第353話 次は ソロ? パーティー? どっちだ?
「なら今回の特殊イベントは皆ソロでオッケー?」
「うん」
「そうですね」
「いいわよ~。金目の物は蓮見君が手にいれてくれると思うから私は皆の応援を観客席からするから」
全員が美紀の言葉に同意していく中、ここで他力本願を心の中で密かに考えていた者だけが焦り始める。
「……え? 俺……ひ……とり?」
「うん。嫌なの?」
小首を傾げ視線を真下に向けてくる美紀に蓮見の目が泳ぎ始める。
待て、待て、待て!!!
アイテムなしとかそんなのPS(プレイヤースキル)頼りになる戦闘など出来るわけがない。MPはまだしもHPが減ったらマジでどうすんの、オレ!?
HP減少が自分のパワーに繋がる蓮見。
だけど言い方を変えるなら自ら自分の首を絞めているようなもの。
かと言ってHPポーションは区分上は戦闘用アイテム? らしいが微妙なHP調整が出来ずに一定量必ず回復してしまうアイテム。
つまり常に死と隣合わせの中、まさか強敵しかいないプレイヤー集団の中で生き残りイベントを無事にクリアするとなると素人プレイヤーの自覚がある蓮見にとってはHP調整をしながらになるのでかなり難易度が高く到底一人で挑戦しようなど思えない。
なので――。
「い、いや……嫌じゃないけど、それなら俺……弱いし今回はエリカさんとかんきゃ――」
と、弱音を口にしていくと徐々に美紀の表情が曇り始め目をウルウルとさせ悲しい表情へと変わっていくのが目に見えてわかったので、
「――でも、負けてクリアできなくてもいいから……皆との想い出づくりって意味で――」
急遽本音から思いやりの言葉に変えると美紀の表情に笑みが戻り始めたので、
「――参加……してみよう……かな?」
と、つい言ってしまった。
情けない。
自分でそう思うも、男として幼馴染としてゲーム仲間として目の前の女の子を悲しませることはできない、と心の中で思ってしまった。
「本当にする?」
心配性の美紀が不安そうに確認してくる。
――ゴクリ。
息を呑み込み、本音と見栄どちらを取るか悩むもここは割り切る事にした。
「あ、当たり前だろ! お、俺に不参加の三文字はな、ない、からな!」
明らかにその声は震えていた。
自分が置かれた状況をよく理解していたからだ。
参加すれば間違いなくミニイベントの再来に似たなにかが起きるような予感しかしないと。それは少し前に言っていた彼女達の言葉が物語っており、普段の仕返しをしようと言う本音が隠されていると。最低三人……あとは……綾香さんと……ラクスさんと……あげればキリがない。その自覚はある蓮見。
なぜなら第四回イベントで彼が巻き込んだ最低半分程度がその命を狙いに来ると考えればそれはもう……過去を超えなければ生き残る方法はないと言えよう。
だから、蓮見は心に誓うのであった。
五感潰し(仮)系統の技をアイテムなしで出来るようにするかその代用となるなにかを考案し実践で使えるレベルにし、新スキルのお披露目――新必殺シリーズをバージョンアップし次回の特殊イベントまでに間に合わせることを。
「うん。なら信じてるね。成長した蓮見と一緒にイベント参加して一緒の時間を過ごして想い出話しが後からできることを。それと成長してカッコイイ姿を私に見せてくれるって」
――成長した姿を見せる?
――つまり、戦闘……いやです。
――見せたくありません。貴女様とは戦いたくないです。
――なぜなら毎回修行の時にノーダメージでボコボコにされるからです。
「……はい。任せてください」
つくづく本音と言葉が噛み合わない蓮見。
だけど世の男子諸君ならばこの気持ちわかってくれよう。
男として大切な女の子の笑顔は時にどんなことをしても守らなければならないときがあるのだと!
なにより目の前で悲しませることなんてできないときが必ずくるのだと!
例えその結果自分の心に嘘を付く事になっても、男として見栄を張らなければならないときが来るのだと!
そうだろ!?
皆!?
…………。
………………だろ?
そうだよな! よし聞こえた皆の声!
幻聴でも聞こえたのか目に見えない相手に問いかけ返事をもらった蓮見はこれは仕方がない結果だとして受け入れた。
「なら良かった」
それはどう言う意味だろうか。
蓮見は疑問に思ったが深くは考えない事にした。
ここで深く考えて悪い方の意味だったら嫌だから。
「お、おう! それでこの後どうする?」
「そうね~、なら今日は皆でお話ししてお泊りしよ? どうせ七瀬と瑠香は私の家に今夜止まる予定だったみたいだし変えの着替えあるし」
「いいね、それ! そうしよ、そうしよ~!」
「わ、私も賛成かもです!」
「な、なら私も今夜泊まる! んで罰ゲームなんだからせめて今日は私が蓮見君の隣にいる!」
「……まぁそこは……そうゆうことなら」
「ですね。私達は皆一緒にわいわいこうしてできるなら今日はそれで良しとしますよ。ね、瑠香?」
「そうだね、お姉ちゃん」
「ならお風呂とかどうする? 私と七瀬と瑠香は元々私の部屋に着替えあるし私の家で入るとしてエリカは――」
「なら私は蓮見君の家で一緒に入る~♪」
「マジですか! 是非一緒に――グハッ!?」
美紀の膝枕から勢いよく飛び上がった蓮見のお腹に鉄拳が抉り込むようにボディーを貫き再び美紀の膝元にダウンしお腹を抑えもがき始める。
「一緒に入る~じゃなくてアンタもこっちで入りなさい。着替えは貸してあげるから」
「でも四人同時じゃ狭いでしょ?」
「狭いもなにも仕方ないじゃない?」
「だったら私こっちで入った方が良くない?」
「どうせ一緒に入ってあわよくばとか内心思ってるんでしょ?」
疑いの眼差しを向ける美紀。
「ダメなの?」
小首を傾げるエリカ。
「当たり前でしょ! そこまでは一人抜け駆けは許さないし、そのいやらしい身体で至らんことして誘惑なんて百年早いわよ!」
「だって私も女の子だし……性欲ぐらいあるわよ?」
「あるわよ? じゃないから! いいからアンタはこっち! いいわね?」
「は~い。ってことで残念だったわね、蓮見君」
強がってはいるがどこか残念そうなエリカ。
「ぐぉぉおおおおおお」
「あれ? やり過ぎたかな……あはは……ごめんね。ってことで後でまた来るのと……夜ご飯お詫びに持ってきます……ので一旦ばいばい」
もがき苦しむ蓮見に美紀とエリカの会話は一切耳に入ってこない。
そのまま蓮見の返事を待たずして女四人は窓から隣の家の部屋へとジャンプし姿を消していった。最後に部屋に戻った美紀は七瀬達が部屋を出てお風呂へ先に行くの確認してから一度窓の外の振り返って申し訳なさそうな顔で「本当にごめん。でも……冗談でもあんなこと言わないでよ……本当に大好きだから冗談でも聞いてて辛いし嫉妬しちゃうんだよぉ……ばかぁ早く気付いてよ……」と誰にも聞こえない声で呟いた。
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