第二十七章 第四回イベント 午後の部 (Part 2/2)

第307話 午前の部(前半戦)で立っていた運命(フラグ)


 エリカのアイテム補充まで終わった五人はイベント専用MAPの中心地に向かって歩いてく。誰がとは言わないが辺り一面を焦土にしてしまった為に見晴らしは大変素晴らしく道に迷う事もなければ多少よそ見をしても仲間を見失わない大森林跡地となっている道を進んでいく五人。


 ついさっきまで草木が生い茂り空気が新鮮だった場所を歩くと、ガシャガシャと何かが黒い物が崩れていく音や本来であれば茂みの中に隠れてプレイヤー達を待ち伏せしているモンスターがいなかったりととても不思議な道である。


「そう言えばなんかえらいポイント増えてる気がする……」


 その言葉に美紀が隣に行き、確認する。


「……さっき逃げた連中もいるだろうけど……既に私より少し多いくらいある……」


「マジ?」


「うん」


「なら今は俺が暫定一位だったりする?」


 目で同意を求める蓮見。

 その眼差しは真っすぐで、美紀の瞳を見通してしまう程に眩しい。


「た、たぶん……」


「やったぁー!!!」


 左腕を天へと向け、大いに喜ぶ。


「初一位じゃん! よーし! この後も俺頑張って頑張って一位キープするぞ!」


 単純な性格の為、これだけでやる気UPの蓮見。


「ほどほどにでいいわよ」


「そうです。お姉ちゃんの言う通りです。最後は里美さんが頑張ってくれますから、きっと」


「そうそう、後は私が……ってちょっと!!! なんで最後私だけ頑張る予定になってるのよ! そこの変態姉妹も最後まで頑張りなさい!」


「誰が変態よ」


「そうです。そうゆうのは良くありませんよ」


 もにゅ、もにゅ、もにゅ、もにゅ


 プニプニプ二、プニプニプ二


 むにゅ、むにゅ、むにゅ、むにゅ


「「やっぱり巨乳は柔らか――」」


 怒りの槍が真横から後頭部に飛んできた二人は美紀の手によって強制的に言葉を中断させられその場で後頭部を抑えてかがむ。


「い……いたい……」


「……やっぱりまた大きく……――」


 ドンッ!!!


「きゃああああ! いたぁいいいいい!!!」


 瑠香の言葉を強制的に再度止める美紀。


「ば、ばかぁ! それは言わないで!!!」


 赤面顔になった美紀が瑠香の口を手で力強くふさぐ。


「み、見るなぁ、くれなぁい!」


「ふむ。言われて見れば大きくなったような気がする。つまりふとっ――」


 美紀の射抜くような視線に気付いた蓮見が慌てて両手で口をふさぎ黙る。


「なに? なにか文句あるわけ?」


 唇を尖らせる美紀。


「あ、ありません」


「本当に?」


「は、はい」


「ルナ? このまま窒息する?」


 精一杯首を横に大きく振り、意思を伝える瑠香。

 その顔は青白く、早くも酸欠状態になり始めていた。

 ただでさえ、熱い蒸気が蔓延したフィールドであるため、酸素の限界はいつもより早いことから今の瑠香には猶予がほとんど残っていなかった。


「ごめんなさい」


 最後の息を吐き出しながら、涙目で謝る瑠香。

 そんな瑠香の言葉を聞いて、開放する美紀。

 ただ恥ずかしいのか、胸を手で隠して恥じらっているのだが、男としてそっちの方が萌えると思ってしまう蓮見には目の毒でしかなかった。



 それからしばらくは美紀が恥じらないながらも頭に角をはやしていた事からしばらく無言で目的地へと向かう事になった五人。

 とは言っても好きな人の前で身体の事を言われて、ツンツンでもしてないと恥ずかしくて心が落ち着かないだけなのだが、その態度がたまたま周りには怒っているように見えただけなのだ。


 幾ら同性とは言え、セクハラはダメ。なのだが、隙さえあればいつもこうなのはある意味三人がなんだかんだ仲良しだからなのかもしれない。

 そんな仲良し三人ととばっちりを喰らいたくなくて途中から黙った蓮見と最初から黙っていたエリカの視界の先から別方向からイベント専用MAPの中心地に向かうプレイヤー達を運悪く見つけてしまった。


 そして向こうもこちらに気付いたらしく、すぐに目があってしまった。


 暫定十位以内が四人も固まったこの状況で見逃してと言ってもそれは無理だろう。

 かと言って安牌をとって逃げるにしても相手が最悪に悪い。よりにもよってまさか綾香と鉢合わせることになるとは。


 最強の補佐役の次は【神眼の神災】に憧れ影響を受けつつも真っ当な道で強くなった者。何故だろう。蓮見の周りにはこうして強者が吸い寄せられるかのように集まってくるのは。だからなのかもしれない。この状況で「おぉー! 今度は綾香さんか!」と呑気な事を言うだけの余裕があるまでに異次元の方向で成長したのかもしれない。


「おぉ~紅じゃん~。ずっと探してたよ!」


 満面の笑みで大きく手を振りながら歩いてくる綾香。

 その笑みの後ろにある物に蓮見がいち早く気付く。


「あれは……あの時の里美達と同じ笑みだ……」


 ここでスライディング土下座をしても多分意味がない。

 ならばやる事は一つ。

 作戦変更。


「えへへ! 綾香さんこんな所でどうしたんですか?」


「う~んとねー、今日は紅の首を取りに来たんだよ♪」


「なるほど! 気が合いますね、俺達は五人で綾香さんを倒そうと考えてたんですよ~」


 仲間を巻き込み、仲間に助けてもらう。

 これが蓮見の作戦である!!!


 だが、そんな事を知らない四人は驚いてしまった。

 この男まさかの今回は他力本願か!? そう思った時には遅かった。


「ならまとめてかかってきていいから始めようか?」


「後で後悔しても知りませんよ?」


「うん。私午前の部一時間以上邪魔されたの結構根に持ってるから覚悟してね?」


「そうですか。実は俺も一時間以上諦めずに攻撃してきたこと根に持ってますんで覚悟してくださいね?」


 誰がどう見聞きしても蓮見にしか非がないわけだが、戦闘はどの道避けては通れないと判断した美紀は手で全員に合図を送り、戦闘態勢へと入る。


「まぁ、そうなるよね。だから悪く思わないでね、紅。トッププレイヤーが常に一人でいるとは限らないんだよ」


「そういうわけだ。久しぶりだな【神眼の神災】。第三回イベの不完全燃焼ここで断ち切らせてもらうぞ」


 蓮見達の後方から挟むようにして姿を見せたソフィは双剣を手に持っており既に戦闘態勢に入っていた。


 こうして【深紅の美】ギルドは強豪ギルドと呼ばれる一つ【雷撃の閃光】ギルドの代表二人と衝突する事になった。


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