第13話 3日目 昼 トライアングル
ゲームの時間がやってきた。みんな静かに席につく。また同じことの繰り返しなのだろうと思っていたが、事態は動いた。
「まず始めに言っておく。ワシは必ず生き残る。文字通り命をかけてな」
全員が固唾を飲んだ。
美里「では一応聞いておきますね。CO、ありますか?」
「一応言っとこうかな」
と言ったのは順也だった。
順也「俺はイタコです。昨日能力を使いました。田中さんは市民で、何の能力もありませんでした」
舞「それ本当!?」
順也「あぁ。もしかしたら、本当は占い師なんじゃないかと考えて思ったんだけど、あてがはずれてしまった」
唯「なるほどですね」
順也「でも市民だったから、俺はもうただの市民になった」
良夫「それが本当ならね」
美里「じゃあ対抗は、ありますか?」
しかし誰一人対抗するものはなく、順也は【真イタコ】から【市民】へと変わったと、考えてよさそうだった。
美里「他にCOしたい人はいますか?」
「じゃあCOします!少しでも進展した方が良いよね?」
と言い出したのは沙耶だった。
舞「沙耶さんは?」
沙耶「あたしは、占い師です」
「「対抗します!」」
と間髪入れずに対抗が入った。それも2人。対抗として出てきたのは――。
美里「占い師が2人になる事は想定していたけど、まさか3人なんて」
舞「どういう事?」
美里「人狼が2人の場合、基本的に占い師をCOするのは【真占い師】と、【人狼】もしくは【狂人】のどちらか」
順也「今回の場合、真占い師と人狼と狂人がCOしたと言うことか」
美里「多分。とにかく、自称占い師の3人は2回占っているはずだから、結果を聞いてみましょう?」
沙耶「じゃあ最初にCOしたあたしから。1度目は魅夜さん。2回目は佐藤さんで、2人とも白だったよ」
沙耶は自信たっぷりに言った。
続いては対抗した2人。その2人とは――。
「次は私。1度目は佐藤さん。2回目は村田さん。2人とも白」
そう言ったのはポニーテールが可愛い唯であった。
「最後は私です。1人目は荒木さん。2人目は美里さんです。2人とも白でした」
そう言ったのは織花。
平一「なんと……」
順也「まだ黒は出ていなかったか」
舞「でもなんで?織花ちゃんと唯ちゃんは対抗したから分かるけど、沙耶ちゃんはどうしてCOしたの?」
沙耶「少し迷ってはいたんだけど、田村さんもCOしたし、美里さんも2回は占った方が良いって言ってて、少しでも情報になるならって」
美里「そう、でもこれは大きな情報かもね」
舞「まとめるとこんな感じね!」
相沢沙耶 → 七瀬魅夜 白
佐藤良夫 白
緑川 唯 → 佐藤良夫 白
田村順也 白
向井織花 → 荒木浩司 白
石橋美里 白
七瀬「これは色々進みますね」
美里「そうね、まず順番に……田村さんからいきましょう」
と言って進行してくれる。
美里「イタコの力を使って彩賀ちゃんの役職になった――市民になったんだから市民判定を主張した唯さんの占いは正しい可能性は大きい。そしてそれは村田さんが言ってることと矛盾もないから村田さんの事も信用出来るのかな」
舞「良かったぁ」
美里「次に沙耶ちゃんの言ったことね。七瀬さんと佐藤さんに白。佐藤さんの白は唯さんも出しているから、2人ともが偽物でない限り佐藤さんは市民側だと言える。確率は高そうね。七瀬さんは……一応まだグレーってところね」
七瀬「ですよねぇ」
美里「次に織花ちゃん。荒木くんと私に白を出してる」
順也「荒木くんは人狼から襲われているから、市民側なのは確定だよね」
美里「そう。だから織花ちゃんにも矛盾はない。私も一応グレーね」
順也「少しは進みましたね」
美里「それともう1つ」
魅夜「とても、重要な事実ですね」
舞「騎士が生きてるってことですね!」
美里「そう。荒木くんが騎士の可能性もあったけど、これでその可能性はなくなった。これはかなり大きい」
沙耶「占い師を守れるものね!」
良夫「でも、だからって騎士は名乗り出ない方が良いよね?」
舞「そうよね、1番に狙われちゃうもん」
順也「話を進めましょう。ここまでで名前が上がってない人は良くも悪くも本田さんと大塚さんですね」
平一「ようやくワシもCOする時が来たと言う訳だな」
「「「え!?」」」
平一「ワシはな、【恋人】なんだよ」
(来た!このタイミングか!!恋人をCOするなら今が1番だろう。何故かというと、一気に人狼を追い込める可能性があるから)
沙耶「で?相手は誰なの?」
七瀬「待ってください、俺もCOします。俺が恋人です」
唯「本田さんと七瀬さんが恋人だったんだ」
沙耶「魅夜さんは一応白が出てるからぁ……」
舞「本田さんも白??」
本田は黙ったままじっとしている。平一は何を考えているのか――。それはもちろん決まっている。
順也「これだと大変なことになりますね」
織花「どういう事ですか?」
七瀬「つまり、全部をまとめるとこうなるんだ」
村田順也 → 白
七瀬魅夜 → 白?
