第376話 二度あることは三度ある



 ■■■


「なら、行くぜ! はぁぁぁぁ!!!」


 雄たけびをあげ気合いを込めて正射。と同時に動き出す。


「突撃ー!!! 我らの使命を全うしろ!!!」


 小隊の指揮官が叫ぶと、「「「「「おぉーーーー!!!」」」」」とそれに呼応するようにして別の声が木霊し聞こえてきた。


 神災戦隊のリーダーの役目を果たすレッド蓮見と小隊そしてこの武士達を統括していると思われる指揮官の衝突はまさにこの戦いの最後を飾るのに相応しいと言えよう。

 なので、勝っても負けても文句なしの真剣勝負!

 正に将と将の一騎打ち。


 先手を仕掛けるのは蓮見。

 その度胸と勢い任せな部分は相変わらずで、テンションが高い時は幾ら劣勢な状況といえど諦めない強い精神力を発揮し窮地を何度も凌いできた底力がある。


「スキル『連続射撃3』!」


 少しでも命中率をあげるために数で勝負する蓮見。

 狙いは悪くない。


「スキル『かまいたち』!」


 小隊のメンバーがスキルを使ってくる。

 一振りの剣が乱気流を生み飛んでくる矢を呑み込み空へと舞いあげ無力化してきた。


「どうした? その程度か?」


 指揮官の微笑みに舌打ちをして誰かさんが起こした大爆発のせいで隠れる場所もなければ身を護る場所もない大地がひび割れた地を駆け巡りながら蓮見は鏡面の短剣を複製しては素早く矢の形状にして放ち始めた。


「るせぇ! これでも喰らいやがれ!」


指揮官は倒せなくても他の小隊メンバーには青いラインがない。つまり水属性ダメージは通用すると考えたのだ。これは悪魔龍アルティメットの時からの経験則であるが、その考えは間違っていなかったらしく放った矢を小隊メンバーの一人が回避したことで証明される。矢は黒くなった地面に突き刺さるとしゅわ~と水が蒸発したような音と一緒に水蒸気になって消えていった。


「間合いに意識しながら囲め!」


 指揮官の指示に小隊メンバーが動き始める。

 動き続ける蓮見を中心にして円を描くように三百六十度包囲してきた。


「……チッ」


 思わず舌打ち。

 やはり一筋縄ではいなかい、そう思った。


「スキル『連続射撃3』!」


 さらに、一呼吸おいて連続で、


「スキル『連続射撃3』!」


 小隊メンバーとの距離に意識を飛ばしながらも通常の矢で指揮官も攻撃。

 二つの矢を使いわけることで敵に少しずつダメージを与えていくことに成功する蓮見。

 しかし。

 飛び交う矢の間を縫うようにして接近してくる敵に、


「しまった……!?」


「さて、二度目はどうなるかな? スキル『一閃』!」


 しかし敵に与えたダメージ以上を受けてしまう蓮見。

 だけどこんなところで弱音を吐いている暇はない。

 通常攻撃を続けながら周囲に視線を飛ばし、それぞれの場所を確認していく。

 すると、再び小隊が六芒星のスキルを発動しようとしている事に気付いた。


「スカイと言い……何度もえぐいスキル連発してくるのかよ、こいつら……」


 つい、口から漏れた言葉。


「毎度思うが毎回敵が強くなってるよな……」


 率直な感想を口から漏らしながらも蓮見の手は矢を構え放つことを続け、足は動き続ける。

 この状況をどう打開しようかと考える。

 やはり指揮官である男を倒すのが一番だろう。

 だが敵にはまだまだ余力があるように思える。

 だとするなら一気に倒すしかないわけだが、それをするとこの後訪れるガス欠が心配になる。なんせ超新星爆発を受けても少し遠くにある工場だけはぱっと見で傷一つないと思われるからだ。アレを攻略することまで考えると骨がおれそうだ。


「かといってここで負けたらリベンジできるだけの力なんて俺にないし……どうせどこかでつまずくならやるしかないか……」


 小刻みに動き、敵に動きを悟られないようにしながらもどのタイミングで仕掛けるかを考える。


「よそ見する暇はないぞ!」


「……いんや、ある!」


 その言葉通り蓮見は間一髪の所で剣による攻撃を躱し走り抜けていく。


 全体重を乗せた男の一撃は空振りに終わるもすぐに他のメンバーがフォローに来ていたので反撃は止めておく。

 すると、指揮官と残りの小隊メンバーが蓮見へと突撃してきた。


「来た! 今しかない! スキル『幻闘者』!」


 そう思った。

 本日三度目にして三体目の化物。

 ついに目覚めの刻。

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