第311話 自業自得の蓮見
だけどここで問題発生。
てっきり応援されるか、励ましの言葉もしくは願望込みでキャーカッコイイ!!! って言われるかと思っていた蓮見だがなぜか言葉が返って来ないのだ。
「…………」
声が聞こえてこないので、もう少しだけ待ってみる。
――。
――――。
あれ?
おかしいぞ?
そう思い、蓮見が美紀達に視線を向けると、四人が四人目をパチパチさせてお互いの顔を見合っているではないか。その表情は皆言葉に困っているように見えなくもない。
「……あれ?」
思わず心の声が出た所で、美紀が口を開いてくれる。
「一応聞くけど、誰相手にそれ言っているか正しく理解してるのよね、紅?」
「誰って……目の前にいる綺麗なお姉さんだけど?」
「うん。礼儀正しく待ってくれてるからはっきりと言うけど……ラクスはプレイヤーキラーの異名を持つプレイヤーだよ」
「……え?」
その言葉に危機感を覚える。
まさか普段自分が当たり前にやっている事を他にするプレイヤーがいるとは思いにもよらかった蓮見。
お調子者の表情から笑みが消え、冷や汗が出てくる。
手からも手汗と身体が危険信号を発し始めた瞬間だった。
「綾香相手には弱気だったけどラクス相手に強気の理由がね、私達わからないの? どう反応したらいい?」
「どうゆう意味?」
「ラクスは私達と同じ実力者私や七瀬と正面から戦えるほどの実力者なのよ? だから何で紅がそこまで強気になれるのかな……ってのが私達の正直な意見なんだけど。確かにプレイヤーKillで通じる物はあるけど……少し心配だなって……」
少しどころか本当に大丈夫か?
と言いたげな表情の美紀を見てつい息を呑み込む。
やべぇ……。
マジで?
冗談だよな?
待て待て、そんなにこの人強いの?
なんで俺の周りって強い人しかいないの?
俺なにか悪い事でもした?
勘弁してくれよ……。
俺、誰にも迷惑かけるようなことしてないのにさ……。
心の中で今の感情を整理しながらも、今なら間に合うかと思い救済の手を求めようとしたときだった。
「里美さん!」
声をあげたのは瑠香だった。
「ん?」
「ここは私達のギルドリーダーを信じましょう! ここまで自信満々に言うからにはきっと奥のぼ……じゃなくて、手の一つや二つあるに違いありません。きっと紅さんはこれから何かをするのに私達は邪魔だ、巻き込んだら……って思ってるに違いありません。ここは副ギルド長としての判断をしてあげてください!」
ちょっと待てーーーーー!!!!
今なんて言おうとして修正した、瑠香!!!
てか奥の手どころか勝機すら見えないから!!!
心の中で大声で叫び、力強い眼差しで訴えるも瑠香は気付いてくれない。
「……いやっ、ルナのいう――」
こうなったら、直接美紀に誤解を訂正しようと口挟むが、
「それもそうね。ならここは任せるわ、紅」
美紀が納得する方が早く、逆に任せられてしまった。
「さっきプレゼントしたのとは別にお姉さんのモグラ君も三体ここに置いて行くから好きに使っていいわ! キツイとは思うだろうけどここはファイトよ、紅君! 男見せてね」
毒煙のモグラ君を三体地面に置いてスイッチを入れるエリカ。
「そうゆう事なら、ここは任せるね。後から必ず追いついてきてよね、紅」
頷き、気持ちは伝わったと言いたげな七瀬。
「紅さん!」
瑠香だけは親指を立てて、ニコッと微笑んでくれる。
「なら私達は先に行くわ!」
そう言って美紀を戦闘にフィールドの奥へと進んでいく四人の姿を蓮見はただ見送るだけの結果となった。
誰一人蓮見の本当の気持ちには気付いてくれないのと、誰一人カッコイイとは言ってくれなかった……。本当は今すぐにでも逃げ出したいが、そんな事をすればどうなるかは何となくわかるので、諦めのため息を一つ吐いて視線をラクスに向ける。
「お待たせしました」
お調子者は分身と比べるとカリスマ性もなければ、女心を刺激する素質もないらしい。綾香で逃げ腰なのに同じくらい強いとされるラクスには強気、確かにこれを見れば任せろと言われても迷いは生じる。故に美紀達の感性が正しく、蓮見の感性が少し可笑しかったのかもしれない。
「いえ。では始めますか【神眼の神災】の異名を持つ紅さん」
仮面を被ったラクスはレイピアを腰から抜き構える。
そして――。
隠していた殺気を蓮見に向ける。
だけど――。
「仕方ない。こうなったらあれやるか」
蓮見も弓を手に取り、矢を手に持ち戦闘態勢へと入る。
こうして僅かな時間差で二戦場同時で【神眼の神災】が戦闘を行うことになった第四回イベント。
偶然にも二つの戦場はさほど離れていないが、分身に助けを求めるには少し距離があるし、なによりラクスがそんな事をさせてくれるとは思えないので、今回は自分一人で頑張る事にした
そして――。
「スキル『虚像の発火』!」
蓮見の先制攻撃を合図に戦闘が始まった。
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