第3話 変わる兆し 1
「いいか、お前の部屋はここ。着替えやら何やらはここで全部するんだ!」
「ええ、なんかめんどくさいんだけど」
め、めんどくさい?
「別にいいじゃないの、それとも私があなたの前で裸になると何かあるの」
「な、何かあるのって……ちとは考えてみろよ! 若い男の前で裸なんか晒したらそ、そのう……た、耐えられないじゃないか」
「あら、私ロイドよ。別に生身の人間じゃないからいいんでしょ。あはぁん? やっぱり成美もちゃんと成長している証拠なんだ。この私の体」
ほ・し・い・の?
「成美もう18禁、解禁だからいいようぉ。あ、私起動したてだから処女なんです。優しくしてね」
真っ裸でそんなこと言われると、もう俺の理性を保つのに限界だ。
だ、ダメだ!
「あん、成美ぃ。どこ行くのぉ?」
「学校! いいかお前は一歩もこの部屋から外に出るんじゃねぇぞ。オーナー命令だ。受理しろ」
「ええ、オーナー命令なの? 受理しなきゃいけないのぉ? いやだって言ったらどうするぅ?」
「縄でお前をそのまま縛ってやる」
「あ、え―――っと成美さん。いきなりそんなハードなこと要求しちゃうんですかぁ? ああ。どっちも捨てがたいなぁ。えへへ、そうだ縛り方検索しておきますね」
「馬鹿か! 俺は行く」
バタン。扉を閉めて外に出た。
「はぁ―、つ、疲れた」
突如送信されてきた亜里沙からのメール。
そして共用サーバーからアクセスした謎のサーバーで俺は1体のロイドを起動させたようだ。
その起動させたロイドが3日後、自力で俺のもとに訪れてくるとは思いもしなかった。
通常
これはロイドの管理責任が全てオーナーに課せられるためだ。
しかし、あのロイドは違っていた。
ピンポンと自らマンションのインターフォンを鳴らし
「初めまして、
セールか? 強引なやり方だなぁ。
「ああ、セールスならお断り」
そのまますぐに追い出そうとしたが、何度もインターホンを鳴らす。
無視! 無視に限る。
だが仕舞にはドアの前で大声で泣かれてしまった。
ちょっと待て! これはやばい。誰かに見られたら……そもそもセキュリティに引っかかるぞ。
仕方なくドアを開けると「ニコッ」と笑う彼女の顔が目に映る。
その笑い顔……。
見覚えのある笑い顔……なつかしさが一気にこみあげる。
まさかそんな! あり得ない……亜里沙。
彼女は亜里沙に良く似ていた。
「よかったぁ、成美にようやく会うことが出来たよ」
「ちょ、ちょっと待て! 一体あんたは?」
「まったく、たった4年で私の事わすれちゃったのぉ?」
「忘れちゃったって……」
「私よ亜里沙」
「ま、まさか……」
「ま、驚くのも無理ないかぁ。それより早く中に入れてよ。このままだと私不法侵入扱いでセキュリティに通報されちゃうよ」
登録者以外の人物がフロアに滞在できる時間は限られている。
とりあえず訳も分からないまま俺は彼女を中に入れた。
「改めまして、
その姿は亜里沙が成長したであろう姿そのものだ。
信じがたい事実。
目の前に死んだはずの亜里沙そっくりのロイドがいる。
でもいったいどこから来たんだ? それにこのロイドは俺をオーナとして接しているように感じる。
「君はいったいどこから来たんだ。それに君のオーナーはいったい誰なんだ」
「オーナーはあなた
やっぱり俺がオーナーで、出所不明のロイド。
このままでは俺が処罰されてしまう。
「私に対するあなたのオーナー権はすでに認可済みです。個体認識番号を照会してください」
端末の行政アプリを開き彼女の手をスキャンさせた。
オーナー
保有許可ナンバー xxxxxxxxxxxx
以下不明略称。
間違いなくオーナーとしての行政登録は俺になっている。
本人の承諾もなしにこのロイドはすでに俺の所有物になっていた。
こんなことがあっていいのか?
しかも詳細事項、メーカーの記載などは何もない。
あの時俺が起動させたロイドという事なのか?
こんな出来過ぎた話があっていいのか。俺は何かの飛んでもない陰謀に巻き込まれてしまったのではないだろうか。
「ほうらね。すべての登録はもう済んで知るんですよ成美」
彼女は、ニコット笑いくるっとその場を軽々しく一回転した。
彼女の背中まで伸びている黒髪がたなびく。
その姿は本当に亜里沙が生き返ってきたような感覚にさせてしまうほどだ。
「はぁ、でもほんと疲れたなぁ」
「疲れた?」
「だってさぁ、5時間も飛行機に乗って来たんだよ。しかもここまで来るのに空港からほんと遠かったし」
「飛行機に乗って来たって、海外から来たというのか」
「多分ね。でも私にはその経路や記憶情報は全くないの。私の意識AIが稼働し始めたのはその飛行機に乗ってからだったみたいだし」
飛行機に乗ってから稼働し始めたAI機能。それに彼女は確かに言った。
『疲れた』と。
ロイドは基本人間の様に疲労を感じないはずだ。
それに代わるものとして、エネルギー供給の自慰的発動を行い自らエネルギーを補給する。
自我自体はあるが、感情としての起伏と言うものはロイドにはまだ人間の様に表には出さないはずだ。
それなのに彼女は長時間の移動に伴うストレスを『疲れた』と言う感情で表現した。
自ら……
第6世代のAI
……
まさか……もう実現さていたのか?
俺たちの夢が……目標が。
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