第230話 ミニイベント開始


 告知期間が一週間弱で開催となったミニイベント当日は多くのプレイヤーで賑わっていた。今日第三層に集まったプレイヤーは第一回イベントと同じ対人戦闘のイベントである。ただしでポイントを稼ぐと言ってもサドンデス方式の負けたら一発退場のPK戦。制限時間は一時間でより多くのプレイヤーを倒した者が勝ちと短時間且つ気合いの入るイベントとなっていた。それも当然だろう。なぜなら強いプレイヤーがいるギルドこそ強い敵と戦う権利を得られる。単純明白な理由だ。その為当然チームを組んだ方が有利なわけだが、蓮見は今日一人で参加することにしたのだ。


「よし、今日はあの日のリベンジ戦だと思って久しぶりに一人で頑張って名誉挽回するぞ」


 水爆で名誉挽回出来なかったと思い悩む蓮見は今日こそと気合いが入っていた。


「おい、あれ見ろ【神眼の神災】だぞ」


「本当だ……」


「やけに気合い入ってそうだな……」


「あぁ。なんか迫力あるよな」


 耳を澄ませば聞こえてくる声。

 もうあの時とは違い無名プレイヤーではなくトッププレイヤークラスの認知度と多くのプレイヤーから戦略が研究される立場となった蓮見。

 だけどいまいち自分が有名人だと知らない男はこの場に置いてまたしても大きな勘違いをしていた。


「俺も今日ぐらいは活躍するぞ」


 頬っぺたを叩く蓮見。


 遂にイベントが開始時刻となる。

 それと同時に事前にエントリー予約したプレイヤー全員が一斉に各場所から専用フィールドへと転移させられる。


 イベント未参加のプレイヤーで希望者はイベント参加者がKillされた際に送られる専用イベント閲覧フィールドへと転移させられていた。

 そこに集まる多くの者は自分のギルドメンバーを応援しと直接は力になれずとも遠くから応援することでギルド認定書獲得を目的としメンバー全員でイベントに挑むと言った感じでもあった。


「さて、今回は紅君なにみせてくれるかなー」


 当然エリカも【深紅の美】ギルドメンバーとして応援に来ていた。とは言っても今回も第一回イベントと同じく蓮見だけを見る為にだった。なぜなら美紀達は何もしなくても入賞してくるだろうと信じている。それなら見てて面白い方を見たくなるのは人間の心理と言うものだろう。


「全く私にアイテムを要求してきたんだもん、ドキドキさせてくれないとお姉さん怒るわよ、うふふ」

(でも内心何も期待しなくても前代未聞の何かが起こる気はしてるんだけどね……うふふっ。それと私の愛した人は最恐だと知り絶望しなさい、参加者よ)

 


 眩しい光に包まれた蓮見が目を開けるととても懐かしい光景が目に入ってきた。

 それは人が住むのを止め廃墟となった住宅街だった。これは第一回イベントと同じだった。


「な、なつかしい……」


 だけど一つ違う事があった。

 それは上空を見上げると上位五十人の名前が常に表示されプレイヤー何処にいるかが専用MAPにでかでかと表示されていることだ。つまり上位十人に入るにはこの過酷な状況を乗り越えるしかないと言う事なのだろう。


「って早! もう三人倒したのかよ、里美!」


 早くもランキング一位となった者の名を見て蓮見が驚いてしまった。開始早々トッププレイヤーが狙われるこれは珍しい話しではない。なぜならまだ一分も経っていないのにも関わらず蓮見を狙い遠方からプレイヤーが三人掛りで走ってこちらにやって来たからだ。


「面白れぇ。なら俺も行くか!」


 首をぽきぽきと鳴らし【神眼の神災】がニヤリと不敵に微笑み、弓を構える。



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