第399話 希望を探して二日目
――イベント攻略二日目。
結局のところ一日目はなにも収穫がなかった蓮見、美紀、エリカの三人は今日もまたゲームにログインして集まっていた。
「結局昨日はNPCを見つける事すらできなかったし、そのヒントすら見つけれなかった。もっと言えば名前すらわからない敵を探すって結構大変」
「同感。結局昨日一日歩いてクタクタになっちゃったもの。それで今日は何処を探すの?」
「ですね。俺もクタクタです」
「ったくもう~だらしない二人ね。それより今日は北にでも行ってみようかなと思っているんだけどどうかな?」
「北で有名な所と言えば精霊の泉と毒の洞窟とか?」
「そう。今日行くのはこの二箇所! ってことで行くわよ~!」
相変わらず限定アイテムと聞いて気合いが入っているのかテンションが高い美紀を先頭に蓮見とエリカがその後ろを付いて行く。
――。
――――。
目的地に到着すると、そこには浅い湖があり、水が綺麗でひざ下半分程の深さ。
周囲を見渡せば見えるのは何処までも続く浅い湖。
その中央付近に見える巨大な噴水。
ただし水は綺麗と言えば綺麗ではあるが薄紫色……。
なんでも巨大な噴水に刺さって抜けなくなった矢があり、その影響で毒の影響を未だに受けているのだとか……。
早速周囲を捜索しようと三人が散開しようとしたとき、噴水から溢れる水の一部が意思を持っているかのように形を形成していき、半透明の人間の形をした精霊が現れた。
「おっ、懐かしい奴が出てきたな」
「そうね。でも今は用がないからスキル『破滅のボルグ』」
興味関心すらみせずに美紀が先制攻撃。
程なくして精霊は天へと帰ることになった。
そもそもゲームを始めたばかりのプレイヤーのために用意されたボスなど強くなった美紀からすれば第三層の雑魚モンスターと同程度でしかない。
これで今度こそ邪魔する者はいない。
「なら三人別れて周囲を探索でいいわね?」
「あ、あぁ……容赦なさすぎだろ……」
「え、えぇ……瞬殺だったわね……」
戸惑う蓮見とエリカを置いて美紀が探索に入り、続くようにして蓮見とエリカがそこから少し離れた場所を探す。
「どう? なにかヒントになりそうなものあった?」
美紀の問いかけに蓮見が答える。
「こっちはなにもなしだな」
続いてエリカも蓮見と同じように。
「こっちもだめー。そっちは?」
「全然だめ」
結果的に頑張って探索したが無駄骨だった。
どこかに隠れている可能性を考えると方法としては悪くないのだろうが、それでも収穫がまったくなしと言うのはどうも精神的にきてしまう。朝一見た提示板でもまだ誰も目撃すらしていないことから時間との勝負になりそうである。
「とりあえずここはダメってことで毒の洞窟にでも行ってみましょう。そこなら隠れ家としてはありえそうだから」
「りょうかーい」
「はーい」
こうして三人は精霊の泉を後にし今度は毒の洞窟へと向かった。
三人がだらだらと話しながら歩いていると周りの木々が枯れている場所に到着した。
地面からは、ぽこぽこと音を立てる沼が幾つかある。
その奥に毒の洞窟はあるため、奥へと進んでいく三人。
すると山がぽっかりと口を開けているように見える入り口が見えてきた。
「あれ?」
「そうよ? ってあれ? 紅ここに来るの初めて?」
「うん」
「なら私よく最初の頃ここに素材取りに来てたから道わかるし案内しましょうか?」
「なら案内はエリカにお願いするわ」
エリカを先頭に中へと入っていく。
蓮見が思っていたよりも天井が高いことから変に暴れなければ頭を打つ心配はなさそうだ。
奥へと進んでいくとスライムや蜘蛛が沢山いたが、今の蓮見達の敵ではない。
なので突撃してきても無視して鏡面の短剣で適当にブスブスと刺しては進んでを繰り返す。
さらに奥へと進めばコウモリもいたが、こちらは蓮見達にビビッて奥の方へと逃げて行った。
「あれ、可笑しいわね」
「どうしたの?」
「前に来た時はこんなに奥まで道がなかった。てかコウモリなんかいなかったはずだけど?」
エリカの疑問に美紀が閃いたように言う。
「もしかして今回のイベントで拡張されているのかも」
「なるほど。ならここから先は里美が先頭がいいわね。もしかしたらこの奥にいるかもしれないし」
「オッケー。紅もそれでいい?」
「…………」
返事がない。
「あれ? 紅は?」
「あ、あそこ」
少し離れた所で鏡面の短剣を刺しては抜いてと遊んでる蓮見の元に美紀とエリカがやってくる。
奥へと進んでいく途中で見つけた紫色の毒花に攻撃すると毒を吐き出す。
のだが、毒が効かないこの男はそれをいいことに遊んでいた。
「これ。面白いなって思って……ん? どうした?」
蓮見の子供っぽい一面に思わずクスッと笑ってしまう美紀とエリカ。
「ほら、先行くよ?」
「紅君可愛いわね」
「……わかった」
さらに奥へと進んでいく。
すると毒沼があったり、常時毒を吐く毒花があったりしたが自動スキルで耐性が完璧じゃない蓮見以外はアイテムを駆使して先へと進んでいく。
そして――ついに辿り着いた最深部。
目の前には蓮見達の背丈と変わらない木の扉があった。
両開きのその扉を力を込めて開ける蓮見。
すると――。
油の切れた嫌な音を発しながら扉が開き、部屋の全貌が明らかになる。
一言で言うならその部屋は書斎だった。
沢山の本が部屋の壁に設置された大きな本棚に敷き詰められていた。
蓮見達はその部屋の中へと入っていく。
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