第231話 悪夢の序章


「「「うぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」」」


 雄たけびをあげ走ってくるプレイヤー三人の動きを確認と同時に物陰から誰にも狙われていない事を確認してから蓮見が弓を構える。


「スキル『連続射撃3』」


 五本の矢が放たれる。

 そのまま一直線に飛んでいく矢を囮に蓮見が複製した鏡面の短剣を手に持ち動き始める。

 足の裏を爆発させたように一気に距離を詰めていく。


「矢は囮だ」


 矢を躱す事に集中した三人の懐まできた蓮見はまずハンマーを持った大柄な男のKillヒットポイントに鏡面の短剣を突き刺し瞬殺する。それから持っていた鏡面の短剣を今度は小柄な男に向かって投げつけて動きを止める。そのままもう一人の女が放った剣の一撃をギリギリで躱しすぐに弓を構える。


「スキル『虚像の発火』!」


 空を切った剣をすぐに構え一直線に向かってきた女の胸に綺麗に矢が突き刺さりKillヒット。あっけなく二人の仲間がやられた為に小柄な男が正面から奇策もなしに突撃してくる。


「スキル『兜割』!』


 ハンマを振り上げ勢いよく振り落ろしてきた。

 だけど当たらない。

 領域加速が発動した蓮見にとってそこら辺のプレイヤーのAGIによる攻撃など一対一ならば簡単に躱せる。


「悪いな、俺も成長しているんだ」


 そう言って一射。

 スキルを使わずKillヒットで倒す蓮見。

 ものの一分で三人をKillヒットした蓮見のランキングが十九位となり全プレイヤーに居場所が特定されるようになる。


「なんか手応えなかったな。まぁ、そういう相手もいるってことだろ」


 一人納得し歩き始めた神災こと【神眼の神災】。

 彼はまだ知らない、いや気付いていないと言うべきだろうか。

 今まで多くのトッププレイヤーと戦って来た為に自分が急成長しているという事実に。


「さて俺は誰と戦おうかなー」


 そう言って歩きながら上空にあるMAPに目を向ける。

 ルフラン、綾香、美紀、七瀬、瑠香あたりかなと思いながらとりあえず全員がいる方向に向かいながら考える蓮見。

 だけどそんな【神眼の神災】と異名を持つ蓮見を倒そう別のプレイヤー達が蓮見の方へと向かってくる。


「【神眼の神災】がいたぞー!」


 無名のギルド所属のメンバー達が大きな一本道に集団で立ちふさがる。


「おっ、きたきた。なら水毒実験といきますか!」


 ニヤリと微笑み弓を構える。


「スキル『水振の陣』『虚像の発火』!」


 ――ドガーン!!!


 火と水が混ざり合い爆発した。

 息をするだけで肺を破壊するのではないかと思われる熱い蒸気となった熱風が辺り一面を覆いつくす。

 熱い水蒸気は辺り一面覆うだけでなく視界も悪くする。

 息をするたびに熱い水蒸気が肺に入り息苦しい。

 だけど神災の異名はやはり伊達ではなかった。


「スキル『迷いの霧』!」


 そこに視覚の妨害補助として毒のダメージを追加した。

 息が苦しい、かと言って下手に動けば仲間の邪魔になる。

 さらにはここにいれば毒のダメージでHPゲージが削られる。と言う新コンボを蓮見はこのイベントに合わせて開発していた。そして点として何処にプレイヤーが居るかを見える蓮見に視界の悪さは何一つ問題とならない。そのまま毒の霧に姿を暗ましKillヒットを連発していく。

 サウナにいるのかと錯覚してしまう場所でただ一方的に視覚を封じられて成す術なく倒されていくプレイヤー達の悲鳴がフィールドに響き渡る。集団戦法は時に強力な武器となるが扱いを間違えればただの足枷にしかならないと言う事だ。


 毒の霧が晴れだすと同時に蓮見が一つのあるアイテムを上空へと投げ耳をふさぐ。


「ゲホゲホ……」


「おい【神眼の神災】があっちにいるぞ!」


「総員突撃ー!」


「「「「「おぉぉぉぉぉ」」」」」


 耳をふさぐ蓮見がニヤリと不敵に口角をあげると同時に甲高い音が鳴り響く。


 熱風、水蒸気、毒と続いた、かと思いきやエリカ特性の音響爆弾の攻撃。


 キ――――ン!!!


 耳鳴り程度じゃすまない音に全員の動きが止まる。

 

「ついでにこれもやるよ」


 そう言って蓮見が今度は閃光弾を耳を抑え苦しむプレイヤー達の元へと投げ込んでいく。

 耳だけでなく目も奪う悪魔――【神眼の神災】。

 そして目と耳がやられ動かない的となった者は再び放たれた矢にKillヒットされ倒されていく。これだけの人数がいてまともに攻撃させさせてくれない【神眼の神災】の圧倒的な予測不能コンビネーション攻撃に多くのプレイヤーが消化不良のままイベントリタイアとなった。


 純粋な力ではないにしろここまで一方的だと見ている方としては気持ちいいかもしれないがされた方はとても悔しい気持ちになるだろう。


 当然蓮見はこの状況を楽しんでいた。




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