第389話 ついに天地創造発動!?
やはり美紀。
自分の力に絶対の自信があり、蓮見に次の動きを読ませない一手はとても強力。
視界の片隅で動き出した影。
それもまた美紀と同じく、蓮見の動きを先読みして動いているのだろう。
流石は美紀の上位互換とも呼べる朱音。
そうなるとこちらも誰もが思いつかない戦法を使わないことにはやはり先読みされいずれ詰むことになるのかもしれない。
考えろ。
今の俺に出来る事はなんだ?
一体どうすればいい?
俺は……誰の為に……。
ゲームを始めた?
そんなの決まっている。
だったらその相手の期待に応えてこそ――。
男ってもんだろ。
――ドクン。
高鳴る心臓。
身体を駆け巡る血が教えてくれる。
目の前にいる者達は人を止めても勝てない相手だと。
ならば――。
人を捨て、化物を捨てるしかないだろうと――。
人はお前の事を何と呼んでいる?
「そんなの決まってる! 超絶カッコイイ紅君だ!」
誰もそんな事は言っていない。
が、本人の耳にはいつもそう聞こえていたらしい。
なんとも素晴らしい超訳機能が付いた聴力をお持ちのようで皆が知ったら嫉妬しそうな才をお持ち。そんな才があるからこそ、この男は思い付くのかもしれない。この状態を抜け出し、最初で最後の攻撃チャンスを掴む秘策を。この絶望的な状態の中で己の機転一つで発見するのかもしれない。
「これで終わりです! 紅さん、安らかに眠ってください!」
「貰った! その首! 悪いけど今回は敵同士。なによりその巨体だと私達にとっては大きな的にしかならないとこれを機に学ぶといいわ!」
「……だよな、里美。だから俺はこうする!」
「もう進化はさせない!」
あと一歩でレイピアの先端蓮見の身体を貫き、反対からやってきた美紀が力を入れ振り回した槍が、そして地上から蓮見を狙い通常遠距離攻撃をした朱音の一撃が全て空を切った。
「「「……消えたッ!?」」」
それは、三人だけの言葉じゃない。
ボス部屋にいた化物三体がなんの合図もなしに突如の十人の前から姿を消した。
全員が大きく目を見開きさっきまで空中にいた神災戦隊を探すが、
「里美さん!」
蓮見が消えた事で美紀に攻撃の手が行きかけ、逆に美紀の一撃を間一髪の所で躱した瑠香。だけど強引な回避行動のため態勢を崩す結果となったが、今はそれより気になることがあった。
「わかってる! 今探してる!」
美紀が首から上を左右上下に素早く動かしながら答える。
「お母さん!」
テレポートや瞬間移動と言ったスキルを全く把握していない七瀬が母親に答えを求める。そんなスキルはそもそも存在しない。そんなのは頭ではわかってる。だけど、五感が、本能が、血が、嫌な予感を感じ取る。
「うるさい! ちょっと黙って! それとルナ早く態勢を整えなさい!」
急いで上空で動く影を全て目で追いながら、このままだと一番危険だと思われる瑠香に向かって叫ぶ朱音。
ボス部屋にはそれぞれ葉子とスイレンの疑問の声が響くも両ギルド長から返事が返ってこない。もうそこに答えるだけの余裕がないのだ。二人は知っている。あの男ほど目を離してはいけないことを。その身で神災を喰らった者として身体が全てを覚えているからだ。そして同じく戸惑うソフィとは対照的に全神経を集中させ、神経をボス部屋全体に研ぎ澄まし張っていた綾香が僅かな音を耳で拾った。
――トっ
「うん?」
――タっ
「二か所……?」
――サっ
「ちが――ッ!?」
音が聞こえた箇所に目を向けるとそこにはさっきまで空中にいたはずの男が不敵に微笑み立っていた。
「――いた! 私から見て南東、南西、北方向!」
足音が聞こえた方向を瞬時に目で追った綾香だったが最早一人ではどうにもできないと判断し叫んだ。
気付いた時には囲まれていた。
「へへっ。ヒーローと言えば変身と変身解除! ってことでこれが終わりだ!――」
「――実はここに聖水やら溶けた金属とかがあれば最高にクールでかっこよかったんだが――」
「――こればかりはどうしようもできない。だから未完成ではあるが、行くぜ、これが俺の超全力シリーズ――」
自ら切り札とも呼べる化物状態を解除することで、サクリファイスエスケープを成し遂げた神災者は原点に返りその技をここにいる全員に見せることにした。人間の目という物は小さい物が巨大になるとすぐに目で追うが、その逆は焦点がずれる為中々すぐに対応が難しい。ましてやここから大きくは動かないと思い込んでいる者達にとっては尚。偶然か必然か蓮見はそれを直感だけで無意識のうちに察知し実行した。
そして全員の目が明後日の方向を向いているうちに素早く移動をした。
「マズイ!!! 全員一人でいいから止めて!」
残念ながらその叫びは、もう遅く、その願いは叶わない。
綾香の叫び声が終わる頃には、蓮見は弓ではなく鏡面の短剣を棒状に複製しハリーポッターで出てくる杖みたいな物を持っており、スキル名を口にし終えていた。そして蓮見は叫んだ。
「「「――天地創造の一撃だぁ!!!」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます