第292話 運営室で始まる戦い
予想を軽く超えてきた者(光景)をモニターでがっつりと見てしまった運営室にいるメンバー達……。
全員が予想外それもとびっきりの予測を度外視してやってきた展開(問題)に言葉を失い軽い放心状態になっていることは説明しなくても想像力のある人なら簡単に想像がつくかも知れない。
それから、数分後。
ようやく我に返り始めたゲーム運営を任せられた代表の五人(いつものメンバー達)。
「おい……」
「なんでだよ……今間違いなくレイドボスとプレイヤーが手を組んで他のプレイヤーの妨害してたよな?」
「そうだな。てか一人だけイベントの趣旨変わってね?」
「まぁ北以外は予定通りだし私は……黙認するわ」
「じゃねぇ! お前半分諦めてるだろ! 誰だよ、ゴッドフェニックスは不死鳥にちなんで復活一秒とかに設定したの!?」
責任者としてまずやるべき事をする男。
今回このような結果になってしまった原因を作ったのは誰かと言う犯人捜しだ。
だけど別の男達は言う。
「ならそれで許可したのは誰だ?」
「そうだ、そうだ!」
「最終確認は確か……誰だったけ?」
ここまで来てしまったらもう責任の押し付け合いである。
後で社長になんて言われるか……想像したくない。
それとは別にもう一つ。
ゲームを通して送られてくる信じられない数の意見と文句と素晴らしいゲームをありがとうメッセージの対応。ゲームのバランス調整やアップデート以外でもこの後膨大な時間をこの時点で奪われる事は確定してしまった。
この作業量の分割を少しでも減らすために責任=仕事(残業)でその者に押し付けて皆が皆少しでも楽をしようと必死なのだ。
何も【神眼の神災】が発生させる神災はゲームの中だけに留まる事はない。
モニター越しに多くのエンジニアやゲーム運営をする者達にも当然幸福(残業代)を有り難いことにこのご時世関係なく提供してくれる。特にスキルのバランス調整をメインでしている者達は一般プレイヤーだけでなく【神眼の神災】が使った場合も想定をしろと上に言われている。その為【神眼の神災】が使っても普通、一般のプレイヤーが使っても普通のラインをいつも模索しているのだ。それは砂漠に落とした一粒の宝石を見つける並みに難しいため、そう簡単には終わらない。結局のところ、いつもタイムアップの笛がなるまで頑張って、強制終了の時間を持ってして仕事終わり(任務完了)となる事が殆どである。
「そうよ! 面白半分で一秒にしてみたらこうなったとか思ってないわよ、私!」
最後にプログラムを組んだ者は言った。
「そうだ、そうだ! 三秒も一秒もそんなに変わらないなら一秒の方が不死鳥らしいしカッコイイからとか俺は思ってないからな!」
プログラムを組む者に耳元で囁いた者も言った。
「そのとおりだ。不死鳥入れようぜ! とか俺は……い、言って……ないからな! ただ入れて欲しいなって提案しただけだけだ!」
元凶を生んだ者が告白した。
「十秒も一秒も変わらない。だったら三秒も一秒も変わらないって酒飲ませて酔わせてからお前を説得しようと皆に提案したのは俺だけど俺はあくまで提案者だ!」
悪だくみに加担した者は自白した。
つまり責任者を除く四人がこの元凶の犯人である。
ただし全員が全員――まさかこんな展開が待っていようとは思ってもいなかったのも事実である。
ただ普通に多くのプレイヤーが「やべぇ! 復活早い! 流石不死鳥。その名の通り他のボスとは復活スピードが違う!」みたいな感じでイベントが盛り上がるネタにでもなればいいかなと思っていただけなのだ。
まさか再び多くのプレイヤーを巻き込むような事になるとは決して思ってもいなかったし、空中戦が飛行スキルなしでこんなにも簡単にできるようになるとか微塵も考えていなかった。もっと言えば、プレイヤー同士でまさかこんな死闘じみた展開が午前中から勃発するとか考えもしなかったのだ。
「って、犯人お前ら全員か……っもういい。高い酒をお前達が先日持ってきた時点で警戒しておくべきだったよ。それで念の為に聞くが午後は変なことは起きないよな?」
「例えば?」
「【神眼の神災】がさらに予想斜め上行くとか」
「流石にこれ以上はないと思うけど……」
「変なスキルとかもないよな?」
「なかったと思うけど……」
「もしあったら今後のゲームバランス全部崩れるとかあり得るからな? そうなったらどうなるかわかっているな、お前達?」
その一言に全員が凄い汗を全身にかきはじめる。
心当たりはない。
だけど今日の一件ですでに飛行可能になった蓮見の独壇場を阻止と言う意味で飛行スキルもしくは飛行を可能にするアイテムを半年程前倒しでの導入はほぼ確定した。でないと一人だけ依怙贔屓はズルいとか運営は【神眼の神災】に肩入れし過ぎなどと言ったクレームや批判が絶対にこの後くるからだ。
今後の事を考えればこれ以上予測不能な行動を【神眼の神災】が取れば取る程自分達も被害を受ける事になる。ならばその被害を事前に一つでも多く防ぐことが自分達のリアルを護る最善手と言えよう。
「昼休み削ってもう一度ここにいる全員で第四回イベント後獲得できるスキルと敵のスキル確認するか?」
「「「「さ、賛成……」」」」
こうして五人の意見が一致した運営室でも手に汗握る戦いが始まった。
直後鳴り響いたコール音。
「しまっ……この音は、間違いない。しゃ、社長……」
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