第10話 2日目 夕 カードバトル!

 笑いが一段落すると、良夫が突然話しかけてきた。

 「七瀬くん、カードゲームでもしないかい?」

と取り出したのは、子供から大人まで幅広く親しまれているカードゲームだった。

 七瀬が小さい頃からある息の長いカードゲームだが、まさかここでやる事になるとは思ってもみなかっただろう。

 良夫は相当自信があるらしく、どうみても将棋のリベンジをしようとしているに違いなかった。


 ルールはとっても簡単。プレイヤーは召喚士となりモンスターを召喚。モンスター同士を戦わせプレイヤーのライフをゼロにした方が勝ちだ。


 良夫からカードを見せてもらい、即席でデッキを作る。

 「何が難しそうなことやってるな」

と平一は言っていたが、順也は、

 「ヒマだから俺も参加させてくれよ、懐かしいなーこれ」

とカードを借りデッキをつくった。

 通常一対一のバトルだか、順也も参加したことでバトルロイヤルとなった。


 「ボクから先攻だ!ドロー!」

 「なっ1ターン目はドローなしだろ!?」

 「それは公式戦だろ、これはゲリラバトルだ」

と訳の分からないことを良夫は言って無理やり進行させた。

 「ボクはまずこのモンスターを召喚だ」

 テーブルに置かれたのは戦士の姿をしたモンスター。攻撃力は1500と書いてあった。

 「ボクはこのモンスターの特殊能力を使う。手札からさらにモンスターを召喚だ」

と、別のモンスターもテーブルに置いた。攻撃力1600。そして良夫は「ターンエンド」と言って終わった。


 次は七瀬のターン。手札から戦略わ考える。モンスターが3枚。魔法が1枚と罠が1枚。目に付いたのは攻撃力1800のモンスター。条件なしに召喚できるモンスターとしては1番攻撃力が高い。

 七瀬はそのモンスターをテーブルにおいた。ターンエンド。


 次は順也のターン。

 「うん、こいつが良いかな」

とテーブルに置かれたのは魔法使いの姿をしたモンスターだった。攻撃力は1800。その他のカードも1枚テーブルに裏向きにして置いた。そしてターンエンド。


 「よし、ボクのターンだ。ドロー!」

 ドローとは、デッキから1枚カードを引くことを言う。

 そこから更に高度な戦略が繰り出された。


 「ボクは手札から”合体”の魔法を使って、フィールドのボクのモンスターを合体させ、別のモンスターを召喚する!闇より現れし光の翼!今悪を打ち砕け!合体召喚!ホーリーウイングドラゴン!!」

 アニメかなんかのセリフなのか、召喚口上と言われるセリフを叫び、テーブルに現れたのは翼が光っているドラゴンだった。攻撃力は2900。

 「ボクはこいつで七瀬くんのモンスターを攻撃する!ホーリーストライク!」

 モンスターの攻撃名を叫ばれ、七瀬は攻撃を受けた。2900-1800=900のダメージを受けた。七瀬のライフは8000から7100に。モンスターも倒されてしまった。


 (くっそ良夫め、容赦なしかよっ)

 「俺のターン、ドロー!」

 七瀬は攻撃力500、守備力1600のモンスターを防御体勢にして置いた。これならばモンスターが倒されてもプレイヤーにダメージははいらない。そして、マナゾーンと呼ばれる所へカードを置いた。

 (これがキーカードになるばず。上手くいけばだけど…)


 順也のターン。カードを引く。

 「これでいこうかな」

と出したのは強そうな犬型のモンスター。攻撃力は1500。

 「俺も七瀬さんに攻撃だ」

と1800のモンスターで攻撃してきた。七瀬のモンスターは倒されてしまった。だが防御体勢だったおかげでダメージはない。しかし続いて犬型のモンスターに攻撃され、七瀬のライフは残り6600になってしまった。

 「ちょっとー俺ばっかり狙わないでくださいよー!」

 「悪いね、勝つ為の戦略さ」

 と順也は涼しい顔して言った。

 (俺は2人から狙われている。これを勝ち抜くにはかなり厳しいが…)


