幸運値9999999は最強のチートステータス!? 勇者パーティーを追放された僕ですが、復讐なんかしなくてもシアワセになっちゃいます!
5-4 オーキー教会を護れ!取り立てを撤回させる驚きの秘策とは――?
5-4 オーキー教会を護れ!取り立てを撤回させる驚きの秘策とは――?
翌朝。
オーキー教会さん。
広い庭。
「ねーねー、みんなでスコップ持って何するのー?」
「おすなあそびー? たからさがしー?」
「ああ。宝探しだ! 思いっきり掘っていいぞ!」
「「「わーい!!」」」
僕とミライさん、お師匠さんと子どもさん達は、朝早くから土堀の道具を手に庭に出ていた。賑やかにはしゃぐ子どもさん達とら対照的に、お師匠さんは少しばかり不安そうな顔をする。
「……これで見つかればよいが……」
「絶対に見つかりますよ、師匠! ベル君がそう言っているんですから!」
「ミライ……そちは本当に、あの少年にゾッコンなんじゃなあ」
「その通りです!」
はっきり言われると照れるよミライさん。
僕達が探そうとしているもの。それは、グシャードさんの祖先さんが遺したとされている遺産だ。
法王庁さんは、この遺産を探す費用を惜しんで、教会さんを引き払おうとしたのだから。遺産が見つかれば、教会さんを手放す理由は無くなるのだ。
『じゃが遺産の話など、グシャードの口から出任せに決まっておるじゃろう……?』
はじめは、そう言って呆れたお師匠さん。
だけど僕はこの教会さんに着いたとき、庭の地面の下からとてもいい『気の流れ』を感じたのだ。つまり、とても価値のあるものが埋まっているのは間違いない。
「それが結びつくとしたら、グシャードさんの家系の遺産だと思うんです」
「しかしひとつ見つけたところで、他にも遺産が埋まっているかもしれないと言われたら……?」
「ひとつ見つけたら、法王庁さんを説得するんです。『残りも僕達で探すことができるから、教会さんを引き渡す必要はない』って」
「ああ、言われてみればそうだな!」
法王庁さんだって、本当は教会さんを手放したくないのだ。しかし地下の調査費用は払いたくない。
僕達に調査をするだけの力があり、勝手にやってくれるというのなら、教会さんの引き渡しを撤回する理由にはなる。
「――それじゃあみなさん、穴掘り宝探し作戦、開始ですっ!」
「「「おお??っ!!」」」
ザクっ!! ザクっ!! ザクっ!! ザクっ!!
流石ミライさん! やっぱりすごい!
力いっぱい地面を掘り起こして、あっという間にお風呂くらいの穴が空いた。
「「きゃっきゃっ」」
ザクっ!! ザクっ!! ザクっ!! ザクっ!!
子どもさん達もめいめいの道具で、柔らかい場所の土を5センチくらい掘り返してくれている。
僕も負けてられない!
ザクっ!! ザクっ!! ザクっ!! ザクっ!!
何度も土を掘り、木桶くらいの穴が空いた。
「ベル君の強運なら、きっと遺産とやらもすぐに見つかるな!」
「はいっ!」
「ひょっとして今日中には掘り出されるんじゃないのか?」
「あ、それは多分無理です……」
「そ、そうか……」
このペースだと、強運が発動しても二週間くらいはかかるだろう。わりとギリギリだ。
「「きゃっきゃっ」」
子どもさん達も飽きてしまったのか、砂山を作って遊び始めた。
本来、地面の下の調査というのは、土属性の得意な魔導師さんが数人がかりで行うものだ。素人の僕達ではどうしても時間がかかってしまう。
「……まあ、こういうのはアレだ。地道なアレが大事だから……」
「………………ええいまどろっこしいのう!!」
ダッ!!
お師匠さんが空高く飛び上がった。
な、なにをするつもりだろう……?
「喝ァッ!!!!」
「「!!?」」
ギュルルンッ!!! ズボボボボボボボボボボ!!!
お師匠さんの全身が回転し、地面を掘り進んでいく。まるでドリルモグラだ。
「わすご?い!!」
「はやい! 地面に穴あいてる?!」
「「きゃっきゃっ」」
「し、師匠!! 遺産を壊しちゃ駄目ですからね?!?」
お師匠さんが地中深くを移動している音が聞こえる。これなら、僕の幸運込みでなんとかなるかも――!!
「き、教会が崩れたりしないだろうな…………??」
「そういう悪い予感はしないので、大丈夫だと思いますよ」
「そうか…………ん? なんだ、この音と振動は――?」
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
地の底から鳴り響くような音と揺れ。
穴に落ちても危ないので、ミライさんと一緒に子どもさん達を下がらせる。
――まさに、その次の瞬間だった!
ドパァアアアアアアアアアアンッ!!!
ブシャアアアアアアアアアアア!!!
「「「うわあ????っ!!?」」」
地面から、湯気立った水柱が勢いよく噴き上がったのだ!!
