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「ん。ほれ。要望の金貨だよ。受け取れ」
ユキは不機嫌そうに、収納袋から取り出した3枚の
「わ、わっ!?ユキ様!この金貨をぽんと投げないでください!!」
その金貨を何とか受け止めると、かつてないほどに慌てたティルレッサが語気を強める。
「ん。軽く要望しておいて、何言う」
「私じゃないでしょう!?」
3枚の黒金貨を布で丁寧に包み込むと、次に頑丈そうな金庫を用意する。その中に布で包まれた金貨を仕舞い、しっかりと鍵が掛かったことを確認。その表面に、内容物について簡単に記入した専用の紙を貼り、転送用の魔道具の中へと置いた。
ここまで厳重な保管が普通だ。ユキのように、他の硬貨と同じ場所に乱雑に放り込むことなんてしない。それほどの価値を持つ硬貨なのだ。
世間一般で知られている硬貨は全部で7つ。下から鉄貨、半銅貨、銅貨、半銀貨、銀貨、半金貨、金貨となっている。しかし、それより上の硬貨も存在している。ただしその額が非常に高いため、一般市民には伝えられていないだけだ。
金貨100枚分の価値を持つ
今回、ユキが支払った黒金貨3枚。金貨に直すと30000枚分。単位を直すと300億マロ。
ファナが知れば卒倒するかフリーズする金額だ。白金貨と黒金貨の存在を知らないで良かった、とティルレッサはほっとする。
「はぁ······それにしても、総長は思い切った判断をしましたね」
「ん。ボクを金蔓としか考えてないんだろ、アイツ。使わないから良いけどさ」
ムスッとした態度になり、杖で床を叩くユキ。それをファナが宥めようとするも効果は無かった。
「あはは···まぁ、お昼頃にやってくるそうですし、その間は客室で寛いでいてください」
久々に機嫌がいいと思えば悪くなったユキ。このままでは誰か負傷者が出てしまう、とティルレッサは隔離を試みる。
「ん。それがいい。さ、ファナ君行こう」
「あ、はいっ!」
ほっと胸を撫で下ろしたティルレッサは、ユキとファナをギルドにある客室へと案内した。その後、仕事を理由にそそくさと退出する。ユキとは1年近い付き合いとなるが、機嫌の悪いユキの相手はしたくない。ファナならばどうにかできるだろう、とティルレッサは丸投げした。
「ん······お茶も出さずに行ったな」
気の利かない受付嬢に、ユキは苛立ちを込めながら呟いた。
「お茶を飲みますか?僕が淹れますよ」
「ん?そう。じゃ、適当に頼む。あとお菓子···は、無いよね?」
「いえ、手作りので良ければ······」
ファナは机の上にカップとスプーン、ティポットなどを出していき、最後にお皿の上に焼いておいたクッキーを盛り付けた。お湯は《
昔は自分の趣向ではなく、メンバーの好みに合わせていた。しかし、ユキからは適当に、気遣いは要らない、と言われている。そこで、勇気をだしてこのお茶を選んだ。
「ん······早いねぇ」
「そうですか?」
用意から何までが異次元な程の速度で済んでいく。ユキは理解できるが、普通の者なら理解出来ないであろう。やはり、と確信しながら、ファナが出してくれたクッキーを1口齧る。
「んっま!······うまっ······これ、ファナ君の手作りなんだよね?」
「はいっ!フィアちゃん達に好評だったので、沢山焼いておきましたっ!」
「ん。これ凄く美味しいよ。売ってても不思議じゃない。むしろ毎日買うね」
饒舌になりながらパクパクとクッキーを口に放り込んでいく。甘味には目がないユキが言うのだから、相当美味しいクッキーなのであろう。
「あ、ありがとうございます···」
「ん〜〜······っ!?······なにこれ······このお茶美味しい······」
乾いた喉にお茶を流せば、ユキに新たな衝撃が走る。
これは、完成されたお茶だ。
クッキーを食べていたことで、口は水分を欲していた。その要求を満たす為だけのお茶。ユキはその程度の印象であった。あくまで
しかしファナの出したお茶は、お茶が完全なる主役。クッキーはその引き立て役に過ぎず、主役が華麗に踊る為の伴奏であった。
甘い口の中で広がる、お茶が持つ独特の苦味、香り、そして甘み。全てが上手く構成され、口の中で1つになった。
完璧なるティータイム。ユキはここ何百年のうち一番の至福を味わっていた。
「喜んでいただけて何よりですっ!昔は出すことが出来なかったので···」
「ん···勿体ない···勿体ないねぇ···そんなの···いや、でも!これはボクだけが堪能していると思えば悪くないな···ファナ君!ボク命令だ!このお茶を他の誰かに出すことを禁ずる!いいね!?」
ぐいとファナの顔に近づいて、いつにも増して強めな声で発言する。
「ひゃ、ひゃいっ···!」
「ん·········ふぅ、おかわり」
ユキの顔が至近距離となり、間の抜けた返事となる。頬は赤らみ、耳まで赤く染めてしまう。そんなファナに気付かないふりをしたユキは、素知らぬ顔でカップを傾ける。
空いたカップにファナはお茶を注ぎ、少なくなったお皿に更なるお菓子を用意した。そのお菓子達をユキはお茶と共に楽しんだ。
以前は感じなかった、奉仕の喜びをファナも感じていた。この人になら身を捧げてもいい。そう強く思うようになっていた。
ティータイムを楽しむ令嬢と仕えるメイドの構造になっているが、それを視姦する
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