佐藤良夫 → 白
石橋美里 → 白?
荒木浩司 → 白
本田平一 → 白?
鈴木栄作 → 白
田中彩賀 → 白
相沢沙耶 → △
緑川 唯 → △
向井織花 → △
大塚 舞 → △
良夫「よく分からないな」
七瀬「つまり、白が本当だとすると、占い師を騙る人狼が2人いるとは思えないから自称占い師の中には人狼が1人と――」
視線が一気に舞に集まる。
舞「えッ私!?違う!私じゃないッ」
舞は髪を振り乱し否定した。
平一「そういう事だ」
良夫「じゃあ投票は決まりですね」
舞「違うッ順也さんっ私じゃない!」
順也「……大塚さん」
舞はその場に崩れ落ちた。
そして七瀬は、ある人からの視線を感じていた。それは疑惑の目。
七瀬「ちょっと待ってください」
その言葉にみなが目を向ける。
七瀬「結論を出すのは早いですよ」
舞「……七瀬さん……」
舞はぐしゃぐしゃになった顔で七瀬を見た。
沙耶「どういう事?舞さんは人狼じゃないっていうの?」
七瀬「俺がCOした時のこと、覚えてますか?」
順也「何かあったかな?」
七瀬「お教えしましょう。俺は”俺が恋人です”と言ったんです」
1人、ビクッとした人物がいた。
良夫「だから、本田さんと七瀬くんが恋人なんだろ?」
順也「そうか、そういう事か」
沙耶「なになに?わかんない」
舞「……そう、なのね」
泣き止んだ舞も理解したようだ。
沙耶「もうちゃんと説明してよッ」
順也「七瀬さんは”俺が恋人です”と言ったんだ。つまり――」
【本田平一】と【俺が】恋人です
と言う意味ではなく、
【自分が本物の恋人】
と言う意味だったんだ。
沙耶「なるほど!」
唯「つまり、本田さんと七瀬さんは恋人同士じゃないって事ね」
舞「じゃあさ。もし七瀬さんが本物の恋人だとしたら本田さんは?」
唯「ひょっとして人狼??」
良夫「というのが濃厚ですね」
視線が集まる中、平一はニヤリと笑った。
平一「残念だが、皆は思い違いをしている」
美里「え?」
平一「ワシだって一言もこいつと恋人だとは言っていない」
沙耶「そう言われればそうね」
順也「お互いに”相方”を言ってない訳か」
美里「じゃあその相方って?」
順也「せーの、で言ってもらいましょうか?」
舞「そうしましょう」
美里「じゃあ、せーのー!」
「荒木だ」「荒木さんです」
一瞬の沈黙。そして――
順也「これはまた、難しくなりましたね」
美里「せめて別だったら」
良夫「でも恋人だったらもっと早めに言っておけばよかったんじゃないの?」
七瀬「荒木さんはずっと【市民】だと言ってたから何か考えがあるのかと」
平一「ワシも荒木に任せていたからな」
沙耶「んーどっちが人狼なの?」
平一「悪いな七瀬くん。人狼としてはまぁまぁの策だったが君の負けだ」
七瀬「どういう事です?」
平一「ワシは分かったよ。七瀬くんと相沢の嬢ちゃんの2人が人狼だとな」
沙耶「ッ!?」
七瀬「……」
順也「なるほど、占い師から白が出ている七瀬さんが恋人になれば、相沢さんの占い師という事にも信憑性が出てくる。しかも荒木さんと恋人同士だといえばリスクも少ない」
美里「人狼同士の、コンビネーションて事ね」
(そう来たか。だったら俺もカードを切ろう。使える手駒は多い方が良い)
七瀬「本田さん、残念ですが失敗しましたね」
平一「失敗だと?」
七瀬「人狼が恋人を騙っても何のメリットも無いですよ」
平一「何ッ!?」
七瀬「騙るなら占い師を騙らないと。あなたの策は失敗です」
平一「ワシが失敗しただとッ!?死んだ荒木と恋人を騙れば――、ッ!?」
七瀬「本田さん、こんな簡単な揺さぶりにのっちゃダメですよ。まだ俺は大駒切ってないんですから」
平一「違うぞ、ワシは人狼じゃないッ!」
良夫「どうやら1人目の人狼を見つけたみたいですね」
良夫がニヤリと笑った。
舞「て事は、七瀬さんは本物ね!」
平一「ワシの話を聞け。ワシが言おうとしたのは、死んだ荒木と恋人を騙れば、ウソだとバレる事無く市民側だと思われるんだろうとお前は思ったんだろうが、ワシには勝てないぞと言いたかったんだ」
平一はなおも続ける。
平一「だが途中で気づいたんだよ。お前は人狼ではなく、”狂人”なんだと言うことにな」
唯「え?どういう事?」
平一「簡単な事だよ。こうやって混乱させ、市民側の人間を確実にあぶり出し、処刑させる為だ」
良夫「そうか、本物の後にCOして本物を人狼にしたてる。そしてその人物は処刑され、自分が狂人なんだと人狼に解ってもらえればそれ以外の人間が喰われていく」
順也「完璧ですね」
(まだまだ。王手はまだ続けれる)
