第582話 完成された究極全力シリーズ
蓮見は高速移動しながら隙を伺うも、絶対零度を側に待機させ槍を持ち浮遊している朱音の隙が全然見当たらないでいた。
蓮見が通った道に残る物と本体から放電し空中を自由に動き回るプラズマは触れる霰を瞬時に溶かし蒸発させている。
そこで蓮見は考える。
もしかしたらこれなら空気を圧縮し熱風にしただけでは破壊が出来なかった朱音の防御を崩せるのではないかと。
「……可能性はあるか」
「あら? 中々攻めて来ないわね」
どう動いても朱音に見られている気がしてならないのはきっと既に朱音が蓮見の動きを把握しているからなのかもしれない。
「当然! この一撃が俺の超ぜんり……あれ?」
途中で言葉が詰まる。
朱音の的にならないように足は動かす。
ふとっ、あることが脳内に浮かんだ蓮見は自問自答する。
する? or しない?
二択。
それ以外に回答はなく、バカはバカなりにシンプルな回答が似合っている。
そんな蓮見が自分にした質問も単純で。
「へへっ」
蓮見の顔から笑みがこぼれ落ちる。
想像してしまったのだ。
勝つための起死回生の一手を。
「なにかきそうね」
蓮見の笑みとは別に自分に向けられた視線に殺意が籠ったと朱音が絶対零度を操り防御姿勢に入り、少し腰を下ろして警戒態勢に入る。
ほんの些細な変化すら見逃さない朱音の裏をかくことなど今の蓮見では難しいだろう。
ならば、と。
「見えたぜ。俺の超全力シリーズが進化した俺なりの完璧な究極全力シリーズの姿が!」
同時。
蓮見が移動速度を限界まであげ朱音のほうに突撃。
それも背後や上空と言った朱音の死角からではなく正面から。
「舐められたものね」
そう――蓮見は正面からの攻撃では絶対に朱音が反応することをわかっていた。
それでも敢えてそうした。
究極全力シリーズを使うために。
原点回帰が生み出す究極の一撃はエリカが作った聖水瓶を媒体に作られる高温の炎
など比べ物にならないほど熱く、限られた水しか蒸発できないほどぬるくもない。
「絶対零度私を護りなさい!」
再び姿を変え朱音を護る分厚い氷の球体は小さい丸い穴を作る。
小さい穴の中から槍の切っ先が蓮見に向けられる。
「スキル『神速のボルグ』!」
武器の一つである剣を装備したプレイヤーが主に使うスキル『一閃』の槍用上位亜種版。目にも止まらない速さで朱音の腕から放たれた一撃は空気を切り裂き一直線に蓮見の脳天目掛けて放たれた。
「信じてたぜ! お母さんなら絶対に反応するってな!」
「……ッ!!」
「忘れたなら教えてあげるぜ! 俺の狙いはこの会場全て! つまりお母さんがどんな防御姿勢を取ろうと瞬間的に全てを破壊する究極の一撃! 後は俺の運とお母さんの運の勝負だぜ! 実力が天と地ほどの差があっても会場を破壊する一撃を受けても無傷で涼しい顔していられるなら別の話だがな!」
「……そんなはったり――」
「――残念ながらハッタリじゃねぇ! 約束したんだ! ミズナさんとルナの前では俺はお母さんが認める男になるって! そんでもって二人が望む道を護るって! だからこんな所で失望されるわけにかいかねぇんだ! なぜなら二人の道が本人の望むものじゃなくなる可能性があるから! だったらある物全部利用してこの世界ごと黙らせるしか俺には活路がないんだ。喰らえこれが進化した究極全力シリーズ『超新星爆発』だあああああああああ!!!」
一発の銃弾のように真っ直ぐ向かって来る槍の先端にぶつけるようにして蓮見が右手を伸ばしプラズマ球体をぶつける。
二つの力が触れる瞬間、眩しい光が闘技場を包み込む。
蓮見の手の中で圧縮され不安定な状態で形を保っていたプラズマは槍の一撃によって力の制御を失い周囲に拡散していく。
白い稲妻のような龍がまるで四方八方に飛んでいく。
それは闘技場の霰を溶かし朱音を護る絶対零度の球体を瞬時に溶かし氷を水蒸気にしていく。
その速度は尋常じゃなく朱音が使ったスキル分の水を蒸発させても尚プラズマは放電を続け雷の如く二人に襲いかかる。
だけど巨大な力は既に蓮見の手から離れ暴走状態。
闘技場観客席を護る結解を軽々超えては上空から観客席にいるプレイヤーにも容赦なく襲いかかるほどに強力なものだった。
防御が遅れれば感電死しかない。
誰もがそう思う原因を作った中心部では別の力も生まれる。
人を襲うのはプラズマだけじゃないということだ。
水が蒸気になることで体積を膨張させ爆発が起き、それも同時に闘技場内にいる全員へと襲い掛かる。
当然全ての中心地にいる蓮見と朱音がこれを全て避けきることは既に不可能。
観客席は結解のおかけで究極全力シリーズの爆発を多少なりとも軽減するが二人がいるのはその内であり爆発のエネルギーが最も集中する場所。
巨大な噴煙が白い稲妻が走る世界から姿を見せ、その存在感を見せつける。
それは全ての悲鳴をかき消し闘技場内のカメラ全てをショートさせ全ての証拠を一瞬で消し去り全ての生命体をこの世から抹消するような勢いだった。
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