅子に座る。ジャックさんは、真剣になって咲の顔を描き始めた。できるだけ、笑顔でお願いします、と言われても、長時間笑顔を保持することは、ちょっと難しい作業でもあった。

「はい、できました。ありがとうございます。後で、謝礼をお支払いします。」

と、ジャックさんは、デッサン用の鉛筆を下した。咲はやっと動ける、と言って、ふうとため息をつき、椅子から立ち上がる。

「お礼に、夕食でも召し上がって下さいな。」

と、ジャックさんが言って、咲を食堂へ案内した。先ほど昼食を食べたばかりだと思われたが、もう時計が五回なるほど、時間はたってしまったのであった。今更、バスに乗って帰ったら、どうせ外食で済ませてしまうだろうな、と思ったので、咲はお言葉に甘えることにした。

「さあどうぞ。」

咲の目の前に、おいしそうな手作りのサンドイッチが置かれた。ジャックさんが、コーヒーを入れていると、武史君が、ちょこんと椅子に座って、耳を貸してくれという。なんだと思って咲が、武史君のほうへ体を傾けると、

「パパはおばさんのこと好きみたいだよ。」

というので、びっくりしてしまった。

「えっ!何を言っているの!」

と思わず素っ頓狂な声を出してしまう。それを聞いてジャックさんが、

「武史、そんなこと勝手にいうもんじゃない!」

というが、その顔は、酒を飲んだ時よりも真っ赤だった。

「だってそうじゃないか。パパがいつも、咲おばさんをモデルに絵を描きたいって、真っ赤な顔して、そういってるから、僕が代わりに言ったんじゃないかよ。」

武史君、なんだか大人みたいな顔をしている。

「もう、そういうことは、子供がいうセリフではないよ。」

と、ジャックさんは言っているが、欧米人らしく、感情をしまっておくことが苦手なのだ。真っ赤になった顔を一生懸命拭いているジャックさんに、咲は何か親近感を持ってしまった。

「でも、おばさんでいいの?」

と、武史君に聞いてみる。武史君も武史君で、変に言葉を濁したりすることもなく、

「うん、おばさんがいい!おばさんが、ママだったらいい!」

というのである。

「なんで?武史君は、ママがいるはずでしょう?」

と聞いてみると、武史君はいやそうな顔をして、

「だって、僕たちのこと、いやだって言って、ほかの人のところに行っちゃったもん。そんな人、好きになれない。咲おばさんのほうがずっといい。」

というのだった。そのいやそうな顔が、事実であることを物語っていた。でも、45を過ぎたおばさんが、こんな人と家庭を持ってもいいのだろうか?咲は返答に迷ってしまった。

「でも、こんなおばさんだから、武史君のママには、、、。」

確かに、小学校一年生の子供を持つ人は、自分よりもっと若い人に決まっている。四捨五入して、50になってしまうおばさんに、そんなことはできるのだろうか。

「僕たちのこと捨ててしまう人より、よほどいいと思うんだけどな!」

ジャックさんが、それ以上言うなといったため、武史君はそれ以上言わなかったが、でも、これはもしかしたら、武史君を通してジャックさんのプロポーズか、と咲は思った。ジャックさんの顔がそれを示していた。

「すみません、武史ったら、失礼なこと言って、、、。」

と、ジャックさんは、申し訳なさそうな顔をする。咲はいいのよ、とだけ言って、サンドイッチにかぶりついた。

そのあとは、何をしゃべったかなんて忘れてしまった。ただ、武史君の無邪気な表情と、ジャックさんが、照れ笑いしているのだけは覚えている。

さて、そろそろ帰ろうか、と咲が言うと、ジャックさんは謝礼を持ってくるからと言って、立ち上がった。

武史君がこっそりと、パパからおばさんに渡したいものがあるんだよ。という。数分後、ジャックさんが謝礼金を入れた袋を持ってきたが、確かに、謝礼金にしては、袋は変な形をしていた。咲は、どうもすみませんと言って、それを受け取り、家に帰った。

家に帰ると、はあとため息が出た。とりあえず、カバンを開けて、謝礼金の入った茶封筒を取り出す。ちゃんと謝礼金として三万円が入っていたが、紺色の別珍の小さな箱も出てきた。それを開けてみると、銀製の指輪が入っていた。はめてみようかなと思って、薬指にはめてみたけれど、サイズがちょっと小さくて、はまらなかった。でも、武史君のあの言葉を思い出して、咲はジャックさんの思いに嘘はないと確信した。

と、同時に、例の入会申込書が目に入った。それを書こうか書くまいか、さんざん迷っていた咲であったが、この指輪をもらったことに、咲はこの会には入らないことを決めた。あたしは、今、逝くことを考えるべきじゃない。それよりも前向きに生きなきゃ。咲はそういうことを誓ったのであった。

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Memento Mori 増田朋美 @masubuchi4996

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