第347話 蓮見と愉快な仲間集結
こうなったらまず穏便にすますことはまず不可能だと認め、全てをうやむやにして逃げ切る事に専念する方向でいくことにした蓮見。
足音に背を向け、ドアを正面にし、手を伸ばす。
そのまま取っ手を掴み、
――ガチャ
と鍵を開ける。
そのまま扉を開けようとすると、
――ガチャ
と今度は勝手に扉が開いた。
「――え?」
思わず出た声。
正面にはエリカを押しのけ笑顔で出迎えてくれる朱音がいる。
「遅い! 女を待たせる男には制裁が必要ね」
(ゲーム内の彼はなんとなくもうわかったけど後はリアル)
「えっ……いやいやいや待ってください。まずは言い訳をさせてください」
「い・や・♡」
マズイ、そう思い後ろを振り返り足に力を入れる蓮見。
逃げなければヤラレル、そう思った時だった。
凄い勢いで階段を駆け下りてきた美紀とその後方には七瀬と瑠香。
三人の気迫に圧倒された蓮見の足が急に重たくなり動かなくなる。
――しまった! 挟撃だとッ!!!
まさに絶体絶命の蓮見。
前にも後ろにも身の危険を感じる相手しかいない。
こうなったらうやむやなどと甘い事は言っていられない。
命が掛かっているのでどんな手を使っても五体満足にこの場のやり過ごす方向にシフトする。そこで万に一つの可能性をかけてエリカに助けを求める。
「エリカさん!」
「なーにぃ? 今夜は二人きりの予定じゃなかったのかしら?」
笑みを向けてくれるが、目だけが笑っていないエリカ。
「……ち、ちがう。エリカさん以外はほぼほぼと言うか全員予定外なんです……。てかマジです、信じてください」
蓮見は何一つ嘘を付いていなかったが、この時の蓮見は沢山の汗を流していた。
「はすみーーーー! 私を置いて誰としたの!?」
後方から凄い勢いで掛けてきた美紀が大きくジャンプし襲い掛かる。
「み、美紀!? ちょい、タイム!」
「問答無用!」
――ドスッ!
そんな音を立てて、蓮見は背中から飛んできた美紀に玄関で押さえつけられ、身動きが取れなくなった。
「ばかぁ! あほぉ! 少しは私の気持ちを考えてよ! このばか!」
そんな美紀もここでようやく玄関に誰が来たのかに気付いたのか、「あっ」と声を漏らす。美紀に下敷きにされた蓮見が顔を上げると、綺麗なふとももが目に入りそこから奥、朱音の下着が見えそうで見えな……目のやり場に困ったのですぐに視線を下に戻してここは大人しくしておくことにする。
「エリカに……朱音さんどうしてここに?」
「逆になんで美紀ちゃんがここにいるの? それと……七瀬と瑠香も」
「私達は一緒に私の家に居て、夜の……こ、こ…ぅ…ぃ……しよーって言う女の人の声が聞こえたので慌てて窓からやって来たんですけど……朱音さんは?」
「私? 私は闘技場でやりたい放題して最後に「楽しかったです♪ また戦いましょう」と一人満足してログアウトした彼に会いに来たのよ。一人だけ満足して帰るは流石に卑怯でしょ? 私がもう少し遊びたいとせっかく試合途中で思ったのに、私の意見は無視して、私をその気にさせて、自分の願望を押し付けて最後は鼻歌を歌って立ち去って行ったのよ?」
「なるほど……」
「そうゆうこと。家は瑠香から美紀ちゃんの隣って聞いてたから美紀ちゃんの所にも後で挨拶に行こうと思ってたんだけど、まさか全員ここに集合とはね。それで私に取られたと思ったの?」
すると美紀の顔が茹でたタコのように一瞬で真っ赤になった。
「そ、そ、そんなわけないじゃないですか!!! 私にはずっと前から好きな人がいるんですから!!!」
「ちなみにその慌てようから見て一応は取り繕って見てるみたいだけど、アンタ達も内心相当慌てたのかしら?」
――ビクッ!
七瀬と瑠香の身体が反応した。
「お、お母さんなななななななにを言ってるのよ。そそそそんなわけないじゃない!」
「そそそそそうだよ! 蓮見さんに女が出来たとか思ったこと一度もないもん!」
「そ、そうよ、瑠香の言う通りなんだから!」
二人の言葉は蓮見の心をグサッと容赦なく貫いていく。
それ以上はやめてと心の中で嘆き地面と睨めっこする蓮見は知るよしがないが、この時七瀬と瑠香の顔も美紀に負けないぐらいに赤くなっていた。
これをもし見ていたら二人が精一杯の照れ隠しをしていると鈍感な蓮見でも気付けただろう。
「そうなの? 私にはそうは見えないけどなー」
(二人共慌ててから本当に可愛いわね)
そのまま視線をエリカに移して。
「ちなみに初めましてだけど。エリカちゃんだっけ? エリカちゃんは目にゴミが入ったのかしら? それとも年上としての余裕を見せつけようとして我慢できなくなったのかしら?」
「……め、目にゴミが入っただけです!」
「ふーん。その割にはさっき内心怒ってたように見えたけど? なんで、そう見えたのかしら?」
(あら? 美紀ちゃんだけじゃなくてこの子も相当本気なのね……)
「そ、それは……ほら、あれです。蓮見君が嘘を付いた……と思ったからです」
話しの流れから何となく蓮見が言っていた事が真実だと悟ったエリカは蓮見を見て心の中で「ごめんね」と謝る。でも期待していただけにやっぱり内心ショックなことには変わりがないので口に出しては言わない事にした。
「だ、そうよ? それで私はお母さんとして接した方がいいのかしら? それとも闘技場での告白をOKして彼女としての方がいいのかしら?」
(試合中なんとなく思ったけど、いじりがいありそう♪)
まるでこの状況を一番楽しんでいると思われる朱音が小悪魔の微笑みを零しながらしゃがみ込んで蓮見の耳元で囁く。だけどその声はこの場にいた全員の耳へも聞こえ場の空気が一度いや二度下がったかのような感覚に襲われた蓮見。
視線を地面から上に向けるとちょうど朱音の足が目の前にあり、目を大きくして見開くがしっかりとスカートを手で抑え、足を閉じているため、蓮見が今見たい! と思った物は残念ながら見れなかった。
「ん? 見たいの?」
「いや……そんなことは……ないです」
「素直になったら見せてあげるって言っても?」
「…………はい」
「うふふっ、素直なのね。なら付き合ってあげようか? そしたら自然な形で見れるかもよ?」
「…………え?」
「私に告白したわよね?」
「……え?」
告白をした記憶がない蓮見は軽く戸惑う。
そもそもそんな事は一度も口にしたことがな……あっ。
思い出した。
あの時、その場の勢いで似たような事を言ったな、と。
ただし、あれは人として好きなだけで異性としてでは……なかったはずなのだが。
「前向きに考えてあげましょうか? その方が面白そうだし、なによりそこに深い意味があろうがなかろうが、告白は告白よね?」
その目は完全にこの場を楽しんでいる。
「はすみぃー!? これは一体どうゆうこと?」
「蓮見? 私のお母さんに何を言ったの?」
「蓮見さん? 事と次第によっては幾ら私でも本気で怒りますよ? お母さんに何を言ったんですか?」
「そうよ? 皆の言う通り。私との約束を破るだけでなく、この人に告白したって本当なの?」
ゴクリ。
唾を呑み込んで、覚悟を決めて蓮見が口を開く。
「全て……洗いざらい吐きます……」
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