第308話 作戦は無へと帰す


「スキル『アクセル』、ついてこい神眼!」


 一直線に突撃するソフィ。


「当然!」


 受けてたつため、肩幅に足を開き構えを取る蓮見。

 その背後からは高速移動で忍びよるもう一つの影があった。


「こっちは任せて!」


 杖を構え蓮見のフォローに入る七瀬。

 その表情は真剣。

 先程とは違い気を抜く事ができない相手だとわかっているからだ。

 数では圧倒的にこちらが有利。

 それでも恐ろしいと思ってしまう。

 この二人なら五人相手(実質四人)でも難なく突破してきそうで。


 今からスキルを発動しても間に合わないと判断した七瀬は杖を右手で持ち走り綾香の双剣を杖で受けてたつ。


「相変わらず小芝居が上手いギルドだね!」


「それはどうも!」


 七瀬のフォローへすぐに入る瑠香と美紀。

 ソフィは一旦蓮見に任せる事にした三人は厄介な方へと戦力割き短期決戦へと持ち込む。


「うひょー。神眼様を護るのは厄介な三姉妹とは……これはこれで超ラッキーかも」


 偶然にもこれはこれで嬉しい綾香。

 本気を出せるなら相手としては文句がない、そう言いたげな表情を浮かべる。


「誰が三姉妹よ! こんな変態姉妹と一緒にしないで!」


 それを即座に否定し、攻撃を仕掛ける美紀。

 だが、中々攻撃が通らない。

 どころか反撃もされる。

 やはり同格か、そう思う。

 攻めに攻めきれず、後一歩が届かないそんな感じだった。


「スキル『加速』『水龍』!」


 美紀の援護に入り瑠香が綾香の背後から正面から攻撃をするが身体を捻られて躱されてしまう。


「スキル『竜巻』!」


 そして瑠香の水龍を自身を中心として発生させた竜巻で相殺し、近くにいた美紀と瑠香を強引に吹き飛ばすが、二人共空中で態勢を立て直し着地と同時に再び接近する。


 三人の武器が何度も衝突し火花を散らす。


 二対一の状況に徐々に追い込まれていく綾香の救助をするべく蓮見の攻撃を躱しそのまま一撃与え怯んだすきに七瀬の死角から美紀の方へと駆けて行くソフィ。


 美紀と瑠香は綾香に神経を集中させている為、気付いていない。


「流石は綾香。あの二人相手に分が悪いとは言え互角とは。まずは一人その首を貰うぞ」


「させない! スキル『導きの盾』!」


「させるか! スキル『虚像の発火』!」


 七瀬が美紀の首を取ろうと背後から攻撃をするが、間一髪の所で首を切断しようとしていた双剣をスキルで受け止める。薄い緑色の盾にヒビが入り割れるがそこに追撃を阻止する為の燃える矢が飛んでいったためにKillヒットを警戒したソフィが側転し逃げていく。


「やはり恐いのは神眼が放つ矢か……」


 舌打ちをして、蓮見を睨み付けつつもすぐに瑠香を足止めすると同時に自分と蓮見の間に瑠香が来るように立ち回り盾にするPS(プレイヤースキル)は流石だと言えよう。


「サンキュー! 助かったよ!」


「構わん。だが挟撃の予定が狂ってしまったな。すまん」


「いいよ、いいよ」


 そのまま背中合わせで合流しお互いの背中を護るように立つ綾香とソフィの正面にはそれぞれ美紀と瑠香がいる。


「やっぱりルフランより紅の方が敵に回すと恐いね」


「だな。一撃死がある以上普段なら躱す必要がない攻撃まで躱さないといけないからな」


「ってことでウォーキングアップ終わりでいいかな?」


「あぁ」


 綾香とソフィが武器を下げ、目を閉じ大きく深呼吸を始める。

 チャンスと思い、すぐに攻撃に移ろうとする四人だったが、


「待って!」


 美紀の声が蓮見、七瀬、瑠香の攻撃モーションを止める。


「嫌な予感がする。全員構えて! 相手の動きを見てから反撃!」


 美紀の直感が警告音を大音量で鳴らす。

 あの二人が同時に隙を見せる等あり得ない。しかも敵を正面にしてそんなミスをするとは思えない。そう考えた美紀の判断は正しかった。二人がゆっくりと目を開けると、地面に見慣れない魔法陣が出現した。それは白色と何処かで見た事があるような魔法陣。


「まさか……」


 ここで瑠香が相手のスキルに勘ずく。

 あのまま攻撃していたら、自分達がどうなっていたか。

 そして。

 先ほどとは比べ物にならない速さの二人を見て。


「まずい……お姉ちゃん!」


 その言葉に七瀬も勘が働く。


「来る! 紅!」


 隣に来た蓮見を慌てて突き飛ばし杖を大きく振るが、二人の狙いが蓮見である以上左右からくる攻撃を両方いっぺんには無理があった。

 急すぎて七瀬の技量をもってしても一人の攻撃を受け止めるのが精一杯だったのだ。


 ――!?


 その為、次に蓮見が視線を上にあげた時には白いオーラを纏った綾香が目の前に来ていた。


「油断したね? く・れ・な・い♪」


 ――ゾクッ


 背筋が凍りつく感覚に襲われた蓮見は動く事を忘れ、頭の中が真っ白になってしまった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る