余韻
結局その後、ろくに目も見れず言葉も出ずに急いで店に置いてきた傘を取り、彼に半ば無理やり渡して走って家に帰った。
体はすっかり冷え切ってお腹も減っていたが何もする気になれず今日の一瞬のあの出来事をひたすら思い返していた。
せめて名前くらい聞いておけばよかった。いや、よく行くコンビニで初めて会ったんだ。そもそもこの辺りに住んでるのかすら定かではない。一瞬でも見ていたら忘れられるはずない。それほどの衝撃だった。
それから二週間、本格的な梅雨が始まり雨が降り続く毎日で僕は放課後から夜遅くまで時間が許す限りあのコンビニの前でまた会う事だけを願ってひたすら待っていた。傘は差していたのだが、ここに来る途中におばあさんが傘を持たずに小走りしていたから傘をつい差し出してしまった。だから今日はびしょ濡れで待っている。だけどそんなの気にならない、彼に会えれば僕はそれでいい。
...もう永遠に会えないのかもしれない。目の前の水溜りを眺めながらふとそんなこと思った。会える確証なんてどこにも無いのに僕は何でこんなに必死に心待ちにしているんだろうか。
でももう一度どうしても会いたいんだ。
一目惚れの最上級の言葉があったら教えてほしい。
僕には雷が落ちたとしか思えないから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます