第360話 動きだした特殊イベント
蓮見が目を開ける。
特殊イベントのステージ――町は曇り空に覆われているものの太陽の陽がところどころ顔を出していた。蓮見が今見ている光景に合う言葉があるとするなら機械と侍の町。城は歴史の勉強をしている中で見た事があるどこか親しみある城。その周りには時の流れによる違和感を無視した古びた工場がチラホラとある。そこを沢山の武士が警備している事からなにやら意味があるように見えるがこれに何の意味があるかは今の所わからない。
「皆、空飛んでる……」
空を見上げれば蓮見が呟くように先日のアップデートで手に入れたスキルまたはアイテムによってイベントを一早く攻略しようと気合いが入ったプレイヤーが大空を飛び交っている。また視界の隅の方では早くもプレイヤー達がドンパチを始めており火花が散っていたりと同じ目的意識(イベントクリア)を持っておきながらその過程や方法は様々だった。
「確か城の大きさによってイベント終わりに貰える限定アイテムのレベルが違うんだっけ……」
蓮見は頭の中をひねくり回しながらイベントの内容を思い出していく。
今回のイベントは三種類の限定アイテムが商品となっているのだが、その限定アイテムはイベント終了時にクリアできていた最大ランク(討伐報酬)の度合いによって報酬内容が変わってくるシステムが採用されている。なので、大小様々な城が不規則に何個もあるのはプレイヤー達がある程度分散し各々が実力にあった敵と対峙する為に用意されたものである。ただしここに大きな落とし穴が一つある。討伐報酬は三段階だがプレイヤーKill報酬は倒したプレイヤー数によって決まり上位何パーセントと言った具合で数段階に分けられているため必然的に腕に自信があるプレイヤーは他のプレイヤーを倒しにかかるという罠がある。それも倒されても今回はペナルティーがなく時間内であれば何度でも復活し挑戦が可能な事から一度倒した相手でも油断できない。そのため、下手に多くの者の恨みを早めに買うと後々徒党を組まれ自分が苦労する事になるかもしれない。これが大まかな蓮見の脳内にある特殊イベントの内容となっている。
「これ絶対Kill報酬だけ狙ってるやつもいるな」
視覚外から聞こえる雄たけびを聞いた蓮見はそんな事をふとっ思った。
だけどそれは間違っていない。
なぜなら世の中報酬に興味がある者もいれば興味がない者もいるのだから。
なので蓮見はエリカの為にまずはイベント限定アイテムを手にする為、視線を周囲に飛ばしその中で一番大きな城がある方へと向かって足を動かし始める。
「それにしてもチラホラと見える工場とその警備侍……一体何の意味があるんだ?」
道を歩いていると武装し刀を腰に携えた侍が町人らしき人物(NPC)に何か指示を出し命令し動かしているように見えた蓮見。さり気なく道を外れ工場の方に近づいて何て言っているのか聞こえる距離まで近づいてみようとするが見張りの武士が険しい顔でこちらに近づいてきたので慌てて距離を取り、元いた道へと戻る。
「これは後で探索だな。にしても何か怪しいな……」
果たしてこの工場に何があるのか。
外から見える唯一の出入口は視認可能な限り閉ざされている。
それはここだけの工場に限らない。
ここで城に向かう蓮見とは別で沢山ある怪しい工場探索を先に行うプレイヤー達のグループもいた。
「城か工場。どっちからと言われたら俺は……そうだな~うーん……城かな。でもまぁチャンスがあればプレイヤー狩りもしないと……エリカさんから報酬がって言われそうだしおまけで……頑張ろうかな……あはは」
一体どちらからの攻略が正しいかは考えてもわからない蓮見はとりあえず城、工場、プレイヤーKillという順番で優先順位をなんとなくつけてこのイベントを盛大に楽しむことに決める。
そんな蓮見を最初に待ち受けていたのは――。
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