第370話 観客席と運営室からの注目
観客席。
ついに伝説の化物の正体が明らかになった。
「やっぱりお前だったのか!? 【異次元の神災者】!」
「本当に異次元の存在になってるじゃねぇかぁ!!!!」
「ついに神の代行者の姿に……」
「……いや待て……さっきの歌を思い出してみろ」
「…………あっ、おわった……」
そんな者達にチラッと視線を向けて口角をあげる者がいた。
ようやく訪れた神災は見る者にとっては至福の時間もしくは悪夢のどちらか。
さぁ、今回は何が起きるか!?
そんな期待を胸に抱えて女は口を開く。
「あら、あら。ついに紅君が暴れだしちゃったわね」
エリカの見るモニターの先には化物となった蓮見にビビり早くも逃げ出すプレイヤー達。なにより恐ろしいのは神災戦隊が通った道は豊かな大地が真っ黒な大地となっていること。大木が折られ燃え尽き雄たけびをあげ灰となり朽ち、芝の大地がひび割れめくれ上がりうめき声を出して泣いている。エリカの支援を受け、アイテムの価値観が完全に崩壊している蓮見に合う言葉があるとしたらまさにアイテムとスキルの無駄遣い。その行動が恐怖の二文字を体現する。
「まだ半分も終わってないイベント。だけどこのまま行けば間違いなく紅君と合流するわね。うふふっ」
モニター越しに戦う者達へ警告をするエリカ。
だけど内心は――さぁ、戦え!
常識を逸脱した者を倒せるなら倒して見ろ。
と思っていた。
「え、エリカ?」
「ん?」
「一応聞くけどこれが最恐の力だよな?」
「その質問は愚問。なぜなら――」
――ゴクリ。
と質問した男は息を呑み込んだ。
忘れていた。
アレには【人型人造破壊殲滅兵器】という異名もあったことを。
■■■
観客席が盛り上がっている同時刻――運営室では。
「ついに来たか……この時が」
「あぁ。だけどこのイベントでアイツは思い知るだろう」
「だな。俺達が毎回後手に回る時代はついに終わったのだと。社長もろとも神災を倒し俺達が休暇を手に入れる時代がもう間もなくくるとな、くくくっ」
「ふふっ、あはは……可哀想にね。工場から攻略していればこんなことにはならなったかのに、本当に残念で仕方がないわ」
そんな会話が聞こえてきた。
いつもの五人は運営室で茶菓子を食べてイベントの行方を大型モニターを通して見守っている。
いつもなら慌ててる。
だけど今回は違った。
入念の準備が実を結び、心に余裕を作っていた。
「北の【異次元の神災者】、南の里美、東のルフラン、西の朱音。これが今回東西南北にフィールドを分けた時の代表メンバーって言った所か。にしても奇跡的に上手く別れたくれたな」
「これは予期せぬ好都合ってやつだろう。ちなみに綾香は南東でリュークが北東でミズナが北西」
「工場から攻略したプレイヤー達が今は城へと向かっている」
「だけどその城が密集するエリアへ行くには城から街へと向かうには代表メンバーが通る道を通らなければいけない。当然北は【異次元の神災者】」
「そうね。私達の作り上げた工場長はまさに一騎当千。その武器と防具は火属性スキルを反射する機能付き武器。トッププレイヤーの前ではそんな付け焼き刃はあまり効果がないかもしれない。でも【異次元の神災者】にならどうだ?」
その言葉に一同が大笑いを始めた。
城に配置したトッププレイヤーを真似て作られたスカイ達。
だけど所詮は贋作。
防衛網は常に一つとは限らない。
常に先を読み続けた運営陣は考えた。
蓮見の火力をプレイヤーをも巻き込み根こそぎ短時間で奪ってしまえば倒せると。
故に、徒党を組んだ方が有利なようにイベントを作った。
そして【異次元の神災者】は運営が望む展開で今動き続けている。
工場を守護する武士と工場長に果たしてどう蓮見が立ち向かうのか。
そこに五人の注目が集まりつつあった。
「さぁ、次世代の侍は強いぞ? なんせ集団で近代化されて襲ってくるんだからな」
責任者はポツリと呟いた。
単体で勝てないなら物量作戦。
水爆を始めとするスキルは使用回数が限界に来れば使えなくなる。
なにより、聖水といった火力(爆発力)増強アイテムは使えないルール縛り。
抜け目はない。
後はこの後の結果を見守るだけ。
ついに蓮見が街に戻り、一番城から近い工場へと接近。
それと同時に、責任者がニヤリと悪い笑みを浮かべた。
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