第232話 神災封じ
一方的に敵を倒した蓮見は無傷で二十人以上のプレイヤーをこの時点で倒した。
だけどこの程度で満足する事はなく、歌を歌いMP回復をしながら歩み始めた蓮見。
――――
――――同時刻観客席にて。
観客「おい見ろ! 一位をルフラン、里美、綾香、で争っているぞ! それに続くようにしてリュークとはすげぇーな」
観客「もう三十キル越えってやべぇだろ。てかこの三人このままだと鉢合わせするかもしれないぞ?」
観客「本当だ! てか里美が目立ってるけど里美の護衛ってミズナとルナじゃねぇか!」
観客「ルフランの護衛もギルド幹部だ! それに綾香の護衛はソフィだと……。おいおいこれが衝突したら……」
観客「こっちもやべぇぞ」
観客「どうした?」
観客「【神眼の神災】が二十八キルしてる。全員Killヒットの瞬殺だ……」
観客「はぁ!?」
観客「なにそれ……もはや神じゃん」
観客「相手の視覚と聴覚奪ってのKill……誰だよ火と毒に気を付けろって言った奴……」
観客「知らん」
観客「今度からは暗視ゴーグルと耳栓もいるな」
観客「あっ、ライブ映像でた」
観客「今回また何か起きるとしたらさ、……」
観客「……あいつがトリガーになるだろうな」
観客「……あぁ、あいつしか考えられない」
観客「さて今回は何人がアイツの行進に巻き込まれるんだろうな」
観客「…………」
観客「…………」
観客「…………」
そんな観客の声を聞いてエリカはボソッと呟く。
「お姉さん少なくとも一回はこの後に里美クラスでもパニックになることが起きると思うけどなー。だって……」
――――
――――戦場。
天災の象徴として知られる蓮見の歌声を聞き動き始める者達がいた。
その者達はのんびりと歩く蓮見から見えないように姿を隠して慎重に廃墟と化したビル影を利用し近づき包囲していく。全てアイコンタクトと身振り手振りだけでお互いに意思疎通をし合う総勢三十名は青をベースとした装備一式で身を纏い全員が剣使いと至近距離攻撃に特化したプレイヤーだった。
「 私の世界を 護るのは
夜空を見上げ 一人抱え込む君
流した涙の分 残された者達は
強く 誇らしく 生きるのでしょう」
楽しく熱唱する蓮見はまだ気づかない。
だけど敵である彼らは包囲完了と同時に腰にある剣を抜刀し閃光弾も一緒に投げる準備をする。
ここまで念入りに上位プレイヤー潰しをするのは自分達のギルド長の脅威を一つでも多く潰す為に今回結成された【ラグナロク】の精鋭部隊である。
「囲まれた……か」
ようやくその事実に気付いた時には既に時遅く蓮見に向かって四方八方から押し寄せてくる敵と投げ込まれた閃光弾の数々。Killヒット以前に狙いを定めさせないようにと相手の目を潰す。かなり合理的かつ効果が期待できる戦法である。
だが【神眼の神災】相手にはこれでは生温いと言える。
「まぁ、この手の対策は実はエリカさんに聞いていたりするんだよなー。スキル『迷いの霧』」
閃光弾が眩しい光を放つ前に毒の霧で辺り一面を暗くする蓮見。そして手で目を護りながら突撃してくる敵の攻撃を躱すことに専念していく。毒の霧のおかげで本来の力を発揮できなかった閃光弾の役目が終わった所で今度は敵の視覚を奪った蓮見が反撃しようとしたときだった。
「スキル『烈風』」
「スキル『暴風』」
二か所で起きた竜巻に似た風で毒の霧が一瞬でなくなってしまった。
「あっ……うそ!?」
これには蓮見も驚きである。
それもそのはず彼らはルフランが見込んだトッププレイヤーに近い存在。そう簡単に易々と倒されるわけがないのだ。
「ルフラン様の命によりお前の命を頂く。悪く思うな【神眼の神災】」
「本当に狙ってくるとは俺も人気者になったんだな。うん、うん、俺もあれから少しは成長したんだな」
首から上を動かして状況の確認をする蓮見。
口では余裕を見せているが、内心は結構ヤバイなと焦っていたりする。
先日のルフランとの戦闘で『迷いの霧』『猛毒の捌き』『水爆』はある意味対処方法がバレていると推測したからだ。どんなスキルも万能ではないのは百も承知だが一度完全に攻略されたギルド長率いるそのメンバー相手となると必然的に対処法は間違いなくバレていると考えるのが妥当ともいえる。
「……しょうがない。久しぶりにあれやるか」
真剣な表情でボソッと呟く蓮見に全員が警戒する。
息を呑みこむプレイヤー達。
ビビる所か決め顔で自信満々で言う蓮見に全員が警戒する。
なぜならこうなった時の蓮見程厄介である事を多くのプレイヤーが見聞きして知っているからだ。
「見せてやる俺の必殺スキル!」
――ゴクリッ
武器を構えるプレイヤー達の手には汗が溢れ出る。
「全力で全速ダッシュだぁーーーーーーーーー!!!!」
全員の警戒が最大に達したタイミングで音響爆弾を上空に投げ全力で逃げ始める蓮見。
てっきり大規模な広範囲攻撃が来ると思っていた為に反応が遅れる。
耳鳴り程度じゃすまない音に敵の指示役の声がかき消され全員の動きに一瞬迷いが生じる。その僅かな隙で蓮見は包囲網を走って抜け、そのまま近くにあった廃墟となった高層マンションの中へと逃げて行く。
「追えーーーーー!!!」
蓮見の後を追いかけて【ラグナロク】のギルドメンバー三十人も中へと入っていく。
後にここがどちらかの墓標になるとはこの時誰しもが思いにもしなかった。
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