第7話 2日目 朝 新たな犠牲者

 ――翌朝7時――


 「……せさーん。起きてー」

 「うーん……あと10分……」

 「そんな子は――」 七瀬の耳に「んー♡」という声が聞こえてくる。

 眠気が徐々に弱まってきた七瀬が目をあけると……目の前には目を閉じたままの沙耶の顔が迫ってきていた。

 「ちょっ相沢さん!んっ!?」

 七瀬が思わず起き上がったせいで、2人の唇は重なってしまった。

 「ぷはっすっすいません!てか何やってんですか!」

 「あははははっ七瀬さんの本命は、あたしだったか」

とけらけら笑った。

 「ちがっこれは事故で…」

とうろたえていると、

 「へー、ふーん、ほー…」

という声がして振り向くと、そこには目のすわった唯と織花がいた。

 「ちょっこれはちがっ…」

 「別に何も聞いてないし…」

 「七瀬さん、沙耶さんみたいな人がタイプなんですね」

 と2人してそっぽ向いて行ってしまった。当の沙耶はそんな事気にもせずケロッとした顔で、

 「さっごはん出来てるから、食べに行くよっ」

と、身を翻し悪びれもなく行ってしまった。



 応接室のテーブルにはもう料理が並んでいた。朝からとても豪華な食事が所狭しと並べられていた。

 (これみんな食べるつもりなのか…?)

 エビフライや唐揚げ、マカロニサラダに卵焼きとやたら多い。中でも唐揚げなんかこんもり。

 「なんかみんな張り切っちゃって。女子力勝負みたいだったよ」

と美里が呆れていた。


 (これ11人で喰える量じゃないよホント)

 「後は、荒木くんだけね。誰か呼んできて」

 「俺が呼んでこよう」

と順也が荒木の元へ向かった。

 (それにしてもこのからあげ、めっちゃ美味そうすぎる!…1個くらい先に食べてもいいよな)

と一口で頬張る。思った通りとても美味しかった。

 「ふふっそれ、私が作ったんですよ」

と言ったのは織花。

 「つまみ食いバレちゃったか」

 「そんなに我慢出来なかったんですか?」

とニヤリと笑う。

 「美味しそうだったから、つい」

 「んふっでもそう言って貰えて良かった…」

そして小さい声で

 「大好きだって言ってたから…喜んで欲しくて…」

 「え?なんて?」

 「いえーっなんでもないです」

 「あーちょっと!つまみ食いなら私のも食べて!」

と唯も寄ってきた。

 「そーよ、七瀬さんの本命はあたしでしょ?」

と沙耶も乱入してくる。

 とその時、どこからか声が聞こえてきた。

 「みんな!すぐにきてくれ!」

 声の主は順也だった。

 七瀬はすぐさま応接室を出る。順也は2階から見下ろし呼んでいた。

 (まさか!)

 「女の子達はここにいてください!」

 そう言い残すと、すぐに階段を駆け上がた。


 順也と合流し、荒木の部屋へ。中に入る時鼻につんとくる異臭がした。そして部屋の奥には鈴木栄作と同じように、変わり果てた荒木の姿があった。

 その姿は栄作と同じようにめちゃくちゃに損傷していて、顔さえも判別ができないほどぐちゃぐちゃになっていた。



 応接室に戻ると、女の子たちが不安そうな顔で待っていた。

 「……荒木くんがやられた……」

 順也が重苦しく言った。

 それを聞いたみんなは、誰も言葉を発せなかった。

 その時、またテレビがついた。


 ――荒木浩司様が無惨な姿で発見されました。人狼はいまだ息を潜めているようです。残り10名となります――


 (暗くなってちゃ犯人の思うつぼだ。思い通りになってたまるか!)

 「あー腹減った!おっからあげだー!もーらいっ」

 と言って1個ひょいっと口に入れた。一同はあっけにとられる。

 「おいっ何のつもりだ!?この状況で、どうかしてるんじゃないのか!!」

 「あっ食べないんですか?じゃあ俺食べちゃいますよ」

 そんな姿をポカーンとして見ている一同。そのうち、

 「全く、七瀬さんには驚かされるわ」

 「ホント、なんか元気もらっちゃう」

 それを合図にぞくぞくと席につく。

 「せっかく作った料理だもんね、少し冷めちゃったけどまだ美味しいはずだから」

 「あ…ボク織花ちゃんの隣に――」

 「織花ちゃんここ失礼!」

と良夫が座ろうとしたのを押しのけ彩賀が席に着いた。

 結局良夫は織花から1番遠い席に着くしか無かった。



 七瀬は勢いよく食べだしたのは良いものの、さすがの量にちょっと引きだした。

 (食べても食べても減ってる気がしない…)

 からあげは織花が、エビフライは唯がそれぞれ張り合った結果、とてつもない量が。

 ハンバーグは彩賀が、ホワイトソースから作ったというパスタは舞作。朝からこの量は絶対ムリだった。大食いタレントでも完食できるかどうか。

 「はー、食った食った。さすがにもうたべれなひー!」

 動くのもしんどい程食べたのは七瀬だけではなかった。腹がパンパンに膨れた男性陣とまだまだ大量に残った料理を見て、

 「これはさすがに…」

 「作りすぎちゃったね…」

と織花と唯は猛反省していた。

  「またお昼にチンしましょ」

と沙耶を先頭に女性陣が片してくれた。

 平一はもう酒を飲む気力もなかった。


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