第三十三章 到来悪夢のイベントを攻略せよ 最大の試練編

第381話 どの方向性で行くか悩む神災戦隊


 特殊限定イベントとして始まったこのイベントも気付けば残り二十分で終わる所まで来ていた。楽しい時間はあっという間だとはよく言うが本当にその通りだと蓮見は思った。


「ふむふむ。工場の中は武士が使っていた武器が幾つか手に入るわけね」


 工場の中から無断拝借したアイテムをアイテムツリーに器用に大きな爪で入れていく。辺り一面工場(破壊不能オブジェクト)しかない。少し遠くに目を向ければ街がある。


「とりあえずお前達もHPとMP回復しておいてくれ」


 まずはHP回復とMP回復をするためポーションをブルーとイエローにも渡す。

 神災モードが解除されるのは名残惜しいがここまでに使ってきたスキル残数から不意打ちの方が恐い蓮見はここは冷静に判断する。

 先ほど聞こえてきたアナウンスからここからはさらに多くのプレイヤーに狙われるだろうと考えたからだ。


 神災戦隊がHPとMPを全回復し最後の戦いに向けて調子を整える。


 蓮見はまだ美紀、朱音、綾香……と他にも多くのトッププレイヤー達が先ほどの爆発を見てここに近づいているとは知らないし気付いていない。そもそも目に見える範囲の敵は全て捕食している。

 なので、次の方針を考える。


「プレイヤーKillをしてもいいが、ここは大人しく逃げて身を隠しておけば上位には入れそう……。つまりエリカさんからのお願いはなにもせずにクリアできるそうだが……どうする?」


 腕を組んで考え込むレッド蓮見――化物。

 正直もう少し暴れたいところではあるが、大抵イベントの最後はいつもガス欠寸前になったりして苦労している気しかしない蓮見は迷っていた。


 このままなにもせずにイベント終わりまで大人しくしているか、最後の最後まで暴れて我が欲求を満たすか。どちらにしろそれなりのリスクはある。まず大人しくしていた場合もしかしたら上位五パーセントから転落する可能性。我が欲求を満たす場合、多くのプレイヤーから狙われ、そこにトッププレイヤーと呼ばれる実力者が乱入して容赦なくボコボコにされて上位五パーセントから転落する可能性。


「結局のところ……どちらの案を選んでも一緒なのか……後はその可能性が高いか低いか……うーん、これは悩むな~」


「もしかしてこの後のこと?」


「そうそう。工場と城は攻略したから」


「なるほど。でもここの工場にはこれ以上用ないし他のは時間経過的にも攻略大変そうだから適当な城の方に行くか、いっその事街で一休みってのもありなんじゃない?」


 その言葉にレッド蓮見が一理あると頷く。

 だけど落ち着いて考えて欲しい。

 この状態の蓮見が街に入っていったらどうなるかを。

 恐らく多くの悲鳴と叫び声が木霊し、平和な街が一瞬で戦場に変わる可能性を。

 そんな所まで気が回らないレッド蓮見は真剣に悩み始める。


「ブルーの言い分はわかった。だけど二十分ゆっくりするのはそれはそれで……ん~なんというか……そんな感じなんだよな~」


 街崩壊。

 化物来襲。

 サーバー負荷許容限界?

 サーバー処理落ち!?

 と言った沢山の悲劇はなんとか回避される方向に舵が切られた。


「たしかに……」


「ならレッドは街、ブルーは工場、俺は城に別れて好き勝手に暴れて分散してプレイヤーKillを稼ぐか? レッドが負けなければそれでマイナスにはならないはずだが」


 と思ったが、イエロー蓮見が最悪の悲劇しか想像できない最早神災案とも呼べる案をレッド蓮見に提案した。特に街でレッド蓮見が暴れたらサーバーは間違いなく処理限界を超えて落ちるだろう。それは俺様全力シリーズバーニング爆発()で証明されている。所詮はイベント専用の能力――性能がそこそこのサーバー。メインサーバーに比べれば性能は格段に落ちる。もしそんなことになれば――。


「ふむ。それはいい案だな」


 世にも恐ろしい提案を前向きに受け入れたレッド蓮見。


 (サーバー負荷臨界点まで)永久HP超高速回復VS(スキル残数が底を尽きるまで)神災大暴れ&超新星爆発を始めとした大爆発連発。

 ――ゲームの世界を超え現実世界での悲鳴が飛び交うだろう。

 そしてサーバーダウンをさせた【異次元の神災者】としてゲーマーの中で今より有名人になれるかもしれない。

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