第24話 5日目 夕と夜 決着までの悲壮
――午後6時半――
応接室に4人は集まった。
「随分…減ったね」
織花がボソッと言った。始めは12人いた人間が今はもう4人。あんなに賑やかだったのが嘘みたいに今は静かになった。
「あたし達が全員死なないと終わらないのかな?結局殺されるのかな?」
沙耶がテーブルに向かいながら言った。
「勝敗が決まれば解放されるよきっと」
勝敗――人狼がまだ2人いるとしたら、すでにここでゲームは終わるはずだった。
しかし、ゲームが終わらないという事は、人狼は今まで死んでいった人達の中にいる。残りは1人――。
「……はぁ、ご飯作るね。こんな状況でも食べとかないとね」
「俺も何か手伝うよ」
七瀬はそう言ったが、
「男のする事じゃないって言ったでしょ?あたし料理するの好きだから、ゆっくり座ってて」
そう言うと沙耶はそそくさと調理場へと行ってしまった。織花と美里も後から続いていく。
七瀬は椅子に腰掛けると天井を仰いだ。何か考える訳でもない、ただただぼーっと眺めているだけだ。
しばらくして、3人が料理を手に戻ってきた。あれだけ賑やかだった食卓も、今ではすっかり静まり返っている。ただカチャカチャと食器の音がしているだけだった。
「あたしは、後悔してないよ」
突然沙耶が口を開いた。
「え?」
「あたしは、ここに来たこと後悔してない。いや最初は後悔してたんだけど、なんて言うか……自分が失ってたもの取り戻せたって言うか」
3人は静かに沙耶の話を聞いていた。
「あたしこんなだから上手く説明はできないんだけど、この現実はともかく、自分がまだこんな気持ちになれるなんて思ってもみなかったし」
「私も後悔してないです。最初は同じように後悔してましたし、なんでこんな目にって思いました」
全員が織花に視線を集める。
「でも、それでも私は沢山の人に出会えて、色んな話をして。素敵な人にも出会えました」
織花は椅子から立ち上がり皆を見た。
「例えここで終わるのだとしても、悔いは…正直残りますしやっぱりまだ生きたいですけど、来なければ良かったなんて思いたくないです」
「私は、やっぱり後悔してるなーやりたい事だって沢山あるし。そりゃここで出会った人たちはみんななんだかんだいい人だったし楽しかった。でもやっぱり死にたくないもの。来なければ良かったって私は今でも思ってる」
美里は静かに目を閉じ思いにふけった。
「魅夜さんはどうですか?」
「俺?俺は……後悔してないって言ったらウソになるかな。後悔はしてるけど反省はしてないってやつ?」
「んふっ反省はしなさいよ、それ反省はしてるけど後悔はしてないってやつの間違いでしょ?」
「え、そうなの??」
「んふふっ魅夜さんそういうとこ少しおバカさんですよねー」
「あはははっほんと、なんかひとつピントずれてんのよね」
と3人は失笑した。
「でも、そんな七瀬さんのおかけでここまでこれたって感じはあるもんなー。もしいなかったら絶対最初から最後までくらーーくなってたもんね」
と美里が右手で涙をぬぐいながら言った。
「そうですね!魅夜さん、お礼を言わせて?」
「そんな、俺は何も大したことしてないよ」
「そんな事ない。アナタがいたから、皆救われてる。私だって……ホントに、ありがとう!」
織花は目に涙を浮かべながら満面のになった。
「願わくば、生きて出たいけどね!」
と沙耶が言うと、
「そうですね!こうなったら誰が生きてても恨みっこなしってことで!」
と織花が答えた。
「じゃあもし私が七瀬さんと生きて出ていったら、七瀬さんは私が貰ってくからね?」
「だっダメです!それとこれとは話が違います!!」
「そうよ!そんなことしたら末代まで祟ってやるから!」
と織花と沙耶が、すごい剣幕でまくしたてた。そんな二人を見て美里はまた爆笑したのだった。
――午後9時――
織花は七瀬の部屋に訪れていた。七瀬は椅子に座り、織花はベッドに腰掛けている。
「さっきああは言ったけど、やっぱり怖いんです」
「だと思うよ、俺だって怖いんだからね」
「さっき、沙耶さんも本音は怖いって言ってました」
「うん、沙耶さんは強がりしてると思うよ。夜の世界で生きてきて、周りはみんな敵だらけ。そんな中で生きていくには、弱みを見せる訳にはいかないと思うんだ」
「沙耶さんの事、わかっちゃうんですね」
織花は七瀬から視線をはずし、ぷぅっとむくれた。
「分からないよ、ただの俺の想像と偏見」
「私のことはどうですか?」
織花は改めて七瀬に向き直る。
「んー。意外と芯が強い!誰からも愛されみんなに元気をわけてくれる。アイドル一筋で恋愛より仕事優先。一生懸命。頭も良くて気遣いが出来る、かな?」
「いっぱい言ってくれたけど50点!」
「えー!!たったそんだけ!?」
「もう少し勉強してくれるとこっちも助かるんだけどなー」
「????」
「もういいです。それより、今日はお願いがあって」
「お願い??」
「うん。もし、2人で勝って生きて出る事が出来たら――」
「出来たら??」
「それは、勝ってからのお楽しみで☆」
と言ってニッと笑った。
「分かった、じゃあ楽しみにしとく」
織花は七瀬の目の前まで行くと顔を近づけ、
「拒絶は許さないけどいい??」
と言った。
「なんか怖いけど……分かった」
「ふふっ言質とったからね!」
と言って右手の人差し指を縦にして、七瀬の口に触れるくらいの距離まで持ってきた。
「じゃあ戻るね!」
織花はそう言うとたたたたっと走って出ていった。
運命の時は刻一刻と近づいている。4人はそれぞれの思惑を胸に宿し、その時を待っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます