第35話女神の使徒
《大賢者》レイチェル=ライザールへの復讐中、突如現われた白髪の少年ダークス。
“女神の使徒”と名乗り攻撃をしかけてきた。
「ベルフェ、大丈夫か⁉ ダークス……キサマぁあ!」
仲間である《
「おっ、怖いね、ライン。そんな顔しないでよ」
素早い動きで、ダークスは後方に退避。挑発するような口調で、悪びれてくる。人の神経を逆なでする奴だ。
「い、いけません、ライン様。ヤツは“普通”ではありません」
倒れながらも、ベルフェが引き留めてくる。“女神の使徒”ダークスは今までの相手とは、別次元の恐ろしさがあると。
「ああ、そうだな。心配するな、ボクは冷静だ」
ベルフェの必死の呼びかけに、ボクは冷静さを取り戻す。
ベルフェの傷を確認。かなりダメージを受けているが、今のところ死には至らない。だが今は回復に専念しているため、しばらくは戦力として頼れない。
だからボクは目の前の敵に、集中することが先決とする。
(ダークスが使うのは、勇者魔法でも魔族の魔法でもない、別の力だな。いったい、なんだ、あの力は?)
離れたところで薄笑いするダークスを、注意深く観察する。
先ほどのダークスの動きは、尋常ではない速度だった。だが注意すべきは、そんな些細なことではない。
(どうしてレイチェル=ライザールの肉体は復活しない? どうしてベルフェの十二層の防御障壁が発動しなかった?)
その二点の不可解なことこそ、最大限に注意するべきこと。何かしらの力をダークスは発動しているのだ。
だが今のところ情報が少なすぎる。相手の力の正体が掴めない。
「あっはっはっは……悩みごとは終わったかな、ライン? それなら、またこっちから攻めるよ?」
まるで子どもと遊ぶように、ダークスは余裕を見せている。また手刀での突撃の構えをとる。
「それには及ばない。いくぞ……【
能力を見破るまでは、相手の攻撃を受けるのは危険。
ボクは即座に攻撃魔法を発動。
漆黒の鋭い槍をダークスに向けて放つ。
虚を突かれて、相手は防御魔法を発動できていない。確実にダメージを与えられる。
――――シュワン
だが漆黒の槍はダークスには届かなった。奇妙な音と共に、直前で消滅してしまったのだ。
「なっ……⁉」
「あっはっはっは……もしかして今の攻撃魔法のつもり? 面白ね。うーんと、こうかな? 【
「なんだと⁉」
ボクは思わず声を発してしまう。何故ならダークスはボクの魔法を模写してきたのだ。
漆黒の鋭い槍が、無防備なボクに襲いかかる。
「くっ……《
【
ボクは即座に特別な魔法障壁を発動。
ズッ、ゴォ――――ン!
直後、目の前で漆黒の槍が爆裂。
なんとか紙一重のタイミングで、防御が間に合った。
「おお、さすがラインだね! 防御も上手いね!」
まるで子どもを褒めるように、ダークスは上から目線で称賛してきた。
防御されたのも関わらず、一切の動揺はない。むしろ今のでボクの力を測っていたようだ。
(くっ……先ほどの奴の防御の仕方、アレはなんだ⁉ しかも【
一方でボクは少なからず動揺していた。相手の力が予想以上で、底が読めないのだ。
特に問題なのは【
ダークスは何の術や能力を、発動した素振りはない。今度は注意深く観察していたから間違いはない。
【
いったい、どういう原理なのだ、コイツの力は⁉
「考え事は終わりかな、ライン? それじゃ次は多めにいくよ。【
「なっ……」
更に驚いたことが起きる。
通常の何倍も魔力を使う【
「さて、次はちゃんと生き残るかな、ライン?」
こうして謎の力を持つ“女神の使徒”ダークスによって、ボクは窮地に追いやられるのであった。
◇
◇
――――あとがき――――
◇
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《タイトル》
『無能な家族に追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で、辺境で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて、本家を超える国力に急成長。あとチート魔道具で軍事力も半端ない』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897610658
《あらすじ》
貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。
しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。
これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。
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