第402話 最強夫婦VS優香


「ようやく来ましたか。待ちくたびれましたよ? 挑戦者いえ知性に優れ勇敢な挑戦者」


「それはどうも。それでアンタが今回のイベントのボスかしら?」


「はい。私の名前は優香(ゆうか)。小百合お姉様のセカンドシーズンとお考えください」


「小百合……ってことは噂通りか」


 美紀が注意を引き付けている間にエリカがダンジョンの物陰へと隠れる。

 その間蓮見は何があってもエリカを護れるようにと時間稼ぎを美紀に任せてボス部屋の配置が前回と変わっていないかの確認をする。


「私の眼もまた特別。油断していると突然死なんてことにはなりますよ。それと先に言っておきますが、戦闘開始と同時に貴女達には戦闘報酬対象になりますが、それはあくまでも私を倒せたらのお話しですので勘違いなさらいでくださいね?」


 その言葉に美紀から視線を飛ばされ頷く蓮見。

 これは相手からの挑発。

 優香はなにがあっても蓮見達には負けないという絶対の自信があるのだろう。

 面白い。

 ならばこちらも本気を見せようではないか。


「ふっ、なにを言ってやがる。こっちにも切り札があるんだぜ?」


「切り札?」


「そうだ! こっちには里美という切り札があるんだ! 負けるもの――」


 最後まで言い切ろうとしたその時鋭く刺すような視線を感じた蓮見の口が止まる。


「は?」


「――いや、その」


「く・れ・な・い・く・ん?」


「は、はい」


「これ以上は言わなくてもわかりますよね?」


「と、当然です里美様! 私も全力でサポートします。上手く立ち回れそうだったら私もメインで戦います!」


 単純な強弱の基準で美紀頼りで討伐と考えたがどうやらそれはダメらしいので、こちらも女の子相手に本気は男としてどうかと思うが全力で戦うことにする。

 でも聞いて欲しい。

 普通に考えて小百合クラスの化物と正面から戦えるのって里美、綾香、ルフラン、七瀬、ソフィ、リューク、朱音ぐらいしかいないと思うのは自分だけだろうか。

 いや多くの者がそう思っている、と思う蓮見。

 特にさっき名前をあげた人達は蓮見が知る中でも特にPS(プレイヤースキル)がずば抜けていると個人的に思える人達。そこに自分が入っていこうなどおこがましいと言うべきだろう。だけどご命令とあれば仕方がない。未来(宿題)のために頑張るとしようじゃないか!


「男に二言はないわね?」


「当然!」


 調子が良い蓮見は即答した。


「面白いパーティーですね。では勝負と行きましょう。私の眼は小百合お姉様と同じ死を見通し急所も見通す眼。そして私は進化する! さぁかかって来なさい」


 するとアイテムなしで優香が飛翔しダンジョンの中を自由自在に飛び回り始める。

 蓮見の目から見てそれは速い。

 弓を構え放つ。

 その動作が終わる頃にはもう別の場所にいる。

 蓮見の身体に迷いが生じる。


「ほら、ボケっとしないで! 相手が空を飛ぼうが何をしようが地上からも迎撃が出来る! それに相手は紅と同じ弓使い。動かない的ほど狙いやすいことは百も承知でしょ

!」


 美紀の言葉に目が覚めた蓮見は急いで動き始める。

 動きながら弓を構えるが優香もまた動き回っているため狙いが上手く定まらない。

 矢を放つときにはもう違うところにいる。

 ならばと動きを先読みして矢をそこに放つと今度は優香が飛行コースを変えてくる。

 今まで散々逆だったために蓮見の矢は空を切るばかり。

 それでも優香の注意を引くことはできると確信し攻撃を続ける。


「私の動きを完璧に予測し二段ジャンプを使い先回り……素晴らしいですね」


「それはどうも! 紅の矢は確かに明後日の方向にいってばかり。だけどその矢が通るコースにアンタはいかない。なぜならアンタと同じ眼を紅も持っているから。安易に喰らえばそれが敗北に繋がる。なら後は簡単。そこから小百合ならどうするかを考え予測すればセカンドシーズンであるアンタは必然的に私の前へと来るのよ!」