七瀬「もし俺が狂人だとしたら。いや、人狼だったとしても、やはり騙るなら占い師です。何故なら恋人を騙るにはかなりのリスクが伴い、戦略そのものが破綻しているからですよ」
織花「どういう事?」
七瀬「今回はたまたま、死んでいる人を相方だと2人して言いましたが、もし本物の相方が生きていたら?その人が名乗り出てきたら?そんなリスクを犯してまでCOしますか?答えはNOです」
みなが黙って考え込んだ。
唯「どっちの言い分も……」
舞「分かるけど……」
(一気に畳み掛けるぞ。最後の大駒だ)
七瀬「もう1つ。COした時何故直ぐにもう1人の名前を言わなかったんですか?隠しておく意味もないのに」
平一「それはお前も一緒だろう?」
七瀬「それがそうでもないんですよ。あなたの相方としてもう1人が出てきたら、本物の俺にはそうじゃない事が分かる。一気に全滅させられるチャンスが巡ってくるからですよ」
順也「なるほど」
沙耶「七瀬さんには白判定が一応出ているから、それを信じるなら対抗している2人は人狼の可能性大だもんね」
七瀬「そうです。本田さん、あなたは対抗を恐れていたからですか?対抗がいるかいないかで返答を変えるつもりだった。対抗がいた場合は荒木を。いなかったらもう1人の人狼を相方とする為にッ!!」
平一「……う……ぐッ」
七瀬「……本田さん、これで詰みです」
順也「……どうやら決まりの様ですね」
平一「待て!ワシが返答を変えるつもりだった?そんなもの、ただの推測だろう?」
七瀬「まだ悪あがきするんですか?」
平一「悪あがきか……当然だ。ワシは人狼ではないし死ぬつもりもない」
美里「何か弁解があるの?」
平一「と言うよりはそいつが狂人だとしたら、白判定が出てもおかしくないんじゃないのか?」
美里「あぁ」
舞「そっか狂人だとしたら対抗で出てきてもおかしくないし」
七瀬「さっきも言いましたが、狂人だとしても恋人は騙りません」
平一「賭けに出たんだろう?上手くハマったようだがワシには勝てんぞ」
七瀬「わかりました良いでしょう。じゃあ自称占い師が3人いるのは何故でしょう?」
舞「え?どういう事?」
順也「確かにおかしいことになるな」
美里「そういえばそうね」
七瀬「もし俺が狂人だとしたら、占い師3人のうち1人は確実に真占い師」
良夫「当たり前のことだろ」
七瀬「では残り2人は?1人は人狼だと思います。じゃあ残りは?残りも人狼ですか?」
舞「確かに変よね」
良夫「占い師が何人もいるのはおかしいから、下手したら人狼が2人とも全滅だ」
七瀬「そんなリスクを人狼が犯すでしょうか?否。3人のうち1人は人狼。そしてもう1人が狂人だと考えるのが自然」
唯「確かにその方がしっくりくるね」
七瀬「そして残りの1人が恋人を騙ってるならば、それは仮で白判定が出ている俺よりも本田さん。何も出ていないあなたの方が確率は高い、あなたしか有り得ない!」
平一「いーや、お前に白を出したのが人狼だとすれば説明はつく」
良夫「そうだね、そうすれば七瀬くんが恋人を騙っても不自然にはならないし、本物の方が偽物っぽくなるね」
織花「でももし本物の相方が生きていたら?やっぱりそんなリスク犯してまでCOするとは思えません」
平一「結果論さ。実際に相方は死んでしまっているし、こいつはリスクを承知でCOした」
美里「まぁ事実だけでみたらそうね」
(まずいな、もう俺には手駒がない)
七瀬は焦っていた。あれで勝負はつくと思っていたから。だが七瀬も沙耶の出した白判定が未確定事実なところは不安要素だった。そこを突っ込まれると途端に七瀬の理論は覆される可能性があるからだ。そしてまさにそれは現実のものとなった。
織花「そろそろ時間になりますね」
順也「難しいところで……」
沙耶「七瀬さんが人狼じゃないってことを証明出来ればいんだよね?実はあたし人狼の目星ついてるんだぁ」
「「えっ!?」」
その言葉に皆は驚愕した。
沙耶「でもまぁそれには、もう1回占ってみないとほんとにそうかどうかわかんないんだけどね」
美里「もしそれで人狼を見つけたら、沙耶ちゃんの真占い師は濃厚になるかも」
順也「だとしたら七瀬さんはほんとに恋人だと言うことに」
良夫「こんな、ぎりぎりで言うなんて!」
平一「みんな騙されるな!そいつは人狼だぞ!」
織花「沙耶さんは人狼ではないと思います!私が言うのもなんですけど、多分沙耶さんが狂人です!」
時間が迫る中それぞれが言いたいことを早口でまくしたてる。
唯「時間が、来ました……」
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