第6話 ラブ?ラブロイドと百合ってる!
異質ともいえるこの環境。
今までの俺のライフスタイルは一気に様変わりしてしまった。
亜里沙と良美二人の女と同棲をする羽目になってしまった。
しかもだ、亜里沙は裸になることへの恥ずかしさと言うか、女の恥じらいと言うべきだろうか? ……まるでない!
平然の様にその裸体は俺の目に入る位置に必ずいる。
さらなる苦となるもう一人の女。そう良美だ。
此奴はもう、俺の恋人気取りだ。
いや、恋人と言うよりは嫁の様な接し方を、亜里沙に見せつけるようにわざとらしくしかも半ば強制的に俺に同意を求めてくるのだ。
唯一俺の安らぎの場であったマンションの部屋は今や、修羅場に近い状態に感じるほどだ。
ただ、不思議なのは意外とこの二人、仲がいいという事だ。
いがみ合う事はなく、互いに俺にアプローチをかけながら、自分に目を向けさせようと一生懸命であるという事は、女に疎い俺でも感じている。
逆にだ、俺と言う存在がもしなければ、この二人は物凄く仲良しの友達関係……? いやそれ以上の関係というところまで上り詰めるのではないかと思うほどだ。
まぁ、ちょっと俺自身のこの性格が彼女たちのその行為と言うべきだろうか、女として、異性と接することに対して免疫がないというのが一番当てはまる言葉かもしれない。
だから、彼女たちのその行動と俺に対する接し方に俺が拒否反応を示しているのだと思う。
無論、寝床は各自別々……結果的に俺の寝室は亜里沙と良美に取られてしまい、今俺は居間のソファーがベッド変わりだ。良美は自分のベッドをちゃっかり注文して、亜里沙と対面に並べて寝ている。
そのベッドを抜け出し、ソファーにもぐり俺の中に亜里沙は良く裸で忍び込んでくる。
それを、察知する良美。
彼奴もまた俺のソファーに潜り込んでくる。
この狭いところで3人が密着して寝るのは不可能だ。
結局俺は毛布を体に巻いて、床で寝る羽目になるのだ。
ただ不思議なのは朝起きて、女同士抱き合うように寝ているのに、何も彼女たちは違和感を持たないという事だ。
亜里沙がロイドであるからか? 良美は亜里沙の事を同じ同性として認識していないという事なのだろうか?
それに亜里沙も同様に、良美についてはいや、同性でほとんど裸の状態で抱き合う事に亜里沙のAIは……最もあの性格の処理だ。そこまで認知はしていないのかもしれない。
この生活も2週間過ぎたあたりから、俺も何ら違和感を感じなくなっているところが俺自身驚いている。
「ただいまぁ」
今日は大学の研究室に10時間はこもっていた。
見るのはAIのコアプログラムコードの文字の羅列。
すでに俺の思考回路は疲労で回っていない。
「遅かったね成美」
「ああ、今日は疲れたよ」
「そっかぁ、お疲れ様。今お茶淹れるね、それともコーヒーの方がいいかなぁ?」
「お茶でいいよ。それより良美はどうしたんだ?」
「良美ちゃん? ちょっとコンビニまで買い物に行ったよ。夕食は良美ちゃんが帰ったら出来上がるから」
「そうか、コンビニは反対方向だから会わなかったんだ」
「ただいまぁ、ごめんね亜里沙ちゃん」
「あ、良美ちゃんおかえり。ありがとうね」
「ううんいいの、私が買い忘れちゃったのがいけないんだから。あら、成美帰ってたんだぁ」
「帰ってたんだぁは、ないだろう」
「あはは、ごめんね。おかえりなさい」
ついでと言う感じで俺に「おかえり」の言葉を言った後、良美は買ってきたものを亜里沙に手渡すと、亜里沙が
「はい、ご褒美」と言って二人でキスをした。
え! キス? 亜里沙と良美が二人仲良くキスしている。
研究所で飛んでしまっている俺の思考回路は、さらにぶっ飛んだ。
「お、お前ら何してんだ!」
「何ってキスよ。あ、ちょっとは私たちに興味湧いてきた?」
「な、なんの事だ」
「だってさぁ、成美って私にもあんだけ想っていた亜里沙ちゃんにも最近関心薄いんだもん。だから私たちで成美の興味を引こうってことにしたの」
「だからって女同士でキスすることはないだろう」
「あら、キスなんてほんのごあいさつ程度の様なものよ」
「ご挨拶って……」
「えへへへ」良美の顔がニヤついている。
「実はさぁ、私、もうちょっと奥の方まで目覚めちゃったんだぁ」
「奥の方まで……目覚めたって?」
「あのね、亜里沙ちゃんの体、もうロイドじゃないよ。成美あんたいったいどんなことして亜里沙ちゃんの事 造ったんだよ。人間、人間の女性そのものだよ」
「ヤダぁ、良美ちゃんたら……恥ずかしい」
「ちょっと意味が……理解でいないんだけど」
「まったくほんとこういう事になると成美は疎いんだから。私も恥ずかしんだけど、亜里沙ちゃんとその……ラブ、しちゃった!」
ラブしただと? つまりはなんだ亜里沙と良美は……したとという事なのか?
「成美ごめんなさい。私の初めて良美ちゃんに捧げてしまいました」
「これもあんたが悪いんだからね。こんなにも若くて可愛い女二人が同居しているのに指一本触れようともしなかった成美に責任はあるよ……多分。い、言っとくけど女だって性欲あるんだから。もしかしたら男より強いかもしないよ」
ああ、俺の亜里沙のイメージがもろくも崩れていく。
あ、いや、基。このロイドはありさの外見はしているが、性格は俺の求めている亜里沙の性格ではなかった。
ふと、あのメール亜里沙からのメールの事を思い出した。
「まだ未完成だけど……」
まだ未完成と言う部分。そこが気になる。
もしかしたら、このAIは自分が置かれた環境に順応する機能まで備わっているのか?
だとしたら、俺が亜里沙に関心を持たない。いや恋愛感情を表さないことで、その感情意識を良美にシフトさせたのか。
本当に未だ謎の多いAIシステムだ。
それに始めは驚愕したが、今はそのあまりにも当然のように行われる亜里沙の機能に違和感さえも感じなくなってきている。
食べ物を人間の様に食べられるという事だ。
通常今までのロイドは食物を摂取することは出来ない。
その代わりに、充電とエネルギー補充パックを所定の場所に装着する必要がある。
それが亜里沙にはまったくなかったのだ。
人間の様に、食べるという行為で自らその食物から得るエネルギーを体内変換させ生命を維持する。
もはやこの時点でロイドではない。
新たなる人類とでも呼ぶべきだろうか?
しかも恋愛感情までもその意図に感じた傾向に順応する。
まったくもって謎だらけのロイド……。
そんな俺の推測を根本から覆す思いがふと湧き上がった。
多分俺の思考回路がぶっ飛んでいただろう。
もしかしたら……このロイド。亜里沙自身なのではないのか?
亜里沙が生きていて、ロイドのふりをしているのだとしたら……。
駄目だそんなことを考える俺の思考回路は、今日は壊滅的だ。
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