第369話 俺様第二形態ついに発動!?


 ――こうなったら工場までを最速で潰す。


 だから。


 ――そのために、コイツ等でテンション爆上げだーーーーー!


 言い方を変えれば、何かの助長の始まりであり、無計画が作り出す火力激減の助長でもある。相変わらず自分の力が使用制限スキルに大きく依存していることを気にしない蓮見は不敵に微笑む。こんな所でバンバンスキルを使えば間違いなく後半戦ガス欠になるだろう。それを知ってか知らずか蓮見は大きく息を吸いこんで迷いなく言葉を発する。


「横はブルーとイエローに任せた! 行くぜ俺様戦隊!」


 その叫び声と同時に神災戦隊が姿を見せる。

 足場となる矢をレッドから貰ったブルーとイエロー。


「任せろ! スキル『虚像の発火』!」


「余裕だ! スキル『虚像の発火』!」


 落ち着いて対処することで、突撃してくる男と女の攻撃を燃える矢で切り落とさせ光線を強制的に撃ち落とす。

 そして頭のネジが外れた神災戦隊は自ら位置調整を行い巨大な氷の塊へと自爆特攻する。


 ――ドンッ!


 そんな音に多くの者たちが目を疑った。

 氷の塊が爆発し水蒸気を発生させ視界を白くしたためにハッキリとどうなったかはわからない者達は。


「か、勝ち目がないと諦めて……自爆!?」


「ほ、本当に勝ったの? わたしたち……」


「うそ……俺が止めを刺した!?」


 大きく目を見開き驚きに満ちた声で戸惑いだした。

 今まで多くのプレイヤーに狙われた蓮見が自爆したことは一度もなかった。

 だからこそ疑ってしまった。

 本当に倒したのかと……。


 ――。


 ――――。


 水蒸気が晴れ視界が回復すると。

 そこには、


「良し! HP調整完璧! 行くぜ、お前達!」


 自らテクニカルヒットポイントに攻撃が当たるように調整しダメージコントロールした神災戦隊は全員が神災モードになっていた。

 水色のオーラはまるで強者だけが持つ覇気を具現化したように、神災戦隊を強く見せる。


「「「任せろ! スキル『迷いの霧』!」」」


 三人の言葉がシンクロすると毒の霧が上空に発生。

 紫色の煙が相手の視界を奪い毒の効果ダメージでHPゲージを削っていく。

 だけどこれが目的ではない。

 本当の狙いはここからだ。

 毒煙の中で行われる会話。


「イエロー、頼めるか?」


「それとブルーにはこれを渡しておく」


「あぁ、任せろ! 俺様全力シリーズ第二戦闘形態だな?」


「なら俺はこれでイエローの援護だな?」


 その言葉にコクりと頷く蓮見――本体。


「わかった。スキル『幻闘者』!」


「こちらも了解! これだけMPポーションあれば絶対足りると思うからよ!」


 それは蓮見があの日――第四回イベント終わりで手に入れたスキル。

 立地的にも人目にも付く事から中々実践練習をする機会に見舞われず、結果的に中途半端になっていたものである。

 それは美紀を始め、七瀬や瑠香に対抗する手段として手に入れたソレは――。


 イエロー蓮見の身体を眩しい光が包み込む。

 それから眩しい光が太い柱のように天へと伸びていくと、その柱の中から化物が出現した。

 それは二足歩行で歩き、腕が二本あるが先端は鋭利な爪となっている。

 身体が大きく人間の何十倍にも背丈がある。

 顔には二本の角が生え黒光りする大きな羽が左右にあり飛行も可能。

 と人であることを止めたとしか言いようがない存在へとなっていた。

 巨大な尻尾が毒煙の中で勢いよく振り回されると魔法使いの男が凄い勢いで何処かに飛んでいく。


 ――第三層の恵みの大地で噂になった化物


 大きく息を吸いこんで吐き出す。

 それだけで周囲の毒煙を吹き飛ばす咆哮はまさに神話に出てくる二足歩行が可能なドラゴン。


「な、なんだ……アレは……」


「な、な、なんで……ここにあの伝説のと、ど、らこんが…………」


「あれは伝説の化物……その頭上にいるのは二人の【異次元の神災者】……ってことは……」


 次の瞬間。


「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」


 一斉に悲鳴が沸き上がった。

 かつて中規模ギルドを壊滅させるだけでなく連戦にも関わらず小規模ギルドも余裕で壊滅させた化物はその存在だけで多くのプレイヤーを脅かす存在になっていた。


「グオオオオオオオオオオオオオオ!」


 二つの意味で恐れられていた存在が手を組んだ光景に我先に逃げる者達を嬉しそうに見て微笑む悪魔は腹を抱えていた。


「アハハ! これから先は俺様の時代じゃーーー! 行け! イエロー! 全てを燃やせ~!!!!」


 その言葉に反応してスキル『火炎の息』を発動し口から真っ赤な炎を吐き出すイエロー蓮見は大きな羽を動かし巨大な身体にも関わらず凄い勢いで逃げるプレイヤー達を追い燃やし尽くしていく。ついでに地上にある木々や地上にいた女性プレイヤー達も燃やしと天も地も関係なく焦土と化していく。火炎の息を使い続ける間MPゲージが減るのだがそれをブルー蓮見がMPポーションを頭上からぶっかけ続ける事でMP減少を限りなくない物にする。


 そして――レッド蓮見――本体は。


「……これから始まる悲鳴劇。結構なポイントを使った~期待のドキドキは大チャンス、今日は俺様大活躍♪ 燃えろ、燃えろ、心臓~今日こそ一番目立ってモテルんだ。バーニング、バーニング、バーニングハート今日の俺は今までと違う♪」


 と、歌を歌い始めた。


「燃えろ、燃えろ、燃えろ俺様~本命まだまだ先だけど♪ 燃えろ、燃えろ、燃えろ俺様ついでに大地も燃やし尽くせ♪ バーニング、バーニング、バーニングハート飛んで走って逃げるやつ燃やし尽くせ♪」


 悪夢の歌を体現するように神災戦隊が各々の役目を果たしていく。

 歌を聞いてイエロー蓮見のテンションが上がる。

 それを機に勇気ある者達が反撃をしてくるが、巨大な身体を活かした突撃、パンチ、アイアンテール、巨大な爪による切り裂きと全てを正面から受け止め逆に返り討ちにしていく。なにより歌を聞いてアドレナリンが分泌され頭のネジが緩んだブルーはレッドから受け取ったMPポーションをどんどん使いイエローを支援。


 こうして神災戦隊による悪夢の時間は開幕となった。


 化物の降臨から僅か三分で蓮見を狙い奇襲を仕掛けて来た者達は天へと帰る結果となったのは語るまでもないだろう。

 それから豊かな大地が真っ赤に燃えた。

 地に降り立ったソレはゆっくりと豊かな大地を軽い気持ちとノリで煤煙が舞う黒一色単へと染め上げながら街にある工場へと向かって行く。

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