第388話 実力差


「……ん? あっ……まぁ、いいや! 俺ならなんとかなる! お前達アレやるぞ!」


 その言葉にブルーとイエロー蓮見の目の色が変わった。


「「よっしゃー! きた! 任せろ!!!」」


 気付けばブルーとイエロー蓮見を追い込まれ神災モードとなっていた。

 それを機に準備運動を終えたトッププレイヤー達が理由は各々違えど神災モードに対抗するため全力へとギアを切り替えて行くも、


「「「スキル『覚醒』!」」」


 神災モードを超えた言うなれば『神災モード2』の扉を開いた三人。

 それはスキルを使った投影による見かけ倒しの力かもしれない。

 だけどその見かけ倒しはただのハッタリなどではない。


「「「スキル『猛毒の捌き』 フルバースト!」」」


 残りの残数三回。

 すなわちここで全部使いきる事を決めた神災戦隊は一人三回の三人。

 つまりは全部で二百七十の猛毒の矢を作り、向かってくる者達の迎撃矢として使用する。紫色の魔法陣から放たれる矢は追尾性能を持っているため、ただ躱すだけでは意味がない。

 今までこの数による暴力により多くの者たちを倒してきた。

 時に多勢無勢を仕掛けてきたもの、時に綾香とソフィ率いる閃光のギルドメンバー、時にルフラン率いるラグナロクメンバー。

 だからこそ今回も通用する。

 そう思っていた。だけど実際はレッドが先ほどまで戦っていた四人を始めあまり障害にすらならないのか矢の雨の中を平然と猛スピードで突き進んでくる。また七瀬に限っては地上を走り早くも蓮見を射程圏内に抑えようとしていた。


「スキル『迷いの霧』!」


 レッド蓮見はすぐに機転を利かせて毒煙の中へと姿を隠す。

 そして連続して使用することで、毒煙の効果範囲を広げブルーとイエロー蓮見も匿う。


「邪魔ね。スキル『爆焔:炎帝の業火』!』


「力を貸してあげる。狙いはわかってるわね? スキル『爆焔:炎帝の業火』」


「当然!」


 蓮見の狙いを見抜いた七瀬。

 それを援護するように杖を持ち朱音が必殺の一撃を放つ。

 赤い髪をなびかせた母娘が放つ一撃は赤い魔法陣を通して得たエネルギーを杖に収縮され、一気に放たれる。その破壊力は絶大で正面から受ければどうなるかは今さら語るまでもない。二つの炎は高エネルギーを内包しボス部屋の天井を貫く。


「流石! スキル『竜巻』!」


「お見事。 スキル『竜巻』」


 そこに便乗して使用者を中心とした竜巻が二つでき、毒煙を炎が空けた穴から逃がしていく、綾香とソフィ。


「うぉ!? 見つかった!?」


 驚く暇もなく、


「逃がさん! スキル『朱雀の陣』!」


 蓮見の視界の先には神々しく燃える炎で出来たかなり大きな鳥――不死鳥がいる。

 羽を動かすたびに熱風が周囲を襲う。そして不死鳥の周りには炎剣を大量に配置されている。これはリュークの必殺技。


「さて、フィナーレとしようか」


 その言葉に葉子とスイレンは最早付いていけないと判断しソッと後退をしてボス部屋の隅へと移動する。


「まだ……全員が本気じゃない……」


「それ以前にこの数、なによりこれだけの人達を一斉に本気にさせる……」


 それは意図したわけじゃない。

 だけど自然と声が重なった。


「「これが【異次元の神災者】……。そして、【異次元の神災者】も当然まだ本気じゃない……?」」


 三分の一の確率ではあるが本体を見破った不死鳥はその一撃を持ってしてレッド蓮見を倒そうと雄たけびを上げ炎剣と共に突撃してくる。


「あれは、回避不能の一撃だった……はず」


「わかってる! 任せろ!」


 ブルー蓮見がその身を盾にして不死鳥の一撃を受け止める。

 炎剣は竜巻の風に巻き上げられ吹き飛ぶ。


「見抜いた! スキル『聖剣エクスカリバー』!」


 魔法陣からエネルギーを受け取るようにして剣に集まった最強の一撃が今【神眼の神災】に向けられる。視界が悪くてもハッキリとわかるぐらいに眩しく神々しく光輝く剣から放たれた究極の一撃。ルフランが見せる究極の一撃にイエロー蓮見が叫ぶ。


「こっちは任せろ! スキル『灼熱の業火』!」


 赤色の魔法陣が出現しイエロー蓮見に力を与える。

 それは『火炎の息』の上位版でMP効率が非常に悪いものの一撃性を秘めた炎の息。

 大きな口で息を吸い込み、吐き出す。

 と、同時に吐き出された息が赤く燃える。


 だが――。


 光の粒子が束になった攻撃はKillヒットができない。


 二つの力が衝突し、爆発音にしか聞こえない衝撃音と一緒に拮抗する。

 だが、徐々に力負けをしていくイエロー蓮見のスキル。


 そこに。


「次は逃がしません! スキル『睡蓮の花』!」


 蓮見の放った猛毒の矢を足場にして力を溜め、それを爆発させるように近づいてくる瑠香。


 更に反対方向からは、嫉妬を爆発させ集中した美紀が近づいてくる。

 スキルを使うことで先を読まれるならと自分の力を信じて飛び込んでくる美紀。

 それがとても恐ろしい。

 どれだけ腕に自信があるのだろうか。

 いや、今さらそんな事を気にしても状況は好転しないと蓮見は死に物狂いで頭を動かす。ここから望む展開にどうやったらもっていけるかと。



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