 そして良夫のターン。

 「ボクのモンスターには誰も勝てないよ。ホラ、さらにもう一体召喚する」

 また戦士型のモンスターが場に現れた。攻撃力は1000だが、今の七瀬の場にはモンスターがいない。

 「ボクはホーリーウイングドラゴンで七瀬くんにダイレクトアタック!残りライフは3900だ。そしてこっちのモンスターでも攻撃!さらにライフは2900まで下がるよ」

 七瀬がまずいと思ったその瞬間、思いがけないことが起こった。

 「おっここで俺は罠を使うよ。えーっと、プレイヤーがダメージを受けた時、攻撃したプレイヤーのモンスターを全て破壊、と書いてある」

 「なっなんだって!?」

と良夫は立ち上がって驚いた。

 「悪いね、せっかくだから俺もかちたいんだ」

 順也はニヤリと笑った。

 (よしっこれはまだ勝ち目があるかもしれない)


 俺のターン!と七瀬はカードを引いた。

 「俺は手札からこのモンスターを召喚」

 出したのは綺麗な女性が描かれたカード。

 「そして特殊能力発動!デッキからこのモンスターを召喚する」

 と言って出したカードは豹のようなモンスター。

 「俺はこの2体で共鳴させる!」

 戦略がハマりそうで七瀬もノリノリになっていた。

 「巫の衣纏いし歌姫!全てを浄化し舞踊れ!共鳴召喚!女豹舞歌姫 レオパードディーバ!」

 攻撃力3200の超絶モンスターだ。

 「まだだっマナゾーンに置いていたモンスターの特殊能力発動!このモンスターとセメタリーのモンスターをゲームから除外して共鳴召喚する!現れろッ冷たい雷が世界の全てを打ち砕く!紅翼の花よ咲き乱れろ!共鳴召喚ッ紅翼雷龍クリムゾンフェザーサンダードラゴン!」

 攻撃力は3500だ。そこからはもう無双状態。良夫も順也も何とか、立て直そうとしていたものの間に合わず、七瀬の勝利に終わった。



 「七瀬さん大人気ないよ」

 「そうだっ」

と2人に言われたが、

 「よく言いますよ、2人がかりで俺を狙うなんて」

 2人は苦笑いをした。

 「七瀬さんすごーい!」

と声のした方を向くと、いつの間にか女性陣がゲームを見物していた。

 「ねぇあたしにも教えてッ」

 「あっ私もッ」

 沙耶と唯が七瀬の腕を掴み、キャッキャ言いながら入ってきた。

 「カード、好きなの使ってください」

 と良夫は大盤振る舞い。こんなに持ってきていたのか、と七瀬は呆れた。

 ふと七瀬は1人ポツンとしていた織花に気づいた。

 「向井さんもやる?」

 「え?私にも出来るかなー」

 「大丈夫、教えるよ」

といって仲間に入れた。

 「このカード可愛い!」

と女の子達は楽しんでいた。

 「織花ちゃん、ボクが教えてあげるね」

と良夫が寄って来たが、

 「大丈夫です。私知ってますから」

と言って淡々と選んでいた。


 七瀬が横からそっと覗くと、ただただ可愛い絵のカードばかり選んでいた。まぁそれは織花に限ったことではなく、女子はみんなそいだった。

 と思っていたのだが、沙耶だけは何故かガイコツやらのアンデット系ばかりだった。

 「あたし、ホラーとか好きだからー。あのドキドキ感たまんないんだよねー」

と嬉しそうに話していた。

 しばらくすると、


 クイックイッ


と袖を弱く引かれたので振り向くと、

 「このデッキ、どうですか?」

 と小声で聞いてきた。デッキを受け取り一通り見てみると、見事に可愛いカードばかりで構成されていて、コンセプトはめちゃくちゃだった。

 「どのカードを中心にしたいの?」

と聞くと、「これ」と言って指した。

 「じゃあこのカードと…このカードは入れた方が良いかもね。それと、これとこのカードはあまり意味がないかも」

とアドバイスをしてあげたら、

 「……可愛くないです……」

と言っていたが、やるからにはやはり勝ちたいのか頬を膨らませながらもその通りにしてくれた。



 しばらくして全員がデッキを作り終え、対戦が始まった。平一だけは1人その光景を酒を飲みながら眺めていた。


 まずは唯VS織花。先攻は唯。

 「カード引きます。えっと……このカード置いてっと……」

 出したのは猫のモンスター。ターンエンド。


 「次は私の番ですね。カード引いて……この人にします!」

 置いたのは女の子のカード。

 「攻撃します!」

 唯のモンスターは倒され、ダメージを受けた。

 「あー!私の猫ちゃんが……」


 という訳でしばらくカードゲームで盛り上がり、しばし和やかなムードになっていた。




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