第377話 三体目の化物は異常者なのかもしれない
「へへっ♪ ついに俺様自身による第二形態お披露目だぜ!」
大きな翼を広げ大空へと飛び立つ蓮見。
それを追う小隊。
しかし神災モードかつ火事場系統のスキルがほぼ最大限に発揮された化物と小隊の動きは殆ど一緒でただ飛行するだけなら距離が縮まらないようになっていた。
「ずっと前から思ってたんだ。実はこうゆう時って悪なら悪に徹した方が結果的に強くなるんじゃないかって」
「広がってあの化物を包囲」
「いんやその必要はない! なぜならここまで来れば鬼ごっこは終わりだからよ」
不敵に微笑み、動く事を自らやめ浮遊する蓮見。
小隊メンバーが素早く散開し蓮見を中心に囲む。
「いや……実はこのスキルを手にしたときからちょっとした好奇心で思っていたんだよ。このまま全員素手でぶん殴って引きちぎってかみ砕いて飲み込めば、それこそがこの姿での最強の戦い方なんじゃないかって」
主人公にあるま……人としてあるまじき発言に敵が一瞬固まる。
ついでに言えば戦場だけでなく観客席にいたメンバーも運営室にいたメンバーも「は、はい?」と一斉に困惑してしまった。彼はもう……人として生きる事を止めたのだろうか。そう思われても可笑しくない発言はまだ続く。
「だってこの鋭い牙なら防具をかみ砕けると思うし、この世界での飲食ができるなら別に俺が食を満たしても問題ないんじゃないかってさ。でも最初はプレイヤーでするとアレだからとりあえずNPCなら問題ないかなって思ってたんだよな……ってことでお前ら食べてみてもいい?」
食べるというのは化物の姿でだろうか?
だとすればもうそれはただの食べるではなく暴食ではないか?
それにこの化物に限っては好奇心が満たされるまでは胃が満たされることはないと推測できる。果たしてこの化物は何十人の命で己の良く満たしてくれようか。そう考えた時にNPC含め多くの者が思った事は超新星爆発並みの被害者で事が足りるのか? という疑問。それは正しい。なぜなら今の蓮見は「にひひっ~にひひっ~」と不気味な笑い声を必死で堪えている。そして蓮見は本当の意味で人の理を捨て化物の道へと大きな一歩を踏み出した。
「ならいただきまーす!」
突如、蓮見が爆ぜるように動いた。
一瞬で小隊メンバーとの距離が詰まる。
目にも止まらぬ速さで突き鋭利な爪の先端で小隊メンバーの一人を捉える。
そのまま大きな口を開けてパクリ。
まるで一口サイズのチョコレートを食べるようにして小隊メンバーの一人が化物となった蓮見の胃の中へと消えていく。
誰も予想していなかった展開にNPCの動きが鈍くなる。
「グォォォォォォ!!!」
さらに電光石火のワンツーによって一人、また一人と蓮見の胃の中へと消えていく。
仲間の仇を取ろうと突撃してきた一人を巨大な尻尾で薙ぎ払い地面へと叩きつける、
「ぐぁぁぁぁ!?」
「なんだ? どうなってる……今の動きは!?」
全く持って予測外な動きに騒ぎを聞きつけ合流を始めたプレイヤー達が呆然と蓮見を見つめる。
蓮見は大きな羽を羽ばたかせて身体をくねくねさせながら次の獲物――小隊メンバーを狙っている。その目は獲物だけを見ており、次の動きへと繋げていく。
「き、貴様ーっ!」
蓮見に見つめられた小隊メンバーが感情に任せて突撃してくる。
だけど蓮見はニヤリと微笑み正面から小隊メンバーを大きな口で飲み込む。
その挙動は迷いなく迅速でとても残酷。
口の中で振るわれた剣は魚の骨が刺さったような感覚だなと思いながら、口をもぐもぐと動かしよく噛んでから飲み込む。
「ん~なんか歯ごたえは魚って感じかな?」
四人食べたところでようやく出てきた感想。
それは味の感想ではなく食材に対する感想だった。
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