初めての
それから少し話して分かったことがある。
琥珀は僕と同い年で最近引っ越してきて、昼は定時制の高校に通って夜にバイトしていること。あまり深く聞くのもどうかと思ったけど話を聞く限り一人暮らしみたいだ。
僕とは何もかも違う。ただただ羨ましい。そう思った。
『俺、友達いないんだ。……もし結人が良ければ友達になってくれない?』
不安げな表情で首を傾げながら聞いてくるから思わず被せるように勿論だと強く早く何回も首を縦に振っていた。
琥珀は少し驚いたように、だけどすぐに嬉しそうな顔してありがとうって笑いながら恥ずかしそうに首をかいた。
あぁ、僕は一体どうしたんだ。
一挙一動に心が突き動かされてとんでもなく愛おしく感じてしまう。
『ねぇ、二人でこのまま一つの傘に入って話すのもいいけど、結人びしょ濡れだし……俺の家来る?』
思考が止まりかけた。まだ会って二回目なのにもう家に行ってもいいのか?いやいやただの友達だし男同士。意識し過ぎておかしいのは俺だけだ。
少しだけ歩くけどいいかな?そう聞いてくる琥珀に意識が引き戻された。
『あっ、うん。お邪魔していいの?』
遠慮がちにそう聞くと少しワクワクした表情の彼が『もちろん。俺、初めての友達だからもうちょっと一緒にいたいみたい。』なんて言うから勘弁してほしい。この短時間で僕はもうキャパオーバーになりそうなくらいだ。
それから琥珀の家に向かう十五分くらい特にこれといった言葉は交わさなかったが、二人で一つの傘を差しているから少し歩くたびに肩が触れるか触れないかの距離でその度に琥珀から香るのだろう、甘い癖になりそうな、人工的な香りではなく咲く花のようにまるで自然にそこから醸し出されてるような匂いにクラクラして、いつもなら感じる雨の臭いも素肌にまとまりつくシャツの不快感も感じなかった。
このまま家に着かなくてもいいのに。
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