 着地してはすぐに走り二段ジャンプ。

 そこには高確率で優香がいる。

 そして始まる美紀の槍捌きと攻撃。

 優香が放った矢を空中だろうが地上だろうが最小限の動きだけで躱し続ける美紀は正に鬼。一見小柄で可愛い女の子。だけど一度闘志が付けば鬼神にまでなる。そんな美紀の猛攻を持ってしても優香にはまだ余裕が見られた。


「ならこうしましょう。スキル『覚醒』『虚像の発火』!」


 スキルを使ってきた優香に即座に蓮見が反応する。

 スキルなら途中で不規則な動きをすることはないため優香より狙いやすい。

 後はタイミングさえ合えばなんとかできるからだ。


「里美行け! スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!」


 美紀が蓮見を信じて動いてくれているなら蓮見も美紀を信じて今出来る最大のサポートをする。正直一人ではかなり危なかったと危機感を胸に抱きながらも全力で一射一射丁寧に放っていく。


「やはり同じ眼。相殺してきますか」


 高台に着地し蓮見に狙いを向けて次の攻撃をしようとする優香の背後から美紀が挟撃する。


「よそ見してる暇はないわよ! スキル『アクセル』『連撃の舞』!」


 優香が振り返り後方へと低空飛行で逃げようとするが美紀もすぐにスキルを使い追走からのスキルを使った攻撃に入る。

 再び狙いが美紀に移ったタイミングで蓮見も通常攻撃で美紀を援護する。


「甘いですよ」


 後ろを見ず気配だけで蓮見の攻撃を察した優香が障壁を使い飛んでくる矢をガード。

 そして美紀の連撃を半分ほど受けて再び空中へと飛び、すぐに真下にいる美紀に反撃。


「させねぇ! スキル『猛毒の捌き』!」


 急いで反撃を阻止しようとした蓮見の攻撃に優香が攻撃の手を止め、蓮見に狙いを変えて、


「スキル『虚像の発火』!」


 を使う。さらに連続して。


「スキル『猛毒の捌き』!」


 と蓮見と同じスキルを使い対抗してきた。

 両者の後方に出現した紫色の魔法陣から放たれる三十本の矢はお互いのプレイヤーを狙い飛んでいくも空中で衝突し消えて行く。


「やはり私と同じスキルを持つ方が厄介ですか」


「それはこっちのセリフだ! スキル『水振の陣』『罰と救済』『虚像の発火』名付けて水爆!」


「無駄です。スキル『迷いの霧』!」


 蓮見が発射用意を終わらせ矢を放つ直前優香が目くらましにスキルを使った。

 だけど毒煙があろうとなかろうと蓮見の目は赤と黄色い点である程度までなら相手の場所を捉える事が出来る。


「紅! そのまま攻撃!」


「任せろ!」


「スキル『デスボルグ』!」


 美紀の合図を受け蓮見が水爆を放つと同時に美紀も槍を投擲。

 二方向からの攻撃。

 それも片方は回避不可能な一撃。

 これで少しはダメージを与えられると蓮見が思っていると、美紀が腰の短剣を抜き毒煙の中に突っ込んでいく。


「紅援護! 間違っても私に当てないで!」


「は、はい!」


 急いで次の攻撃のため動き狙いやすいポジションから優香だけを狙って攻撃していく。

 毒煙の中でも美紀は優香の場所が分かるのか忙しく動いている。

 なので敵と味方を間違ないように常にどっちがどっちかを頭の中で追っていく。


「マジかよ。二人共動きが速いし場所入れ替わりすぎ……」


 水爆が空を切り毒煙から少し離れた所で暴発。

 美紀の槍は撃ち落とされた。


「あの毒煙の中美紀の猛攻を躱しながら飛んでくる槍の撃墜と反撃。やっぱりアイツ強いな……えへへっ」


 蓮見の闘争心にもようやく


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