少しの八重歯
『結人、お待たせ。』
相変わらずのオレンジがかった金髪。襟足だけは伸びていて(ウルフカットと言うおしゃれらしい)白いタンクトップにダボっとしたデニムにサンダル。いつまでも焼けなさそうな豆腐のような白くてきめ細かい肌。棒付きの丸いキャンディを舐めながら琥珀がやって来た。
何故あの格好がこんなにも似合うのか。
まるで琥珀の為だけに存在するようなファッションではないか。
今日は一緒に海に行く約束をしている。
あれからまだ数カ月だが一緒にいるようになりさらに気づいたことがたくさんあった。
まず一緒に歩いていると琥珀はとにかく目立つ。女の人が、特にお姉さん層の方達が隠す素振りもなく熱い視線を送っている。声をかけられることだってある。僕は最初戸惑ったものの、今ではすっかり慣れてしまった。
琥珀はそういう時決まって首を少し傾げて申し訳なさそうに、でも微笑みながらやんわり相手を傷つけないように断る。ほとんどの人は有無を言わさぬその圧倒的な雰囲気に去って行く。
いつだったか聞いたんだ。
『すごい美人なお姉さんとかなんで断るの?一回ご飯行くくらいだったら飯代浮いていいと思うけど。しかも美味しいご飯食べるなら結人と一緒がいいし。』彼は悪戯に八重歯を見せながら笑ってそう言い放った。
その時に、ますますこいつは罪な奴だ。全く非の打ち所が無くて僕は会うたび彼に堕ちていくんだ。
52hzの鯨 @suga0110
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