第二十六章 第四回イベント 午後の部 (Part 1/2)
第294話 休憩時間
エリカと合流した蓮見は美紀の厳しい監視の元ご褒美をもらっていた。
「それでこれは何個欲しいの?」
「なら十個持てるだけ貰っていいですか?」
「はーい」
こんな感じで普段なら絶対に気前よくアイテムを人に譲らないエリカが蓮見の笑顔を見たいが為に次々にアイテムを譲っていく。
今回の第四回イベントでは持ち込み可能アイテムには全て所持制限が有り、好き放題できるというわけではない。
これは運営がどこぞの暴れん坊対策で導入したのだが、所持制限はあくまで個人であり、仲間で協力すればある程度は関係ない。その為、協力さえすればその上限を突破できるよね? と美紀達が気付いた時には全てが手遅れな気がしたので、ここは午後の部(後半戦)も気持ちよく頑張ってもらうために大抵の事は見てみぬ振りをしていた。
「一人十個だとしてそれを五人で協力すると五十個持ちこめ……ってエリカそんなに紅にアイテムあげて採算大丈夫なの?」
「何言ってるのよ? 紅君の時はいつもそうゆうのは全て度外視してるって何度も言ってるじゃない」
「ふーん。それでそのアイテム私が欲しいって言ったらどうなるの?」
「ギルド割入れて二万ゴールドでいいわよ」
「高いわよ! 紅にはそれを十個ただであげて私からは二十万も取るわけ!?」
「当然よ。本来なら二万五千ゴールドなのよ? これでも良心的な方よ?」
ゴールドの話しは耳が痛いので右から左に流す蓮見。
下手にこれで請求されても蓮見の所持金二百ゴールドでは払いたくても払えないのだ。
とりあえず前回の失敗を踏まえ再チャレンジ用のアイテムをこれで確保した蓮見。
失敗と言ってもあれは場所が狭かったのも一つの原因だと考えている。
そのため今回のように広大なフィールドではなにも問題なく成功するのではないかと内心思っているのだが、今回の問題はそこじゃない。
午後の部(後半戦)は美紀達も蓮見に同行する予定になっていることから、逆に巻き込まないかを気を付けないといけないのだ。
なんせまだ火力の調整が全然出来ないから。一度ならず二度まで巻き込んだ日には……だけど人間好奇心には中々勝てなかったりするのも事実。
「ねぇねぇ、紅?」
名前を呼ばれて首を動かす蓮見。
「どうしました、ミズナさん?」
「またあれやるの?」
「はい。やると言うかいっぱいプレイヤーがいるならやってみたいなーぐらいの感じですね」
目をキラキラさせて答える蓮見。
それを見た七瀬の目は逆に光を失い始める。
「でも殆どのプレイヤーは火属性ダメージ軽減とか無効化ついているかもだけどそれでも大丈夫なの?」
「……爆発のダメージがゼロにならないなら。後は俺の好奇心の問題なので」
「好奇心か……」
頭を抱え始めた七瀬の元に瑠香がやってくる。
「お姉ちゃん?」
「あっ、ルナ」
「なんかあった?」
「ううん、別に。それよりルナは午後の部(後半戦)の準備はもう終わったの?」
「うん、終わったよ! それより紅さんの方は準備終わりましたか?」
瑠香が覗き込むように隣にやって来ては蓮見が今見ていたアイテムツリーを覗き込んでくる。その時、腕に小さい膨らみがほんの僅かにだが触れた。ニヤニヤしたいのを必死になって我慢し、悟られないようにする蓮見。そのときに、小さくても柔らかいんだなと煩悩が再び膨らみ始めた。
「おう! 準備は完璧かな」
(テンションもおかげさまで!)
「相変わらずよくもまあ毎回これだけのアイテムを用意できますね」
「まぁな。これもエリカさんのおかげだよ」
「なるほど。エリカさんなしでは紅さんの活躍はなかったと」
「そうなるかな」
すると。
「もう、紅君ったら。お姉さんなしでは生きていけないって……」
頬を朱色に染めるエリカ。
「はい! だからこれからもずっと近くにいてください!」
「わかったわ! ならこの際けっ――」
その場の勢いで人生のゴールを迎えようとするエリカを赤面した美紀が止める。
「それは違うでしょうがーーーー!!!」
そのままエリカと蓮見の間に割って入る。
「こらぁ、紅! デレデレしない。てかエリカを受け入れすぎ! もっと警戒心を持ちなさい!」
「はい……」
怒られた蓮見は下を向き落ち込む。
そこへエリカがすぐにフォローに入る。
「まぁまぁ、私は手違いで冗談が本当になっても構わないからそう怒らないであげて里美」
「冗談が本当になったら私が困るの!」
「私は困らないから安心していいわよ?」
「いやよ!」
「あー里美が我儘になったぁ~」
「ちょ、エリカのせいでしょうが!!!」
最近はエリカの方が一枚上手な気がしなくもない美紀。
そんなエリカと美紀の視界の隅ではいつの間にか落ち込んだ蓮見を七瀬と瑠香が慰めていた。年下なのに瑠香にまで魅力を感じてしまう蓮見のテンションはかろうじて維持される。
それを見た二人は心の奥がチクッと痛んだ。
「紅のばかぁ……。私だけに甘えなさいよ……」
「紅くん……。お姉さん嫉妬しちゃうじゃない……」
女心は複雑。
それを証明するかのように嫉妬すればするほど好きになってしまう二人の女の子。
中々手に入らないからこそ、そこに価値があるのかもしれない。
そんなこんなで【深紅の美】ギルドは午後の部(後半戦)開始まで他ギルドからしたら余裕のある時間を過ごしていた。
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