『なんてね。そうやって簡単に他人と人生入れ替えられたら苦労しないのにね。これからは結人も自分の家みたいにくつろいでよ。』急におちゃらけたように八重歯を見せながら人懐っこい笑顔でそう言ってくるから思わず安心して気づかぬふりをしたんだ、琥珀が抱えていた闇に。

 

それからは少し時間は過ぎて夏が来た。

ニュースでは連日の記録的な猛暑についてアナウンサーが熱心に解説している。

 

やけに頭に響くセミの鳴き声。肌にじりじり染みるいつもより大きく感じる太陽。首筋に流れる汗。子供たちが公園で水遊びをしてはしゃぐ笑い声。浴衣を着て祭りに行くのであろう恋人たち。その全てから夏を感じる。

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