――――
――
1ヶ月後。
オーキー教会さん。
「ぐーしゃぐしゃぐしゃぐしゃ! いい加減に立ち退きの準備は済んだであるか、老いぼれシスター殿!」
「ぐひっぐひっ」
「ぐふっぐふつ」
ひと月前と全く同じ台詞を吐きながら、グシャードさん達三人が現れた。疲れた顔をしたお師匠さんが、彼らを出迎える。
「なんじゃまったく……いま忙しいんじゃから後にしてくれんか?」
しっしっと小蝿でも追い払うような仕草に、グシャードさんは青筋を立てる。
「ぐ、なにが忙しい!? シスターなんぞ手を合わせてお空にお祈りしているだけの楽な仕事だろう!?」
「ああ……教会を取り壊す準備じゃよ」
「…………ほ? ……ぐほほほほ……」
お師匠さんの言葉を聞いたグシャードさんは一瞬目をまんまるにしたが、すぐに唇を歪めてよだれを垂らし、笑い始める。
「ぐ?しゃしゃしゃしゃしゃ!! ついに観念したというわけか! やった! 勝った!! ざまみろ!!」
「ぐひっぐひっぐひっ!!」
「ぐへっぐへっぐへっ!!」
腹を抱えて笑い転げるグシャードさんに、お師匠さんは更に言葉を続ける。
「うむ、面倒なことじゃ。老朽化してひび割れておったし、少々手狭になってきたからの。もう少し立派に建て直すようにと法王様から言われてしもうたのじゃ」
「…………ぐほ…………?」
キョトンと首を傾げる、グシャードさん達三人。なにを言われたのか分からないのだろう、頭の上にクエスチョンマークが見える。
「ぐひっぐひっぐひっ!!」
「ぐへっぐへっぐへっ!!」
横のお二人さんは話の流れが分かっていないのか、まだ笑い声を続けている。
「あ、そういえば法王様からそち達に預かり物じゃ。ほれ」
ピンっと羊皮紙を指で弾いて飛ばすお師匠さん。グシャードさんがそれを開く。
そこに書かれた文言と金色の印鑑を見たグシャードさんは、叫び声をあげた。
「教会引き渡しの撤回契約書――!? ば、馬鹿な!?何故こんなことが起きるのだ!?」
「そちの目で確かめるがよかろう?」
庭を指差すお師匠さん。
庭には湯気が立ち、長蛇の列ができていた。
グシャードさん達はお師匠さんを押し除け、庭に入る。そして、彼らにとっては信じがたい光景を目の当たりにした。
「お――温泉、だと――!?」
教会さんの庭には、立派な温泉が沸いていた。
そう、遺産を探しているときに、お師匠さんが掘り当てた温泉だ。
「しかもただの温泉ではないぞ? どんな怪我も病気もたちどころに治し、健康な者は10分浸かる毎にレベルがひとつ上昇する、SSSS+ランクの奇跡の泉じゃ」
偶然に偶然が重なり、恐ろしい速度で噂が伝わった。
そしてその結果、国中の有力貴族さん達がこぞって訪れ、大金を寄付してくれたのだ。法王さんから申し付けられていた1000万ゴールドの寄付は、最初の一週間で集まってしまった。
「グシャード、そちの祖先は本当に愚か者よのう? これほど素晴らしい水脈を手放すなど、ワシには考えられん」
「ぐ、ぐぐぐ……」
「あ、地下の遺産の調査なら、上級土魔導師を雇って確認させたぞ。なにも出なかったそうじゃがの、ほれ調査証明書じゃ」
「ぐぐぐひぃいいいいいいっ!!!」
崩れ落ち、口惜しそうに何度も地面を叩くグシャードさん。ちなみにお師匠さんは本当に忙しいので、彼を放置して仕事に戻っていく。
この場の勝利者と敗北者は、誰が見ても明らかだった。
――――
ー
夜、温泉。
「あったかい!」
「「きゃっきゃっ」」
来訪者さんの居なくなった温泉で、僕達は勝利の余韻とお湯に浸っていた。
……温泉が沸いた初日の事を思い出す。
一番最初に温泉に入るのは功労者の僕であるべきだと、お師匠さんが半ば強引に湯に浸からせてくれた。
ありがたいと思ったのも束の間、お師匠さんとミライさんと子どもさん達が同じ湯に入ってきたときは流石に焦った。
……もう慣れたけどね。ミライさんのお師匠さんの無茶苦茶にも、子ども扱いにも、裸の付き合いにも……。
そんな事を考えていると、ミライさんが僕の隣に腰掛けた。
「本当にいいお湯ですね、ミライさん」
「……ああ、そうだな。……グシャードにもギャフンと言わせられたし……はあ……」
……どうしたんだろう?
ミライさんはあまり浮かない顔で、溜息をついていた。
「どうかしたんですか、ミライさん……? のぼせちゃったとか……?」
「……いや、その、なんだ……」
ミライさんは口元までお湯の中に沈む。なんかだか小さい子が、いじけているみたいに見えた。
「グシャードがこの教会に目をつけたのは、私のせいだというのに……ベル君がいなければ、此処を守る事は出来なかった……それが不甲斐なくてな……」
「……そんなこと……」
「騎士どころか私は……ただの疫病神だな……」
ミライさんはすっかり肩を落としてしまった。
口元で泡をぶくぶくさせている。
かわいいけど……でも、やっぱりミライさんは自信満々の明るいミライさんでいて欲しい!
僕はミライさんの肩を抱く。
「大丈夫ですミライさんっ! 今は、ちょっと運が悪いだけですよ!」
「……なに言ってるんだ。今までずっと悪かったし、きっとこの先も……」
「そんなことはさせませんっ! 僕が、絶対にミライさんのことを幸せにしますから!」
「え、ええっ!? べ、ベル君、その言い方はっ……!」
何故か赤くなるミライさん。
その様子を見て、お師匠さんがにやりと呟いた。
「かっかっか! プロポーズじゃな!?」
「「ちがいますっ!!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます